検索
連載

バグがあっても心配いらない、それは単なるコードですGo AbekawaのGo Global!〜Tyler McMullen(後)(2/3 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回もFastlyのCTO(最高技術責任者)、Tyler McMullen(タイラー・マクマレン)さんにお話を伺う。タイラーさんがいつも自分に言い聞かせている、エンジニアに伝えたいメッセージとは。

Share
Tweet
LINE
Hatena

CTOにとって大切なことは変わっていく

阿部川 Fastlyという社名は何に由来するのですか。

タイラーさん (笑いながら)もうずっと前のことなので正直、あまり覚えていないのですが、この社名こそが私たちがやっていることを正確に表現していると思います。物事をとにかく速く(fast)やる。Latency(レイテンシ)の向上や、Throughput(スループット)の改善はその後といった感じで。

阿部川 タイラーさんはFastlyのCTOを勤められています。CTOとして一番大切な仕事とは何だと考えていますか。

タイラーさん その質問へのお答えは、この数年間でどんどん変わってきています。最初のころは「全てのシステムを理解し、それらがしっかりと動くようにすること」でした。私がCTOになった大きな理由は、APIだろうがエッジサーバだろうが、どんなシステムでもプログラムでも一通り扱うことができる、ジェネラリストとしての強みを持ったプログラマーだったからです。当時はそれが大変重要なスキルセットでした。しかし会社が成長するにつれて、スペシャリストが必要になってきます。

画像
最近のタイラーさん。あふれるセレブ感!

 次の段階として「マネジメント」が求められるようになります。現在Fastlyは1000人以上の従業員を抱えています。チームをどうやって成長させるか、ベストなタレントをどうやって雇用するか、などが考えるべき仕事は無数にあり、私にとってもチャレンジでした。

 そして現在は「イノベーション」です。新しくて、面白くて、価値のある新しいものを継続的に創造していけるかどうか、です。今、私はエンジニアリングチームを率いているわけではなく、18人のメンバーで構成される、小さな研究グループ「Applied research group」を率いています。それぞれのメンバーが、各分野に強みを持った若い人たちなんですよ。


編集中村
編集 中村

 技術だけ、マネジメントだけ、ではなく、イノベーション(+若手の育成)が入っているところがいいですよね。未来を感じられます。


阿部川 いいですね。お忙しいと推測しますが、典型的な1日のスケジュールを教えていただけますか。

タイラーさん 偶然にも最近同じ質問を自問しています、「私の時間は一体全体どこに消えたんだ」と(笑)。明日のカレンダーを見てみましょう(と言いながら画面を切り替えた様子で、画面に見入る)。

 ああ、なるほど。まずはチームミーティングがあります。ミーティングでは、それぞれが何をやっているのか、とか、何か面白い発見がなかったか、などを全員に共有します。新しく開発したプロトタイプを見せて、皆の意見を聞くこともあります。

 その後は個別の会議ですね。どうやったらネットワーク上の活動をよりスケールアップできるか、とか、ハードウェアはどうするか、あるいはソフトウェアの新しい使い方などについて、話します。

 明日はプロダクトのチームと会議がたくさんあります。私のグループのメンバーがコンサルタントとなってエンジニアチームと話します。エンジニアチームが何か困難な問題に直面したときに助っ人になってあげます。プロダクトの組織に関わる事項もあります。例えば、新しい製品やアイデアが出たときに「これは不可能だな」と言われたら、私たちのチームにくれば、そのアイデアを現実的なものにする、といったイメージです。

真夜中の友達はアライグマ

阿部川 現在、タイラーさんは38歳とまだお若いのでやりたいこともたくさんあると思います。ここから10年、何を実現したいですか。

タイラーさん 今正確にそれに答えることができれば、気が楽なのですが(笑)。何度も自問してみましたが、明確な答えは出ませんね。また新たにスタートアップを始めるかもしれませんし、あるいは博士課程に進学して大学教授になっているかもしれません。または全く違う方向性で、木工家具の製作者になるかも知れません。お答えするのが本当に難しいです。

 ただやはりテクノロジーの分野を完全に離れることはないでしょう。私の今までの人生において、究極的な情熱をささげることができるのがプログラミングですから。今お話ししていて改めて気づいたのですが、もうプログラミングを始めて30年近くたつわけです。将来何をするにしてもプログラミングから離れることはないと思います。


編集中村
編集 中村

 この話を聞いて、自分の場合は何がそれに当たるのか振り返ってみました。仕事を始めた当初は「プログラミングで何かしら作り上げることが好きだから、ずっとこれで仕事するんだろう」と考えていました。でも今思うと何かを作り出すというよりは、誰かの困りごとを自分のサポートで解決させることが好きだったと分かります。きっとこの先、方法や立場は変わるかもしれませんが、私もそのことから離れることはないと思います。タイラーさんと同じように。


 プログラマーの仕事もCTOの仕事も、そしてIT業界も、従来考えられているスピードよりもずっと早く変化し続けています。それにしっかりと対応していくためにはどうしたらいいのかを、真剣に考えないといけません。

阿部川 以前インタビューしたエンジニアは、毎日ポッドキャストを聴き、新しい情報をサイトから仕入れていました。勉強を続けることは一生涯続くことですからね。

タイラーさん そうだと思います。私は毎日、学術的な論文などを読んでいます。その意味では、学ぶことが最高のエンターテインメントです。

阿部川 それともう1つの仕事の可能性ですが、アライグマがお好きなのですね。アライグマのためのサンクチュアリを作るなどはどうですか。

タイラーさん (大笑いして)具体的にそこまで考えたことはないですが、なかなか良いアイデアですね(笑)。アライグマの話は、スケートボードの話と、起業して間もないときにさかのぼります。私は夜型の人間で、前日から翌日の早朝3時とか4時までずっとプログラミングするといった生活をしていました。仕事の合間に、気分転換に近くの街までスケートボードで出掛けていたのですが、その時間に路上にいるのは、私とアライグマだけです。自然に愛着が湧きました。

画像
「それは面白いアイデアですね」

阿部川 今でも彼らと遭遇しますか。

タイラーさん そうですね。家のすぐ横に公園もありますから、頻繁に彼らに会うことができます。窓越しに目があって、こちらは軽く手を振って。いいものです。昔は何匹かには名前を付けて呼び掛けていました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る