Insider's Eye

Windows .NET Serverベータ3の概要(1)

デジタルアドバンテージ
2002/01/18

.NET Server Beta 3の提供が始まる

 Windows 2000 ProfessionalとWindows Meの後継として、Windows XP ProfessionalとHome Editionがすでに出荷されているが、Windows 2000 Server版の後継である.NET Serverはまだベータ・テストの段階である。現在、その最新版のベータ3(日本語版)の提供が行われている。本記事はこのベータ3の内容に基づいて執筆している(.NET Serverについては、「Windows .NET Server」のページや、Technetの中にある「Windows .NET Server Technical Center」などから情報が得られる)。

 .NET Serverのベータ3は、TechNet会員(TechNet Plus サブスクリプションのみ)やMSDN会員に対して、2002年1月中旬から配布が開始された。詳細についてはTechnetの「TechNet Flash (2002/1/9) 号」や「MSDNサブスクリプション」などを参照されたい。

 Windows .NET Serverは、現在出荷されているWindows 2000 Server製品の後継となる、新しいサーバ・ファミリ製品である。Windows XP Serverではなく、Windows .NET Serverとなっているのは、.NETプラットフォームとして利用されることを想定しているからだ。.NET Frameworkがあらかじめ組み込まれたバージョンが利用可能になることにより、開発者にとってはより実環境に近い状態でアプリケーションの開発を進めることができるようになった

 以下にWindows .NET Server(英語版ベータ3)のデスクトップ画面を示しておく。これを見ると、まるでWindows 2000のデスクトップ画面のようである。Windows XP技術をベースにしているのに、Windows XP ProfessionalなどでおなじみのLunaユーザー・インターフェイスでないのはやや奇異に見えるかも知れないが(もちろん最終的な製品版ではどうなるか分からない)、実際にはこれはWindows XP Professionalで「Windows クラシック」デスクトップ・テーマと「クラシック [スタート]メニュー」を選んだ場合と同じ状態のようだ(「Windows XP」テーマは用意されていないし、派手なスクリーン・セーバなどもない)。Server版では派手な装飾は不必要との判断なのだろう。外見はともかく、機能的にはやはりWindows XP ProfessionalやHome Editionとほぼ同じであるといえる。

Windows .NET Enterprise Server(英語版ベータ3)のデスクトップ画面
クライアント向けのWindows XP ProfessionalやHome Editionと違って、ユーザー・インターフェイスはLUNAではなく、従来のWindows 2000タイプがデフォルトである。
  これは、.NET Serverで新しく用意された、Webベースの管理ツール。従来のMMCベースの管理プログラムとほとんど同じ機能が利用できる。

Windows 2000からの改良点

 Windows .NET Serverは、.NETプラットフォームとして使われるだけでなく、従来のWindows 2000 Serverの後継としても期待されているOSである(.NETという名称が付いているが、Webサービスだけを目的としているわけではない)。

 ここでWindows 2000 Serverファミリと比較した場合の、Windows .NET Serverファミリの新機能や改良点について、以下に簡単にまとめておく。さまざまな新機能があるが、管理者にとっては例えばActive Directoryにおける、ドメイン名の変更やツリーの階層構造の変更機能などは注目に値するのではないだろうか。従来のWindows 2000のActive Directoryでは、ドメインの階層構造などを変更するのは非常に大変であったが(いったんドメイン・コントローラを降格してから再昇格するなどの操作が必要だった)、これが簡単に行えるようになる(ただしすべてのドメイン・コントローラをWindows .NET Serverだけで構築する必要があるが)。

 この表にある機能のうち、すでにいくつかはWindows XP ProfessionalやWindows XP Home Editionで実装されているが、Serverファミリとしては新機能であるので、改めてここで掲載しておく。ただしWindows .NET Serverの各バージョン別の差については、後で解説する。

