EPCが変える小売流通、先行する欧米市場はいま


岡田 大助
@IT編集部
2006年4月25日
小売流通分野へのRFID適用でEPCglobal陣営が攻勢を仕掛けている。ヨドバシカメラのRFIDシステム稼働が間近といわれているが、先行する欧米の小売業での成果はどうだ?(編集部)

 小売物流は実証実験から実サービスへ

 RFIDに関連するニュースにおいて、UHF帯ICタグ「C1G2(Gen2)」というキーワードが目立ち始めた。これは、EPCglobalがUHF帯を使う無線通信規格(Air Interface Protocol)として定めた「Class-1 Generation-2 UHF RFID」のことである。現在、予定より若干の遅れが出ているものの、ISO/IEC 18000-6 type Cとして国際標準化される方向だ。

 また、米WalmartがRFIDを使った流通システムを構築していることは有名であるが、いよいよ5月からはヨドバシカメラも同様のシステムを稼働させる予定だ。最近では国内でも ヒューレット・パッカード、ベリサイン、オラクルといった大手ベンダがEPCglobal仕様準拠のサービスを積極的にアピールし始めており、実証実験から商用化へとステップアップする時期に差し掛かっているようだ。

 RFIDによって、製造業、卸売業、小売業をつなぐ日用雑貨の流通分野はどのように変化していくのだろうか。日本ベリサインが4月18日に開催した「ベリサインソリューションセミナー2006〜動き出したEPCglobal/RFIDを活用した流通革命〜」において、舟本流通研究室の舟本秀男氏がWalmartをはじめとする欧米の最新事例を紹介したので、レポートしたい。

 本格稼働から1年経過したWalmartは変わったのか

 米国最大手の小売業であるWalmartは2005年1月から、EPCglobal準拠のRFIDシステムを稼働させた。配送センター3カ所、Walmart店舗104カ所、会員制のSAM'S Club店舗36カ所で流通するパレットとケースにRFIDタグを貼り付けている。

 Walmartは600テラバイトを超える商品明細データベースを持っており、売り上げデータは15分ごと、在庫データは1時間ごとに分析を行っている。また、RFIDに対応した納入業者は30分ごとに商品のステータス情報を受信しており、欠品の防止に努めている(Walmartの欠品率は8.2%だそうだ)。

 WalmartのRFID導入の狙いはどこにあるのだろうか。舟本氏によれば、WalmartのグローバルRFIDマネージャを務めるサイモン・ラングフォード氏は、「顧客は求める商品を高い鮮度で入手でき、取引先は詳細情報で適切な在庫改善策や商品補充計画を講じ、われわれは自動化による作業軽減と在庫切れの改善が期待できる」と語ったと報告する。実際、在庫切れを16%削減できたといい、従来の発注作業に比べて10%の作業軽減を実現したという。

 Walmartの場合、物流も自社システムで賄っているにもかかわらず、販売管理費が売り上げに占める割合が約16%と競合他社と比べて圧倒的に低い(競合は約25%、日本のイトーヨーカ堂やイオンは26〜28%だという)。2006年中には現在利用しているGen1タグからGen2タグへの切り替えを完了し、パフォーマンスの向上を目指すという。また、2006年1月以降、取引先を400社に増やし、配送センターも12カ所に拡大する。

Walmartの販売管理費は競合に比べて低い(舟本氏のプレゼンテーションより)

 今後は、個品へのRFIDタグの貼り付けを拡大し、帳簿在庫と実在庫の一体化を目指すという。また、ハンドヘルド型リーダの採用拡大やベルトやベストといったウェアラブルリーダの検討、フォークリフトのフォーク部分をRFIDリーダにしてゲート型リーダの置き換えなどを予定している。

 自社でRFIDラボを運用するドイツのMetro

 ドイツの小売最大手であるMetroも2003年からRFIDを使ってパレットの所在を把握するための実験を実施している。2005年末からは取引先100社を対象に、10カ所の配送センターと250カ所の店舗で本格的な流通システムを構築した。その目的は、効率性、透明性、リアルタイムという3本柱である。

 効率性では、パレットやケースの動きを自動的にモニタリングすることで、商品受領時間の短縮や在庫管理の最適化を検証する。透明性では、サプライチェーンにおける商品のトラッキングとトレーシング、シュリンケージ(流通段階で商品の数が減ること。具体的には流通段階での窃盗や店舗での万引きなど)の削減を目指す。

 MetroはRFIDのプロジェクトチームを立ち上げただけでなく、デュッセルドルフにあるラインバーグ店を「Metro Extra Future Store」として改装、RFID以外にもさまざまな最新技術の実証実験を行っている。例えば、クラフトのチーズやジレットのひげそりなど個品単位でRFIDタグを利用し、ディスプレイによる商品情報提供、一括清算/セルフチェックアウト、万引き防止対策などだ。

 さらに、GS1ドイツとリサーチラボ「EPCglobal Performance Test Center」を設置したり、P&GやIBM、SAPなどと共同でRFIDアプリケーションの開発に取り組んだりしている。リサーチラボではハンガーにつるした衣類にRFIDタグを付け、配送先の仕分けの自動化や、サイズやカラーの確認、コーディネートの提案といったサービスの可能性を探っている。また、リサイクルの進んだ欧州らしく、カンやペットボトルのリサイクル状況の把握や、冷蔵庫内の物品管理(賞味期限や品薄をユーザーに知らせるインテリジェント冷蔵庫)の検証といった小売流通を超えた範囲のRFID利用まで視野に入れている。

Metro Extra Future Storeのバックヤード(舟本氏のプレゼンテーションより)

Metro Extra Future Storeの店内(舟本氏のプレゼンテーションより)

 
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EPCが変える小売流通、先行する欧米市場はいま
Page1
小売物流は実証実験から実サービスへ
本格稼働から1年経過したWalmartは変わったのか
自社でRFIDラボを運用するドイツのMetro
 
  Page2
英国の百貨店マークス&スペンサーのインテリジェントラベル


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