書評
サーブレット/JSP
今度こそモノにするための5冊
Java Solution担当
宮下知起
2002/11/16
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Javaによるアプリケーション開発は枯れた世界に突入しつつある。中でもサーバサイドJavaは、Webアプリケーション開発に欠かせない技術となった。以前までは企業内の情報系システムやBtoCサイトでの採用が多かったが、アプリケーション・サーバ製品の成熟とともに、企業内の基幹系システムやBtoBの領域にまで活用の範囲を広げている。
今回の書評では、サーバサイドJavaの基本中の基本であるサーブレット/JSPに焦点をしぼり、基礎の理解に役立つものから現場での活用に役立つ書籍までを選択した。何度か学習にトライしているがどうも相性が悪いという人も多いと思う。ぜひ本書評から最適な1冊を選んでいただきたい。
まずは手を動かしてどんなものかつかみたい人に |
10日でおぼえる JSP/サーブレット 入門教室 山田祥寛著 翔泳社 2002年5月 ISBN4-7981-0189-3 2800円 |
本書は1日を「3〜4時限」として、10日間でサーブレット/JSPの基礎を学習する入門書だ。毎時限の学習スタイルは決まっている。必ず1つの例題があって、人はその例題をステップ・バイ・ステップの解説に従って実践する。そして最後に、行ったことに関する解説を読むという順序で学習を進めていく。10日間の学習スケジュールは次のようになっている。
第0日 オリエンテーション/第1日 JSPの基本的な構造を学ぼう/第2日 ユーザリクエストの処理を学ぼう/第3日 クラスで拡がるJSPの世界<基本編>/第4日 クラスで拡がるJSPの世界<正規表現・ファイル編>/第5日 XML+XSLT/DOMでより高度なデータ処理/第6日 JDBCでカンタンデータベース連携<基本編>/第7日 JDBCでカンタンデータベース連携<応用編>/第8日 サーブレット技術の基本的な構造を学ぼう/第9日 JavaBeans導入でWeb開発の効率化/第10日 カスタムタグ、フィルタによる開発・運用の効率化
テーマはサーバ・サイドJava全般にわたっているが、1時限ごとの解説は要点を絞ったものであり、サーバ・サイドJavaを1から10まで理解するというものではない。まずは手順通りに実践してみて、サーブレット/JSPによる開発がどのようなものかを把握したい人には最適だ。忙しかったり、とっつきにくさを感じて、これまで学習のきっかけをつかめなかった人には一押しの学習教材といえるだろう。
入門書を終えた人が次に読む1冊 |
サーブレット/JSP プログラミングテクニック 三島俊司著 ソフトバンクパブリッシング 2001年7月 ISBN4-7973-1441-9 4200円 |
本書はタイトルにこそ「プログラミングテクニック」と表されているが、テクニックを解説した書籍ではない。サーブレット/JSPの全体像をつかんだ人がさらに理解を深めるための入門書としてお薦めできる1冊だ。英語の学習に例えるなら、構文は理解できたが文法の詳しい理解はまだ、という人に向けた本だといえるだろう。実際の業務において、構文を知っているだけでは対応できないことがある。だが、文法(原理)を知っていれば応用が利いて業務のさまざまな場面に対応できるようになるだろう。
最初にサーブレットとCGIの違いやサーブレットの起動方法に触れ、サーブレットの動作原理を説明する。次にサーブレット/JSPの実行環境としてTomcatを紹介し、TomcatのWindows、UNIX/Linux両プラットフォーム上でのインストール方法、設定について触れる。Tomcatの設定の解説は詳細で、実システムで採用する際には有益な情報となるだろう。
サーブレットについては、簡単なプログラミングからデータベースとの接続までを。JSPについても基礎を一通り学習できる。JSPカスタムタグについても分かりやすく整理して解説されており、これからJSPカスタムタグを入門したい人によい内容だろう。デプロイメントディスクリプタに関する解説も詳細だ。
700ページを超えるかなりのボリュームだが、理解を助ける図版や画面、コードが多用されているし、レイアウトも読み手を考えたものになっているので、読み疲れることはないだろう。ただ、サンプルコードの入ったCD-ROMが添付されていないので、コードをそのまま転用したい人には残念だ。本書は刊行が2001年であり、サーブレット/JSPの最新バージョンで開発を行いたい人には情報が古い。基礎を理解するための1冊として割り切って、最新情報は次に解説する『モア・サーブレット&JSP』に譲りたい。
