UHF帯を現場同様の環境で検証「HP RFID Noisyラボ・ジャパン」
柏木 恵子
2007年8月10日
標準化されたばかりのEPCISを使ったSCMデモ
サプライチェーンの現場を想定したシナリオに従って、EPCIS(EPC Information Service)を使ったデモも見学できる。EPCISとは、EPCをキーにした情報の登録・検索を行うためのサービスである。2007年4月にEPCglobalによる標準化が行われたばかりで、実際にインターネットを経由する形での動作デモが見られるのは珍しい。
想定シナリオは、製造工場の倉庫から個品レベルでRFIDタグを発行した製品を出荷し、それを受け取った配送センターで「P店」「Q店」という2店舗向けに仕分けて出荷するというものだ。
デモは、製造工場で配送センターからの注文を受けるところから始まる。まず、該当する製品のバーコード(JANコード)をハンディ端末でスキャンして、個品ごとにSGTINを振り出し、ラベルプリンタからRFIDタグを発行する。
検品は、コンベア脇に設置したアンテナによって自動的に行われる。また、実際に輸送するにはいくつかの製品をまとめて1つのパレットに乗せることが多い(パレタイズという)。Noisyラボでは、回転式の作業台の横にRFIDリーダを設置し、ストレッチラップで製品群をラッピングしながらRFIDタグを一括で読み取るデモも行われている。この仕組みは、実際に米HPのプリンタ工場で採用されており、台を回転させることでアンテナ出力を抑えてもRFIDタグをすべて読むことができるという。
ラッピングされた製品群には、SSCC(Serialized Shipping Container Code:パレットや箱を識別するコード)が書き込まれたRFIDラベルが発行される。Noisyラボではカゴ車にSSCCを張り付けていた。
回転式の作業台上にパレットを置き、製品をラッピングしながら一括読み取り(Noisyラボではラッピング作業は想定のみ) |
工場からの出荷のチェックはゲート型RFIDリーダによって行われる。すでにカゴ車に張られたSSCCとカゴ車に搭載された製品群のSGTINはひも付けられているので、製品すべてのRFIDタグを読む必要はないという。なぜなら、SGTINが書き込まれたRFIDタグを1つでも読めば、その情報からその梱包全体のSSCCを導き出すことができるからだ。
入荷検品や出庫検品に用いられるゲート型RFIDリーダ。足元の小さい四角形のセンサーに荷物が感知されると読み取りを開始する |
ちなみに工場から出庫された段階で、自動的に配送センターへ対してASN(事前出荷明細通知)が送られる。荷物を受け取った配送センターでは、ゲート型RFIDリーダを通過させて読み取り情報とASNをつき合わせ、入荷検品とする。この情報がEPCISに反映されると、ステータスは「配送中」から「配送センター」に更新される。
配送センターにおける2つ目のデモは、RFIDタグを使った自動仕分けだ。ラッピング梱包を解いた製品を仕分け用コンベアに流すと、コンベア脇に設置されたRFIDリーダが各製品のRFIDタグを読み込み、自動的にP店向けとQ店向けに振り分ける。この時、新たに各店舗向けのSSCCが自動発行される。配送センターからの出荷は、工場出荷と同様だ。
自動仕分けコンベアによるデモ |
これら一連の情報は、RFIDタグが読まれるたびにインターネットを通じてEPCISへと送られている。Noisyラボのデモでは、WebベースのEPCISインターフェイスが用意されており、どれか1つのSGTINをキーとして(もちろんSSCCでも可)検索をかければ、製品が現在どこにあるのか、いつ、どこでRFIDタグが読み込まれたのか、物流のステータスはどの段階なのかといった情報をリアルタイムで追跡することが可能になる。
モノと情報をひも付けて、信頼性を高めるRFID
RFIDは1970年代に独BMWの自動車組み立てラインに導入されて以来、FA(Factory Automation)の世界ではかなり導入が進み、その有効性もさまざまな場面で認知されてきた。
RFIDタグの特徴としては、
- RFIDリーダ/ライタから離れていても読み取ることが可能
- RFIDタグが視認できる場所になくてもよい
- 位置を厳密に特定しなくてよいため自動化が容易
- 複数のRFIDタグを一括して読み書きできる
といったことが挙げられる。
このような特徴から、物流の現場では「箱をあけずに中身を確認でき、人手の介入を減らすことができる」と期待されている。また、物理的なモノの流れと、それに関する情報をリアルタイムにひも付けることで、SCM(サプライチェーンマネジメント)の大幅な効率化も可能だと考えられている。
すでにさまざまな実証実験が行われ、RFIDの長所や短所、バーコードとの違いなどへの理解は深まってきた。実験の段階から実用の段階に移っていく中で、市場の興味は「どう活用すればいいのか」「既存のシステムとどのように連携あるいは入れ替えを行えばいいのか」といったことに移っている。
導入の第1ステップとして、比較的容易に実現できるのが、物流オペレーションの効率化だ。入出荷の際の検品や仕分け、棚卸しといった倉庫内の効率化である。
しかし、よりROIを向上させるには、収集したデータの活用が不可欠だ。例えば、トータルの在庫を可視化することで欠品や余剰在庫を抑制したり、入出荷サイクルを短縮化するといったことで、目に見える利益率の向上が可能となる。
また、物理的な物の流れとそれに関する情報をリアルタイムにひも付けることで信頼性が高まるり、トラブルの際に適切対応ができるようになるといった直接目に見えにくいコスト削減も可能となるだろう。
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UHF帯を現場同様の環境で検証「HP RFID Noisyラボ・ジャパン」 | |
Page1 制御の難しいUHF帯を実環境に近い状態で事前検証 ツールを使ってタグの最適な張り付け位置を見つける |
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