連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド
第5回 ブロードバンドの前準備、イーサネット・カードを増設しよう
1. イーサネット・カードの選び方
林田純将
2001/10/27
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PCI、USB、ISA……
ネットワーク・カードに適したバス規格とは?
まず最初は、デスクトップPCにネットワーク・インターフェイスを追加するには、どのような製品を選べばよいのか確認しておこう。現在、最も一般的な方法はPCIスロットにPCIネットワーク・カードを装着して使用することだ。このほかにはUSBに接続するネットワーク・アダプタもあるが、現時点では最大転送速度が12Mbits/sのUSB 1.1対応の製品しか販売されておらず、現在主流の100BASE-TX(最大100Mbits/sの通信速度を持つイーサネットの規格)の接続には速度が足りない。そのため、PCIスロットに空きがないなど特殊な場合を除き、あまりおすすめできない(USB 2.0対応製品が登場すれば、この状況は変わるかもしれないが)。
拡張スロットには、PCIのほかにもISAという古い規格がある。最近販売されているPCではまず見かけないが、少し前のPCにはISAスロットが搭載されている機種もある。また少なくなったとはいえ、ISAスロット用のネットワーク・カードも存在している。しかし、データ転送速度がPCIに比べて低く、USBと同様、100BASE-TXの性能を十分に引き出すことができない。さらに需要の減少により、PCIカードよりISAカードのほうが高価な場合もあるなど、ISAカードを利用するメリットは、もはやまったくない。自分のPCにISAスロットがあっても、PCIスロットに空きがあるならPCIネットワーク・カードを導入すべきだ。
PCIカードはサイズに注意
PCIカードを購入する際には、カードの形状にも気をつけなければならない。PCIの規格書によれば、PCIカードのサイズは長さ312mmのロング・カードと、その約半分の175mmになったショート・カード、さらに省スペース・デスクトップPCなど向けにカードの高さを制限したロープロファイル・カードの3種類が規定されている。もっとも、実際に市販されているPCIカードは、ロング・カードを上限としてさまざまなサイズのものがある。
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さまざまなサイズのPCIカード |
一番上のカードは、PCIのロング・カードの規定とほぼ同じサイズである。真ん中はショート・カードとほぼ同じ。どちらかといえば、一番下にある最小サイズのカードからショート・カードまでの範囲に収まるサイズの製品が多い。とはいえ、SCSI RAIDコントローラやハイエンドOpen GLアクセラレータなどではロング・カードもよく見かける。 |
このようにPCIカードにはいくつかのサイズがあるが、すべてのPCで利用できるわけではないので注意が必要だ。機種によっては、ショート・カードしか差せないものや、拡張スロットの位置によってサイズに制限がある場合もある。さらに、日本市場に多い省スペース・デスクトップPCではケース自体が小さいこともあり、コネクタを含む基板部分の全高が107mmで長さが175mmもあるショート・カードでさえ実装が難しい。そこで、このような小さなPCにもPCIカードを収納できるように、ロープロファイル・カードが用意されている(「ロープロファイルPCI」として規格化されている)。ロープロファイル・カードは、最小で36mm×120mm、最大でも64mm×168mmとカードのサイズが小さく、ブラケットの高さも通常のPCIとは異なっている。とはいえ、電気的な仕様などはPCIとほとんど同じで、本体背面に露出することになるブラケット部分を、長いものに交換すればロープロファイルPCI用のカードを通常のPCIカードとして使用することもできる(下の写真)。2種類のブラケットを交換できる製品はあまり多くないので、自分のPCのPCIスロットがロープロファイルPCI対応かどうか、見極めてカードを購入しよう。
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ロープロファイルPCI対応イーサネット・カード |
短い方のブラケットがロープロファイル・カードだ。この製品はブラケットを交換することで、通常のPCIカードとロープロファイル・カードの両方に対応できる。しかし、こうしたフレキシブルな製品は少ない。そもそもロープロファイル・カード自体の製品数が少ないので、選択肢が限られる。 |
10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T……
通信速度でネットワーク・カードのタイプも決まる
現在、LAN接続に使われるネットワークの主流であるイーサネットには、「10BASE-T」や「100BASE-TX」といった種類がある。このうち、「10」「100」などの数字部分は、10Mbits/sや100Mbits/sという具合に通信速度を表している。最近では、1000Mbits/s(1Gbits/s)という高速な通信速度を実現するギガビット・イーサネット(1000BASE)という規格も策定され、対応製品も増えつつある。しかし、1000Mbits/s=125Mbytes/sという転送速度は、一般的なデスクトップPCが搭載している32bit/33MHz PCIの転送速度(133Mbytes/s)のほぼ上限である(実際には送信と受信それぞれ1000Mbits/sで同時に通信することもあるため、最大で2倍の250Mbytes/sの速度が必要になり、PCIの転送速度を軽く超えてしまう)。PCIがほかのデバイスのデータ転送でも共有されることを考えると、ギガビット・イーサネットの利用は64bit PCIなどの高速バスに対応したPCでないと、その性能を生かし切れない。実際、ギガビット・イーサネット・カードは64bit PCI対応製品が多い(32bit PCIバスでも利用可能だが)。しかし、64bit PCIを搭載しているのは、強力なワークステーションやサーバなどに限られている。
なにより、安価なもので1万円前後という価格も、デスクトップPC向けネットワーク・カードとしてはまだまだ高いといわざるをえない。そもそも、ギガビット・イーサネットを有効に使うには、ギガビット・イーサネットに対応したスイッチング・ハブを導入するなど、ネットワーク全体の再構築が必要になる。クライアントPCだけの対応では済まないため、一般ユーザーがギガビット・イーサネットを広く使用するのは、もう少し先のことになるようだ。
以上のことから、現在、最も一般的なネットワーク・カードは、10/100BASE-TX対応のPCIカードということになる。ほんの数年前には数万円したネットワーク・カードだが、現在では、実売数百円〜2000円程度で入手可能だ(ネットワーク・カードの詳細は「連載:ネットワーク・デバイス教科書 第5回」を参照)。
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今回用意したPCIイーサネット・カード |
これはプラネックスコミュニケーションズの「FNW-9702-T3」という10/100BASE-TX対応イーサネット・カード(製品情報ページ)。デスクトップPC向けとしては、ごく普通の仕様のカードである。 |
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