自動認識システムの基礎に触れる3冊
岡田 大助
@IT編集部
2008年2月12日
RFIDの歴史は古い。対象に向けて電波を発信し、得られた応答によってそれが何であるかを識別する技術は、第二次世界大戦で使われた敵味方識別装置(Identification Friend or Foe)にまでさかのぼることができる。
RFID技術は自動認識技術の1つに分類される。自動的に人やモノを認識するための技術として、ほかにバーコードや二次元バーコード、指紋や静脈パターンなど人間の生体情報を利用するバイオメトリクスなどが挙げられる。これらの技術を用いるシステムを自動認識システム(Auto Identification System)と呼ぶ。
具体的な技術を挙げると、日常生活の中で多くの自動認識システムに触れていることが分かるだろう。今回紹介する3冊は、自動認識システムを利用する一般ユーザー側から、システムを構築する技術者の世界へと踏み出すのに役に立ちそうなものを集めた。いずれも入門者向けとなっているため、自動認識システムの基礎に触れるきっかけになるだろう。
■自動認識技術を俯瞰するために
自動認識システムの基礎知識 社団法人 日本自動認識システム協会 編 オーム社 2005年 定価2500円+税 ISBN4-274-50024-1 |
全6章構成で、第1章から第5章までをバーコード、二次元バーコード、RFID、バイオメトリクス、ダイレクトマーキングの解説に割り当てており、第6章は「自動認識技術の基礎用語」となっている。RFIDの解説では、RFIDタグの動作原理をファラデーの電磁誘導法則およびヘルツの電磁波発生の法則から説明している。また、国内でRFIDを利用する際の電波法について、電波法施行規則、EMC規格、安全規格にも言及している。
第5章で取り上げているダイレクトマーキングとは、商品にラベルやシールを張るのではなく、記号やIDを直接マーキングするための技術を指す。商品の材質や形状に応じて、さまざまなダイレクトマーキング技術がある。本書では、利用実績の多いレーザーマーキング、ドットインパクトマーキング、インクジェットマーキング、サーマルマーキングを取り上げている。
例えば、半導体チップの表面に印字されているメーカーロゴなどは、YAG/ファイバレーザーマーキングという技術が使われているという。普段目にする部品が例として使われていると、専門技術への親しみやすさも沸きやすいのではないだろうか。
■日常生活で目にするバーコードを極める
新改訂版 知っておきたいバーコード・二次元コードの知識 平本純也 著 日本工業出版社 2006年 定価3800円+税 ISBN4-8190-1802-7 |
本書は、現在利用されているほとんどのバーコード、二次元バーコードを対象に、規格、特徴、役割、利用方法を解説している。また、バーコードを読み取るためのリーダ装置や、バーコードを印刷するためのプリンタといった周辺装置から、POSやEDIといったシステム構築まで言及しており、バーコードについて深く知りたい読者の知的好奇心に充分応えてくれるだろう。
まえがきによれば、第1版が出された1991年は、JANコードが普及し、物流で使われるITFも普及し始めたころで、「バーコードを簡単に理解できる入門書が欲しいという要望に応えて本書を作成した」とされている。その後、ISO/IECによる標準化活動や二次元バーコードといった新しい技術が登場したことで改訂を重ね、この第6版で全面改訂が行われている。
■なぜ静脈や虹彩が認証キーとして有効なのか
トコトンやさしい バイオメトリクスの本 赤石正則 監修 日刊工業新聞社 2004年 定価1400円+税 ISBN4-526-05246-9 |
本書は、さまざまな技術を、ふんだんにイラストを使って初心者にも分かりやすく解説する「トコトンやさしい」シリーズの一冊である。そのため、中級者以上にとっては内容が若干物足りないだろう。しかし、指紋認証におけるマニューシャ方式とパターンマッチング方式の違いや、虹彩認証と網膜認証の違いについて理解を深めることができる。
取り上げられているバイオメトリクス技術は、指紋、顔、虹彩、網膜、静脈、掌形、DNA、音声、署名など。このほか今後の開発が期待される汗腺、匂い、耳介などにも触れている。「こんなものがバイオメトリクス認証に使われるのか」という驚きをもって読み進めていくことができるだろう。
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