サーブレットとJSPの連携を理解したい人に |
プロフェッショナルJSP (上) 基本編 サイモン・ブラウン他著 松本庄司監修 トップスタジオ訳 インプレス 2001年12月 ISBN4-8443-1583-8 4200円 |
「プロフェッショナルJSP」というタイトルだが、実はEJBを除いたサーバ・サイドJava全般にわたったテーマを扱っている。
本書の特徴は、MVCモデルの理解を進めたうえで、サーブレットとJSPの使い方(連携方法)について解説を行っている点だ。サーブレットとJSPそれぞれ単体の理解はできていても、実際のシステム構築でどのように組み合わせて使うかの指針が理解できていないままコーディングを行うと、とんでもない落とし穴に陥って苦労することになる。その点、本書の内容をしっかり押さえれば、そのコツをつかむきっかけにはなるだろう。
Servlet 2.3、JSP 1.2の最新仕様やJSPカスタムタグの作成と実例についても触れているが、このあたりの詳しさは『モア・サーブレット&JSP』に軍配が上がる。付録には、サーブレットやJSPのAPIのリファレンス、サーブレット/JSPでの日本語処理などが掲載されており、開発現場に必要な情報が網羅されていると評価できる。
本書は、サーブレット/JSPの入門書というより、基礎をある程度理解したうえで、実際の開発に必要なWebシステム全体の構造の理解、サーブレットとJSPの連携やJavaBeansの活用、コーディングのコツなどを学習する教材としてお薦めする。
最新情報を把握したい人のための1冊 |
モア・サーブレット&JSP マーティ・ホール著 岩谷宏訳 ソフトバンクパブリッシング 2002年6月 ISBN4-7973-1989-5 5200円 |
本書は同じくソフトバンクパブリッシングから2年前に刊行された『コア・サーブレット&JSP』の続編である。続編ではあるが、前著と重複する部分も多い。第一部は前著の要約としての位置付けなので、サーバ・サイドJavaの基本的なスキルを持った人であればここを読めば前著は必要ないだろう。ただ、これから基礎を学ぶ人であれば前著と併せて読むことをお薦めする。
Servlet 2.3/JSP 1.2のフィルタやリスナーといった新機能の解説や、Tomcat 4.xの最新のコンフィグレーション、SSL認証をはじめとするセキュリティにも詳しく触れている。サーブレット/JSPの全体を網羅したい人よりは、開発に必要な最新情報を逃したくない人にお薦めする。
うれしいのは、本書のサポートページが存在していることだ。サポートページからは、原書のサポートページ、翻訳者のサポートページのどちらにも行ける。また、本書にはCD-ROMは付属していないが、サポートページから本書で使用しているソースコードがダウンロードできるようになっている。また、翻訳書とは思えない自然な文章で非常に読みやすい点も評価したい。
会社の書棚に1冊置いておきたい便利な1冊 |
JSPハンドブック 山田祥寛著 ソフトバンクパブリッシング 2002年6月 ISBN4-7973-1987-9 2200円 |
本書は2通りの用途で使える書籍だ。1つはJSPの基礎の理解のために、もう1つはJSPで開発を行う際のリファレンスとしてである。これはあくまで筆者の見解だが、限られた紙面を考えるとできればリファレンスに徹してほしかった。しかし、JSPの基礎からよく使うライブラリのリファレンス、ライブラリの実際の使用例としてのサンプルコード、インストール方法、データベースとの接続など、なんでもありのハンドブックは現場の開発者には大変重宝するかもしれない。必ずしも頭から読む必要はなく、必要なところを引いて読める点が良い。
リファレンスの章では、オブジェクトをカテゴリや機能別に引くことができるので非常に使いやすい。サンプルコードも実用的なものが多く、会社の書棚に1冊置いておくと便利な1冊だろう。JSPの基礎は非常に分かりやすく解説している。これからJSPを学ぶ新人SE・プログラマに読ませても役立つだろうが、あくまでサーブレット/JSPをしっかり学ぶ前のとっかかりの教材と考えたい。
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