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ロボティクス用AIチップセット市場、2028年までに8億6600万ドル規模にロボティクスでも生成AIが台頭へ

調査会社のOmdiaによると、ロボティクス用AIチップセット市場は2028年までに、世界で8億6600万ドル規模に達する見通しだ。

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 調査会社のOmdiaは2024年3月5日(英国時間)、ロボティクス用AI(人工知能)チップセット市場が、ロボティクスにおける生成AIの台頭を後押ししながら、2028年までに世界で8億6600万ドル規模に達するとの見通しを示した。

 Omdiaはこの見通しの背景を次のように説明している。「ロボティクスにおける機械学習(ML)の民主化以降、MLベースのワークロードは非常に多様化している。生成AI技術の普及が進む中、基盤モデルが既存のMLモデルやディープラーニングモデルを代替、あるいは拡張する動きが本格化しつつあり、より高性能で堅牢(けんろう)なロボットの開発につながっている」

 Omdiaによると、Googleが2022年にリリースしたロボット制御モデル「RT-1」(Robotics Transformer 1)がロボティクスアプリケーションの変革の火付け役となって以来、ロボットへの生成AI活用の民主化に向けて、さまざまな企業や組織が多大な力を注いできたという。

 Google以外にもMeta、OpenAI、トヨタ自動車などの企業が、ロボティクスアプリケーションで無数の基盤モデルを試験的に導入し、検討を重ねている。CloudMindsやOrionStar Roboticsといった中国のサービスロボットベンダーも、クライアントソフトウェアシステムへの統合計画に従って独自の基盤モデルを開発している。

 ただし、生成AIは大量のリソースを消費する。モデルのトレーニングと推論に大規模なGPU(Graphics Processing Unit)クラスタが必要になるため、ほとんどの業界では、生成AIの導入はクラウドで行われる。一方、ロボットはローカル処理を得意としており、多くの場合、リアルタイム制御や超低遅延応答を優先するミッションやビジネスクリティカルアプリケーションに使われている。

 「NVIDIAのGPUがクラウドインフラやロボットに適したAIチップセットアーキテクチャであることに変わりはない。だが、Qualcomm、Intel、AMDといった非GPUベンダーは、マシンビジョン、ナビゲーション、マッピング、機能安全といったオンデバイスのロボティクスアプリケーションをターゲットとしたAIシステムオンチップ(SoC)や専用AIチップセットをリリースしている」と、Omdiaの応用インテリジェンス部門チーフアナリスト、リャン・ジェイ・スー氏は説明する。

 生成AIの民主化から生じる興味深い現象として、ヒューマノイド(人型)ロボットの人気の急上昇も挙げられる。人間の姿に極めて近いロボットであるため、当然のことながら、多くのロボット研究者が、人間のような生成AIとヒューマノイドロボットの統合はスムーズに進むと考えている。この波に乗り、Agility Robotics、Boston Dynamics、Figure、Fourier Intelligence、Tesla、UBTechといった企業が、工業やサービス分野向けにさまざまなヒューマノイドロボットを発表している。

 ただし、ヒューマノイド技術はまだ発展途上であり、今後5年間で大々的に普及することはなさそうだ。生成AIの実用化では、依然として無人搬送車(AGV)や自律移動ロボット(AMR)の方がより成熟した分野だ。

 「業界は、市場の盛り上がりをあおるのではなく、データと技術の基盤を正しく構築することに集中すべきだ。つまり、ロボティクスベンダーはさまざまなモデル最適化技術を通じて、ロボットの省電力生成AI機能を強化し、リアルタイム制御とパフォーマンスに力点を置き、コンピューティングと接続性の融合に取り組むべきだ。ロボティクスの利用者の観点から考えれば、固有の領域に特化した生成AIモデルを開発し、倫理、セキュリティ、安全性、パフォーマンスを厳しく監視することが、生成AIを用いたロボットの導入、活用の民主化に大きく役立つだろう」(スー氏)

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