一見それほど変わらないように思えるKotlinとScala、どう使い分けるべき?関数型か、オブジェクト指向か

ScalaとKotlinはどちらも、汎用プログラミング言語として多くの機能を提供する。とはいえ、ユースケースも同じというわけではない。

» 2023年11月16日 08時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

 「Kotlin」と「Scala」は、一見、それほど変わらないように思えるかもしれない。どちらもオープンソースの静的に型指定する汎用(はんよう)プログラミング言語で、「Java」コミュニティーに対応している。事実、両言語をJavaの改良版と見なす開発者もいる。

 本稿では、開発者が自身のプログラミングのニーズにKotlinとScalaのどちらが適合するかを把握できるように、両言語の類似点と相違点を調べる。

 恐らく、KotlinとScalaの最も重要な違いは、ScalaがJavaと同様にオブジェクト指向言語であることだ。

 技術的には、Scalaは関数を作成できるため、関数型プログラミングに使用できる。ただし、Scalaでは全ての値が個別のオブジェクトとして扱われるため、本質的には関数型プログラミングよりもオブジェクト指向プログラミングに適している。

 一方、Kotlinはハイブリッド型言語と表現されることが多く、関数型とオブジェクト指向の両アプローチに等しく対応しようとしている。

 関数型プログラミングとオブジェクト指向プログラミングのどちらが適しているかは、作成しようとしているアプリケーションの種類、サイズ、複雑さに大きく左右される。複数のアプローチに適する柔軟な言語を選ぶのであればKotlinの方が適している。Scalaは、データを集中的に使用するアプリケーションなど、オブジェクト指向のプログラマに適しているのは明らかだ。

Javaに対する改善点

 KotlinとScalaでは、Javaと同様のプログラミングエクスペリエンスがもたらされるが、Javaが抱える大きな問題点の一部は解消されている。例えば、ScalaとKotlinはどちらもJavaよりも構文が簡潔だ。定型コードの削減などの機能により、同じ機能をJavaよりも少ないコードで実装できる。

 ただし、両言語がJavaを改善しようと試みている方法は異なる。ScalaはJavaとKotlinよりもパターンマッチングのサポートが優れている。一方、KotlinはScalaとJavaよりも演算子オーバーロードの方法が簡単になっている。また、Kotlinのコードはシンプルかつ短くなる。

ユースケースの違い

 KotlinとScalaはどちらも同じような方法で使われているのを目にすることが多い。例えば、どちらの言語もWeb開発に使用されている。どちらの言語も広範なユースケースやプログラミング言語の広範なシナリオをサポートする。ただし、対応するニーズやコンテキストは異なる傾向がある。

 Scalaの最も代表的なユースケースの1つはビッグデータプログラミングだ。大量データの処理を必要とするアプリケーションを作成する状況では、Scalaの同時実効性、パターンマッチング機能、優れたスケーラビリティが理想的になる。

 一方のKotlinは米Googleの「Android」を対象とする開発で使用されるのを目にすることが多い。ScalaもAndroidをサポートする。だが、KotlinはAndroid向けモバイルアプリの作成の一般的な方法になっている。特に、これまでモバイルプログラミングにJavaを利用していた開発者の中ではよく使われている。

潜在的な問題点

 KotlinとScalaの特徴には違いがあり、一方が他方よりも役立つ状況はある。両言語にはそれぞれ優先度の高い特徴があるが、問題点と制限事項にも違いがある。

 Kotlinの最も大きな問題点は、サポートとリソースに関係する。その大きな理由は、KotlinがScalaよりも新しい言語だという点にある。Kotlinのリリースは2016年、Scalaのリリースは2004年だ。そのため、KotlinをサポートするIDE、対応するライブラリやフレームワークはScalaよりも少ない。

 一方、ScalaにはKotlinにはない特定の技術的問題点がある。ScalaコードのコンパイルはKotlinコードのコンパイルよりも大幅に時間がかかる。また、Scalaはその複雑な型システムにより、実行時にエラーが発生しやすくなる。

KotlinとScalaのどちらを選ぶか

 次回のプログラミングプロジェクトにKotlinとScalaのどちらを選ぶかは、作成予定のプログラムに大きく左右される。

 一般に、Kotlinは小さなプロジェクトや柔軟性が求められるプロジェクトに適している。また、パフォーマンス要件が厳しいアプリケーションや頻繁にアップデートを行うアプリケーションにも適している。Kotlinはコンパイル時間が短いため、開発者は作成した新規アプリケーションをScalaよりも素早くリリースできる。

 一方のScalaは、大規模で複雑なプロジェクトに適している場合が多い。また、パターンマッチングを多用するアプリケーションにも理想的だ。

 Kotlinは新しい言語のため、時間がたつにつれて改善されていく可能性がScalaよりも高い。Scalaが普及している理由の多くは、Kotlinよりもはるかに長く利用されてきたという単純な事実にある。ただし、Kotlinの利用者が徐々に増えていくにつれ、IDEのサポートに制限があるといったKotlinの大きな問題点の一部も恐らく解消されていくだろう。

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