機能 説明
サーバの信頼性向上
自動システム回復(ASR) ディスクなどに障害が発生した場合に、あらかじめ作成しておいたバックアップからシステムを回復させる機能。バックアップ時の状態に簡単に戻すことができる
互換性モード 従来のWindows 9xやMe、NTなどの古いWindows環境向けに作られたプログラムの互換性を向上させる機能
サーバの可用性の向上
USMT(User State Migration Tool) システム・インストール前のユーザーごとのさまざまな設定情報(環境設定やデスクトップ設定、メールやProxyの設定など)を保存しておいて、新しい環境で自動的に適用する機能
EMS(Emergency Management Services) EMS用に作られた特殊なハードウェア機構を利用することにより、キーボードやモニタ、マウス、ネットワークなどがないシステムでもリモートからのメンテナンスを可能にする機能
ネットワーク負荷分散の拡張 ネットワーク負荷分散機能において、複数のネットワーク・アダプタにバインドできるようになった。これにより、1つのホストで複数のクラスタを構成することが可能になる
RIS(Remote Installation Services)の改良 リモート・インストールにおいて、応答ファイルによる構成の指示方法の柔軟性向上などの改善が行われた
パフォーマンスとチューニング
システム・モニタの拡張 複数のログ・ファイルの内容を同時に監視したり、SQLデータベースに格納されたパフォーマンス・ログやアラート情報などを監視したりできる。また、1Gbytes以上のログ・ファイル・サイズに対応した
コマンドライン・ツールの拡充 パフォーマンス・カウンタやイベントを処理用のコマンドライン・ツールが追加された
認証とスマートカード・サポート
Stored User Names and Passwords ユーザーの認証情報(パスワードやX.509v3 証明書情報など)を一括して格納、管理できるようにされた。これによりローミング・ユーザーなどに対してもシングル・サインオンなどの機能を提供できる
ターミナル・サーバにおけるスマートカード・サポート スマートカードに格納したX.509v3認証情報を使って、ターミナル・サーバ(リモート・デスクトップ)にログオンすることができる。
セキュリティ
netstatコマンドの拡張 netstatコマンドで、使用中のTCPやUDPポートのオーナー情報(プロセスID)が表示されるようになった。これにより、どのプロセスがどのポートを利用しているかを監査したり、追跡したりできるようになる
EFS(暗号化ファイル・システム)の拡張 より長い暗号化キーの採用により安全性が向上した。複数のユーザー間で暗号化ファイルを共有できるようになった。ローカルにキャッシュされたオフライン・ファイルもEFSで暗号化できるようになったので、ファイルの安全性が向上している
Software Restriction Policies(ソフトウェア制限ポリシー) このポリシーを使うことにより、許可されないアプリケーションの実行を禁止することができる
リモート・マネージメント
リモート・デスクトップ リモート・デスクトップ・サービス(ターミナル・サービス)により、リモートからサーバのメンテナンス作業などを行うことができる
リモート・アシスタンス リモートからコンピュータの制御を行うことができる。リモートのコンピュータを動作させたまま、そのマウスやキーボードを外部から制御できるので、リモートからヘルプデスク業務を行ったり、共同作業を行ったりすることができる
リモート・インストール リモート・インストールにおける応答ファイルの機能が拡張された。また回復モードにおいて、ネットワーク・ファイルへのアクセスができるようになった
Active Directory
複数ユーザーの同時属性変更 Active Directory管理ツールにおいて、複数のユーザーを同時に選択してその共通の属性を同時に変更できるようになった
ユーザーのドラッグ・アンド・ドロップ Active Directory管理ツールにおいて、ユーザー・オブジェクトなどをドラッグ・アンド・ドロップで移動可能になった
ドメイン・コントローラの名前変更 ドメイン・コントローラを昇格や降格せずに、その名前を直接変更できるようになった
ドメインの名前変更 ドメインのルート・フォレストやルート・ツリー、親ドメインや子ドメインのDNS名とNetBIOS名を変更できるようになった。またフォレスト内でのドメインの位置を変更して、ドメインの階層構造を再構築することが可能
コマンドライン・ツールの拡充 Active Directoryを操作するためのコマンドライン・ツールが多数用意された
メディアからのActive Directoryのインストール すでに存在するActive DirectoryのデータベースをテープやCDなどにバックアップし、このメディアを使って、新しいActive Directoryのデータベースを構築することができる。これにより、ネットワークで接続されていないようなサイトや、低帯域ネットワークしか利用できない場合でも、素早くActive Directoryを構築可能になる
