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宇宙の持続可能性を高めるためには、もっとエンジニアが必要だというお話エンジニアはどう生きるべきか? 理想編(1/3 ページ)

元任天堂開発者がエンジニアの真に役に立つことを伝授するシリーズ。「エンジニアの生き方」第2回は、森羅万象の持続性とエンジニア主義の関係性を解説します。

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 エンジニアという道を進むための指針を目指す連載、前回は準備編として「モジュール」と「工学性」を説明しました。その中で、「問題は現実と理想のギャップである」という定義を利用しました。では「エンジニアはどう生きるべきか?」という問題を解く場合の理想は何でしょう? この理想について提言をするのが、今回の理想編の内容です。

 理想は必ず「物語」です。それ故、今回の内容はどうしても絵空事に感じるかもしれません。「どうせ物語ならば」ということで、大胆に「エンジニア主義(Engineer-ism:エンジニアイズム)」というエンジニアのためのイデオロギー(理念体系)を提唱します。

 エンジニア主義は「全ての事象にエンジニアリングを」「全ての人はエンジニアであれ」という壮大な理想から成ります。SFのように論理立てながら極限まで見据えて構築し、エンジニア主義がエンジニアとして生きる道の指針となることを目指します。

 本連載のキーワードは、「モジュール」「工学性(エンジニアリンガビリティ)」「持続可能性(サステナビリティ)」の3つです。前者2つは前回説明しましたので、残すは「持続可能性」です。エンジニア主義という理想を語る前に、持続可能性について掘り下げていきます。

 持続可能性というと、疑い深いエンジニアの中には「経済活動を止めない限り悪化する環境への免罪符」や「思想を押し付ける狡猾(こうかつ)な隠れみの」などと思う人もいるかもしれません。

 これらの疑念が生じる理由の一つは、「何の持続可能性か」という主語が曖昧だからと考えます。特定の思想を持つ国の持続可能性なのか? それとも人間社会? 生物全般? 地球? などと主語を考えるうちに、どうしても対象の規模が大きくなってしまい、語ることの怪しさに止めどがなくなります。

 そのため、まず何の持続可能性かをエンジニア目線で考えてみましょう。

何の持続可能性か?

 あらゆる物事が持続不可能です。

 ブッダは諸行無常と言ったといわれています。あらゆるものは絶えず変化していて、同じ状態が永遠に続くことなどありません。あらゆる事象はいつかは持続の終わりを迎えます。それ故、持続可能性という言葉の意味は「持続終了までの期間が続く度合い」となります。

 持続可能性は国連が主導的に言及していて、一般には環境や経済を「将来の世代」のために継続する能力やその概念です。「将来の世代」を指しているので通常は「人類」が持続可能性の主語となります。また確率などでもないため、本記事では単位を「持続し得る年数」とします。

 もしあなたが自分を食べさせるのに精いっぱいの経済状態であり、労働のし過ぎなどで健康を害していたら、あなたにとって人類どころでなくあなたの持続可能性の方が大事でしょう。持続可能性には主観的な優先度があります。

 では、客観的に優先すべき持続可能性の主語は何でしょう?

 この問いに答えるべく、あなたを含め「個人」の持続可能性を最小単位として、スコープを広げながら持続可能性の構造を見ていきましょう。

 まず、個人の持続可能性についてです。現在日本の平均寿命は約85歳であり、5〜10年で1歳寿命が延びる傾向があり、その伸びは緩やかになりつつあります。あなたが今30〜40歳ならば、高齢者になるころには5歳分くらい寿命が延びると予想できます。よって、個人の持続可能性を「90年」としました。


個人の持続可能性

 持続可能性を90年としましたが、事故や病死により途中で持続を終えることもあります。持続可能性はあくまでリーチする可能性であり、実際の年数はそれより短いということはあり得ます。

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