第2回 RFIDシステムのチューニングとは何か


布施 圭介
ソーバル株式会社
ワイヤレス事業部
フィールドエンジニアリンググループ
ユビキタスプラットフォーム開発チーム
課長
2007年5月10日
RFIDシステムを導入したものの期待どおりのパフォーマンス向上につながらない。高度な無線通信技術のノウハウを持つエンジニアがチューニングポイントを伝授する(編集部)

 第1回「RFIDシステムへの期待と現実」では、RFIDの性質とチューニングの必要性について述べ、実際の問題点を説明しました。特にエラーの発生が、思った以上にパフォーマンスに影響することをご理解いただけたと思います。

 今回は問題点を解決するために行う「チューニング」についての考え方を述べたいと思います。まず、チューニングそのものについて考察し、次にRFIDシステムでチューニングを行う際の分析方法や、より良いチューニングを実現するための具体的なアプローチ方法を検討します。

 そもそも“チューニング”とは?

●エラーがないシステムが最善?

 皆さんはエラーがないシステムが最善だと思っていませんか。もちろんエラーがないのは良いことに違いありません。しかし、エラーをなくすために失うものがあったらどうでしょう。

 エラーをなくすことが目標であれば、リトライ回数を増やしたり、アンテナやリーダ/ライタの数を増やしたりすれば、エラー率を確実に減らせます。しかし、それではシステムとしてのスループットが落ちてしまい、本末転倒になってしまいます。

 スループット向上が目標なら、そのためのチューニングをしなければなりません。では、目標を達成する“チューニング”とはどのようなものなのでしょうか。

●チューニング=最適化

 “チューニング”という言葉は広い分野で使われています。すでに日本語になっている感がありますが、どのような意味合いで使われているのか振り返ってみましょう。

 日本では“チューニング=性能向上”という意味で使われている場合が多いようですが、元になった英語の“tuning”の意味は「調和」「協調」「調整」「同調」などです。つまり、制約条件下で目的に向けて目標を設定し、それに合わせることといえます。

 FMラジオのチューニングで考えれば、FM放送という制約条件下で目的の放送局の周波数に合わせることがチューニングです。結果として良い品質の音が聞こえれば“チューニング=性能向上”といえるかもしれませんが、さすがにより良い音のために高級ラジオに買い替えたり、電波状況の良い場所へ引っ越したりするのはチューニングとはいえないでしょう。

図1 FMラジオのチューニング

 「調整」の意味でのチューニングを行うに当たって大切なことがあります。目的と調整パラメータです。

 FMラジオの例では聞きたい放送を良い音で聴くことが目的で、受信周波数が調整パラメータとなります。また、FMラジオの受信範囲(76〜90MHz)がそのままパラメータの取り得る範囲(定義域)となります。

 チューニングとはパラメータの最適値を求めて設定し、目的を達成することです。この場合では“チューニング=最適化”が適切な表現になると思います。

 チューニングの目的と目標

 チューニングの内容は何を目的とするかで変わってきます。その目的に向かうための目標は、明確な評価が可能でなければなりません。目標となる基準があいまいになってしまうと、何をしたら最適化ができるのか分からなくなるからです。

 FMラジオの場合、チューニング目標は正確に聞きたい放送局の受信周波数を設定することになります。この目標ならば明確に達成できたかどうかが判別可能になります。つまり、チューニング目的は“実現したいこと”であり、チューニング目標はその目的を達成するための具体的な課題となります。

 さて、FMラジオの例では調整パラメータは受信周波数のみです。一般的に使われているラジオでは、ほかのパラメータはありません。そのため、“チューニング”は受信周波数を聞きたい放送局に合わせることだけになりますから、特に難しいことではないでしょう。しかし、調整すべきパラメータが多数になった場合は、どうなるでしょうか。

図2 ラジオのパラメータは1つだけ


 パラメータの数が増えると作業が複雑になる

 ラジオではパラメータは1つだけでした。では、ギターを例題に考えてみましょう。良い演奏をするためにはちゃんとチューニング(この場合は“調律”ですね)するのが基本です。ギターには6本の弦が張ってあります。それぞれの弦を正しい音程に合わせるのがギターのチューニングですのでパラメータ数は6となります。これがピアノになると88鍵もあり、それぞれに弦がありますからパラメータ数は88になります。

 パラメータの数が増えると何が起こるのでしょうか。

 1つのチューニング目的に対してパラメータの数が増えればチューニング目標も増え、手間が増えることは容易にご想像いただけると思います。

 FMラジオではパラメータが受信周波数の1個ですので、それを目標値に向けて調整するだけです。ギターの場合、チューニングは6本の各弦の張力を決まっている正しい音程になるように調整していきます。

 弦が6本ならば少し練習すればチューニングはできそうです。ところがピアノでは88本も弦があります。ある弦をチューニングしたときにほかの弦に影響が出るとしたらとても素人には手が出せそうにありません。調律のプロの出番となるでしょう。

 チューニング作業は、このようにパラメータの数に比例もしくはそれ以上に複雑になっていきます。

 
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Index
RFIDシステムのチューニングとは何か
Page1
そもそも“チューニング”とは?
チューニングの目的と目標
パラメータの数が増えると作業が複雑になる
  Page2
不安定なパラメータ、見えないパラメータ
チューニング準備完了!
RFIDシステムをチューニング
  Page3
エラー率のパラメータ
チューニングの階層構造
チューニングそのものもチューニング対象
トータルチューニングが重要


RFIDシステムのチューニングポイント 連載インデックス


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