Windows標準搭載の遠隔支援ツール「クイックアシスト」が別モノになっていた!:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(227)
「リモートアシスタンス」とは別に、Windows 10から標準搭載されるようになったもう1つの遠隔支援ツールに「クイックアシスト」があります。皆さん、利用していますか? 筆者は遠隔支援が必要なときでも使ったことはありません。その理由は後で触れるとして、2022年春にデスクトップアプリからストアアプリに置き換わったことはご存じでしたか? 筆者は知りませんでした。
Windows 11 バージョン22H2は最初から「ストア版クイックアシスト」だった
筆者は「クイックアシスト」を普段、全く使っていなかったので気が付かなかったのですが、「Windows 10」から標準搭載されているこの遠隔支援ツールが、2022年4月末にMicrosoft Storeから提供されるユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリ(以下、ストア版クイックアシスト)に置き換わっていました。
- Remote assistance with Quick Assist is changing[英語](Microsoft Tech Community)
それに気が付いたのは、そういえば「Windows 11」のバージョン22H2が出て、クイックアシストのあの問題(後述)はどうなったのかと、近くにあるWindows 10デバイスとの間でクイックアシストで接続しようとしたときでした。Windows 10で「スタートメニュー」(または[Ctrl]+[Windows]+[Q]ショートカットキー)からクイックアシストを起動すると、「新しいバージョンのクイックアシスト」と表示され、Microsoft Storeへと誘導されたからです(画面1)。
従来のクイックアシストのパスは「C:\Windows\System32\quickassist.exe」、新しいストア版クイックアシストのパスは「C:\Program Files\WindowsApps\MicrosoftCorporationII.QuickAssist_2.0.9.0_x64__8wekyb3d8bbwe\QuickAssist.exe」です。スタートメニューのアイコンは置き換わりますが(「Windowsアクセサリ\クイックアシスト」は削除)、従来の「quickassist.exe」は削除されずにそのまま残りました。
そして、Windows 10では[Ctrl]+[Windows]+[Q]キーを押すと、その後も従来の「quickassist.exe」が起動してしまいます(画面2)。Windows 11 バージョン22H2は、最初からストア版クイックアシストが組み込み済みで、[Ctrl]+[Windows]+[Q]キーで起動できます。
![画面2](https://image.itmedia.co.jp/ait/articles/2301/18/vol227_scrreen02.png)
画面2 Windows 10(およびWindows 11 バージョン21H2)では、従来の「quickassist.exe」はそのまま残る。ショートカットキーではこちらが立ち上がるので、ショートカットキーに慣れていると二度手間に
ヘルプを参照すると、クイックアシストがMicrosoft Storeに移動された理由など、よくある質問(FAQ)を確認できました。
- クイック アシストをインストールする(Windows サポート)
しかし、「古いバージョンを動作させるにはどうすればよいですか?」の説明がふに落ちません。回答としては、「最新のWindows更新プログラムをインストールして、PCで実行されている元のバージョンのクイックアシストを取得できます」となっていますが、全く答えになっていないと思いませんか。
従来の「quickassist.exe」は残っており、それを起動することはできます(前出の画面2)。“動作する”のは間違いないのですが、クイックアシストとしては機能しません。ポリシー設定でMicrosoft Storeアプリを無効化したり、ストアアプリの実行を無効化したりしても「新しいバージョンのクイックアシスト」が案内されるだけです(2022年5月末までは従来のクイックアシストも使えたようです)。
前出のアナウンスによると、以前のクイックアシストはサービス終了(The current built-in Quick Assist app is reaching end of service)ということです。つまり、従来のように機能することはもうないということのようです。
クイックアシスト利用時の致命的なあのバグはどうなった?
筆者は、もし遠隔地に支援したい人がいたとしても、決してクイックアシストは使いません。別のツールを使います(家族間での支援にはReal VNCの「Cloud connections」を使用しています)。その理由は“チャット機能(命令チャネルの送受信)で日本語が送受信できない”からです。
ストア版クリックアシストとして新しくなったのだから、淡い期待を持って試してみました。日本語が送受信できない(送信済みとなるが、送信相手で受信されない)問題は、残念ながら全く改善されていませんでした(画面3)。遠隔支援のためにクイックアシストを使う場合、クイックアシストの使い方の支援も必要になるでしょう。
最新情報(2023年3月3日追記)
2023年3月3日現在、旧クイックアシストを起動してもストア版クイックアシストのインストールを求められることはなくなっており、旧クイックアシストとストア版クイックアシスト間の接続も可能になっています。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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