universal group membership情報のキャッシング universal group membership情報をローカルのドメイン・コントローラ上にキャッシュすることにより、グローバル・カタログ(GC)へのアクセスを抑えることができる。GCがローカルにないような小規模なサイトでは、これにより、低速なWAN回線などへのアクセスの必要性がなくなり、ログオン時間を短縮させることができる
クエリー情報の保存 Active Directory管理ツールで、検索する条件などを保存しておいて、再検索できるようになった
ディスクとファイル関連機能
リモート・ドキュメントのサポート WebDAVプロトコルのサポートにより、HTTPプロトコルを使ってファイルをリモートで共有することができる
コマンドライン・ツールの拡充 diskpartやfsutilのようなさまざまなコマンドライン・ツールにより、ディスクの管理機能が強化された
GUIDパーティション・テーブルのサポート(Itaniumシステムのみ) Itaniumシステムでは、従来のFDISK(MBR)形式よりも柔軟性の高いGPT(GUID Partition Table)というディスクのパーティション形式をサポートしている。冗長性のあるパーテョション情報の保存方法により、信頼性が向上された
プリンタ関連機能
コマンドライン・ツールの拡充 プリンタの状態をコマンドライン・ツールを使って制御することができる
クラスタ・システムにおける容易なインストール Windows .NET Serverのクラスタでは、1つの仮想クラスタにプリンタ・ドライバをインストールすると、クラスタ内の各ノードへ自動的にそれが伝えられ、すべてのノードにインストールされるようになった
IIS 6.0
アプリケーション実行モデルの改良 複数のサイトやWebアプリケーションごとに個別のプロセス空間を割り当てることにより、あるプロセスやサービスが障害を起こして停止しても、他のプロセスに影響を与えない。また、カーネル・モードで動作するドライバを導入して、マルチプロセッサ・システムにおけるパフォーマンスやスケーラビリティを向上させている
グループウェア
SharePoint Team Service SharePoint Team Serviceにより、Webベースで各種のドキュメントなどを共有したり、ディスカッションを行ったりすることができる
マルチメディア・サポート
オーディオ・アクセラレーション マルチメディア・データをネットワーク経由で送る場合、その通信の優先度を制御して、ストリーミングのクオリティを最大化させられる
ターミナル・サービス
オーディオ・リダイレクション ターミナル・サービスでオーディオ・データをやり取りする。これにより、音声を伴うようなアプリケーションでも、ターミナル・サービスで利用可能になる
解像度と色数の増加 ターミナル・サービスで利用できる色の数や画面解像度を、クライアント側の最大値にまで高められる。フルカラー・モードもサポートされている
グループ・ポリシーとの統合 ターミナル・サービスで利用できるユーザー設定情報(リダイレクション設定、パスワード、背景など)をグループ・ポリシーを使って一括管理できる
ネットワーク機能
Fibre Channelサポート Fibre Channelを使ったネットワークやディスク、クラスタ・システムなどがサポートされた
複数のネットワークの自動構成 ネットワーク・デバイスやインターネットへの接続などを自動的にコンフィギュレーションする機能を持っている。これにより例えば、1台のコンピュータを複数の場所(自宅とオフィスなど)で使い分けたりするのが容易になった
IASにおけるRADIUS Proxy IAS(インターネット認証サービス)において、RADIUSサーバへの要求を中継、代理応答する機能が用意された
無線ネットワークのサポート IEEE802.11無線ネットワークに対する自動的なコンフィギュレーション機能がサポートされた。ローミングして使うような場合でも、ネットワークの構成が自動的に設定される
IPv6サポート 次世代のインターネット・プロトコルであるIPv6がサポートされた
Windows .NET Serverファミリにおける主要な新機能
Windows 2000 Serverファミリと比較した場合の、Windows .NET Serverの改良点。ただしこの中には、すでにWindows XP ProfessionalやWindows XP Home Editionですでに実装されている機能も含まれている。
   
関連リンク
Windows .NET Server

Windows .NET Server Technical Center (Technet)

TechNet
TechNet Flash (2002/1/9) 号
MSDNサブスクリプション
 
 

 INDEX
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    Windows .NET Serverベータ3の概要(2)
 
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