[プロダクトレビュー]
新生Visual Cafe4の機能を検証
VisualCafe4は高機能なWeb開発ツール
槙邑恭介
2001/2/22
国内販売が一時中断していたJava開発ツールのVisualCafeだが、米WebGain社の日本法人から新生VisualCafe 4(Version 4.1)として販売が開始された(エンタープライズ向けが昨年12月に、その他のエディションは1月26日に出荷が開始されている)。以前に米WebGain社から提供されているVisualCafe 4英語版を紹介したが、今回はWebGainStudio 4日本語版とVisualCafe 4日本語版の概要を紹介しよう。
WebGain社は、WebLogic Application Serverを提供するBEA Systems社との関係が深いことから、WebGain社の提供する開発ツールは、WebLogic Application Serverを中心的なターゲットとしている。そのため、Visual Cafe 4もどちらかというとWebLogic Application Serverで動作するEJBの開発/配布に重点が置かれているようである。ただしSymantec時代からあるwin32exeを生成する機能や、Swingを用いるGUIアプリケーションの作成も従来どおり可能である。まずVisualCafeの製品構成を整理しておこう。
開発用途に応じた幅広い製品構成 |
WebGain社が提供するJava開発ツールは、主としてBEA Systems社のWebLogic Application Server向けEJBによるWebアプリケーションの構築を行うWebGainStudio
4と、VisualCafe 4単体製品に分かれる。WebGainStudioにはVisualCafeが含まれているので、Java開発ツールの選択肢としては、WebGainStudio
4まで視野に入れる必要がある。VisualCafe単体には、Standard Edition、Expert Edition、Enterprise
Editionの3種類のエディションが用意されている。Standard Editionは、Java開発ツールとして基本的な機能を備えており、スタンドアロンのJavaアプリケーションやJavaアプレット、JavaBeansの作成などが行える。Expert
Editionでは、Standard Editionにデータベース接続機能(それを利用するコンポーネントも含まれる)やバージョン管理機能が追加される。従来のWin32用実行モジュールが作成できるのはExpert
Edition以降である。さらにEnterprise Editionでは分散アプリケーションの作成機能として、EJBの開発(EJB 1.1および1.0をサポート)、RMI/CORBAのサポート、分散環境でのデバッグ機能などが含まれている。WebLogic
Application Serverのシングルライセンスが付属しており、開発環境と同一マシン上でWebLogic Application Serverを実行してエンタープライズ環境の実行とデバッグが行えるようになる。
Symantec時代の構成と比べると、以前のDatabase EditionがExpert Editionに相当するが、dbANYWHAREのようなミドルウェアは付属しない。JDBC経由でのデータベース接続となる。
それに対してWebGainStudio 4には、VisualCafe 4 Enterprise Editionの機能に加えて、Macromedia社のDreamweaver
3が含まれ、これとともにDreamweaver上でのJSP作成を可能にするプラグインが提供される。そしてStructure Builderと呼ばれるUMLによるモデリングツールが含まれる。なおWebGeinStudio
4にはStandardとProfessionalという2つのエディションが存在するのだが、原稿執筆時点ではProfessionalの日本語版は未発売となっている。これらの各製品の機能差の詳細についてはWebGain社のWebサイトを参照していただきたい。
これらの製品構成をまとめると、Javaアプレットや比較的シンプルなJavaアプリケーション、もしくはJavaプログラミングの習得などにはStandard EditionやExpert Edition、それに対してServletやEJBによるWebアプリケーションの作成を行うなら、VisualCafe 4 Enterprise Edition以上が選択肢ということになる。また、JSPの作成を効率よく行いたいなら、後述するWebGainStudio 4を検討することになるだろう。
■開発環境を概観
WebGain社がリリースするVisualCafe 4は、バージョン番号を“4.1J”とすることで、Symantec時代の製品と区別しているようだが、製品名はそのまま“VisualCafe
