EPCが変える小売流通、先行する欧米市場はいま
岡田 大助
@IT編集部
2006年4月25日
英国の百貨店マークス&スペンサーのインテリジェントラベル
マークス&スペンサーは、プライベートブランドの衣料品を中心に、食料品から金融サービスまでを扱う英国の代表的な百貨店である(映画『ブリジッド・ジョーンズの日記』でおなじみかもしれない)。同社では食料品用プラスチックトレイ400万個にRFIDタグを貼り付けているほか、衣料品の在庫管理にもRFIDを活用している。
食料品用トレイのRFID利用は2002年から始まった。トレイに付けられたRFIDタグ(13.56MHz)には、トレイに入れられた商品の種類や個数が書き込まれる。トレイは店舗に出荷されるときには20個単位で積み重ねられ、ゲートリーダで一括読み取りが行われる。目視やバーコードによる検品に比べると、RFIDによる読み取りは大幅に作業時間を短縮できるだけでなく、正確性が向上する。
食料品のような単価の安いものに対して、個別にRFIDタグを貼り付けるにはコストがかかり過ぎてしまうが、繰り返し利用できるプラスチックトレイへの貼り付けであれば費用対効果の面からいってもお得である。
プラスチックトレイ17個を一括読み取り(舟本氏のプレゼンテーションより) |
2003年からはマークス&スペンサーの得意とする衣料品(英国ではシェア1位だ)へのRFIDの適用を開始した。まず2003年秋には1万着の紳士服にRFIDタグを付け4週間のトライアル実験を行った。トライアル結果から顧客に受け入れられる技術だと判断し、2004年4月からの実証実験へと移行する。
衣料品にはUHF帯(868MHz)の読み取り専用タグが採用された。なお、同社はこれを「インテリジェントラベル」と呼んでいる。実証実験では3社の納入業者を対象に、配送センター1カ所、9店舗で約40万着に個別のRFIDタグを付けた。
衣類の場合、同じデザインでもサイズが異なるなど、陳列中の商品の欠品把握が難しい。そこで、ハンディ型RFIDリーダによる在庫チェックを実施した。このハンディ型リーダは、ハンガーラックつり下げられた衣類と衣類の間に差し込みやすいように足ヒレのような形をした特注品だ。
実験は、売り上げの増加や在庫充足率の改善、顧客からの取り寄せ注文の減少など満足の得られる結果となった。また、購入された衣類のRFIDタグは取り外さずに顧客に渡されたが、プライバシーに配慮したリーフレットを配るなどの対策を行い、高い顧客満足度を実現したという
マークス&スペンサーが配ったリーフレット(舟本氏のプレゼンテーションより) |
RFIDがもたらす小売流通へのメリットは、単に小売業者の作業効率が改善されるだけではなさそうだ。在庫の把握は、結果的に顧客満足度や企業の信用度の向上につながる。ヨドバシカメラのRFIDシステムは、日本における流通分野へのRFID適用の指標の1つとなるだろう。今後の動向から目が離せない。
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