4”となっている。細かなバグ修正なども行われているようである。本稿では“VisualCafe4”(以下Vcafe 4Jと略)と表記することにする。
Vcafe 4Jは、機能的には以前に紹介したVisualCafe
4英語版と変わらない。統合環境が日本語化されたものと考えてよいだろう。ここではWebGainStudio 4の評価版を用いて、これに含まれるVcafe
4Jについて見てみることにする。
統合開発環境のユーザーインターフェイスは、以前のVisualCafeと変わらず、一般的なRAD環境となっており、フォームを用いてコンポーネントを配置しながらユーザーインターフェイスを構築するスタイルは変わっていない(画面1)。
(画面をクリックすると拡大します) 画面1 「VisualCafeの統合開発環境」 外観は従来のVisualCafeと変わらない。他のJavaで記述された開発ツールに比べてホイールマウスが使えるのがうれしい |
統合開発環境は、いわゆる2ウェイエディットが可能で、フォームにドラッグ&ドロップでコントロールを張り付けたり、インタラクションウィザードを使ってコントロール間のイベント処理を関連づけたりする作業がGUIベースで行える。一方フォームやプロジェクトウィンドウからソースをオープンすることで直接コードの編集も可能で、シンタックスハイライティングやクラスに含まれるメソッドなどを自動的に表示する入力支援機能なども用意されている。さらに、ソースコード編集中は、コンパイラがシンタックスチェックを行っており、コードを入力しながらシンタックスエラーのチェックが行えるようになっている。
統合環境の起動は以前のバージョンよりも時間がかかるようだが、一度起動するとそれほどストレスは感じない(開発環境そのものの多くの部分がJava化されているようである。これが起動に時間がかかる要因の1つになっているようだ)。試しにCeleron
400MHzのノートPC(メモリ:128Mbytes)で実行してみたところ、さすがにソースコードエディタの動きがぎこちなくなる(ただしこのPC環境は必要最小メモリを満たしていないので念のため)。これは上述のシンタックスチェックが動作しているためで、環境設定でこれを行わないようにすると違和感なく操作できるようになる。ほかのJava開発ツールもそうだが、CPUとメモリは十分余裕を持たせるのがよいようだ。
また、これまでのバージョンのプロジェクトもサポートされており、以前のバージョンのプロジェクトをオープンすると、JFCパッケージ名の変換を促すダイアログボックスが表示され、Vcafe 4Jに対応したものに変換される。新規作成可能なプロジェクトは、画面2で示すように、エンタープライズ関係のものが追加され16種類になっている(Enterprise Editionの場合)。
プロジェクトのテンプレート名 | 内容 |
DataBound Project Wizard | データバインドプロジェクトの作成 |
Java Bean | Java Bean の作成 |
Win32 DLL | Win32 DLL |
Win32JFC アプリケーション | JFCを用いたWin32アプリケーション |
Win32コンソールアプリケーション | Win32コンソールアプリケーション |
JFCアプレット | JFCを用いたJavaアプレット |
空のプロジェクト | 空のプロジェクト |
サーブレット | Servletの作成 |
AWTアプリケーション | AWTを用いたJavaアプリケーション |
JFCアプリケーション | JFCを用いたJavaアプリケーション |
Win32 AWTアプリケーション | AWTを用いたWin32アプリケーション |
空のEnterprise Bean | 空のEJBの作成 |
AWTアプレット | AWTを用いたJavaアプレット |
Enterprise Bean | EJBウィザードによるEJBの作成 |
RMIサーバ | 空のRMIサーバアプリケーションの作成 |
CORBAサーバ | 空のCORBAサーバアプリケーションの作成 |
また、Vcafe 4Jでは複数のJVMをサポートする(JDK 1.1.7aとJDK 1.2.2がインストールされる)。そのためJavaアプレットの作成にはJDK 1.1.7aを用い、Swingを使ったJavaアプリケーションやServletなどの作成では、JDK 1.2.2を用いるといったJDKの切り替えも行える。コンパイラもWebGain独自のものと、JDKに含まれるものを切り替えて使用できる。そして、別のVM(JDK)を新規登録することも可能で、このVMの切り替え機能を用いると、組み込み用Javaの開発でも統合環境が利用できるようになるだろう。
(画面をクリックすると拡大します) 画面2 「新規プロジェクト」 新規作成時のプロジェクトはかなり多い。Win32EXE生成機能が異色だ |
エンタープライズ機能の強化 |
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