Insider's Eye

OSロードマップの新展開

―― Windows 98系のサポート期間延長からLonghornサーバまで ――

Rob Helm
2004/02/26
Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2004年2月15日号 p.19の「OSロードマップの新展開/Windows 98系のサポート期間延長からLonghornサーバーまで」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 MicrosoftはクライアントOSのWindows 98、Windows 98 Second Edition(SE)、Windows Millennium Edition(Me)の延長サポート・フェーズを2006年まで再延長することを明らかにした。この約2年間のサポート期間延長は、同社が進めるWindowsの世代交代計画に対する最新の動きだ。Windowsの世代交代計画は、Windowsソフトウェアの開発やWindowsユーザーのサポートに携わる組織にとって重大な意味を持つ。早くても2006年まではOSの新しいメジャー・リリースはないと予想されるため、既存製品のアップデートが向こう2年間にわたって継続されると見てよさそうだ。

ライフサイクル・ポリシーに新たな例外

 Microsoftは、Windowsの旧バージョンのサポート継続は、旧バージョンへの依存度が特に高い新興諸国の顧客に特に恩恵をもたらすと説明している。

 この決定に伴って注目されるのが同社の“ライフサイクル”サポート・ポリシーだ。このポリシーでは、製品の発売後、どのようなソフトウェア・アップデートとサポート・サービスがどれだけの期間、提供されるかが規定されている。このポリシーは、既存製品の使用終了や新製品への移行、新しいアプリケーションや機器の開発を計画しなければならない組織にとって重要だ。

 Microsoftのライフサイクル・ポリシーによると、Windowsを含むビジネス製品では発売後5年間はメインストリーム・サポート・フェーズとなり、Microsoftはこの期間中、ホットフィックスやサービス・パック、(各製品の保証内容に応じた)無償電話サポート、インシデント制の契約による有償サポートなどを含むフルサポートを提供する。発売後5年間が過ぎると延長サポート・フェーズとなり、無償セキュリティ・パッチや有償ホットフィックス、電話サポートの提供は継続されるが、それ以外のほとんどのサポートは提供されない。

 延長サポート・フェーズは、名目上はメインストリーム・サポート・フェーズの終了後2年間とされている。だが、MicrosoftはWindowsの特定のバージョン(Windows NT 4.0など)について延長サポートを2年以上にわたって継続しており、無償セキュリティ・ホットフィックスなどのサポートをさらに長期間提供しているケースもある。

Windows XPアップデートからLonghornへのシナリオ

 今後、Windows 98/98 SE/Meについては、ホットフィックス以外の開発は行われない。Microsoftはより新しいバージョンのWindowsに重点を置くからだ(次の「WindowsクライアントOSの最近のリリース」を参照)。

WindowsクライアントOSの最近のリリース
 2004年1月時点でフルサポートが提供されているWindowsクライアントOSは、Windows 2000とWindows XPだ。

 Windows NT Workstation 4.0は、すべてのサポートが2004年6月30日に終了する。それまではセキュリティ関連のホットフィックスだけが提供される。

 Windows 98/98 SE/Meは、延長サポートが2006年6月30日に終了する。この3製品のサポート期間は大幅に延長されており、以前はWindows 98の延長サポート・フェーズの終了日は2004年1月16日、ほかの2製品の延長サポート・フェーズの終了日は2004年12月31日に設定されていた。

 Microsoft製品は通常、最新のサービス・パックが適用されていることを前提にサポートされているが、顧客が最新サービス・パックに移行するまでの猶予期間が1年間設けられている。つまり、例えばService Pack 3が適用されたWindows 2000 Professionalは、2004年6月26日までサポートされる。

製品 現在のサービス・パック メインストリーム・サポートの終了日*1 延長サポートの終了日*2 リリース履歴
Windows NT Workstation 4.0 SP6a:1999年11月30日 2002年6月30日 2004年6月30日 リリース:1996年7月
SP1:1996年9月
SP2:1996年12月
SP3:1997年4月
SP4:1998年10月
SP5:1999年5月
Windows 2000 Professional SP4:2003年6月26日 2005年3月31日 2007年3月31日 リリース:2000年3月
SP1:2000年7月
SP2:2001年5月
SP3:2002年8月
Windows XP Professional SP1a:2002年9月4日
SP2:ベータテスト中 (2004年半ばにリリースされる見通し)
2006年12月31日 2008年12月31日 リリース:2001年9月
Windows XP Tablet PC Edition SP1a:2002年9月4日 2006年12月31日 2008年12月31日 リリース:2003年2月
WindowsクライアントOSのサポート期限
* サービス・パックなどの提供日はすべて英語版のもの。
*1 メインストリーム・サポート・フェーズの間、Microsoftはホットフィックスやサービス・パック、(各製品の保証内容に応じた)無償電話サポート、インシデント制の契約による有償サポートなどを含むフルサポートを提供する。
*2 延長サポート・フェーズの間、無償セキュリティ・パッチや有償ホットフィックス、電話サポートの提供は継続されるが、それ以外のほとんどのサポートは提供されない。

 クライアント用Windowsの現行バージョンであるWindows XPは2001年9月にリリースされ、メインストリーム・サポート・フェーズは2006年12月31日に終了する予定だ。これはWindows 98系OSの延長サポート・フェーズの終了日でもある。

 2006年末までにいくつかのクライアントのリリースが計画されている。2004年にMicrosoftはWindows XPのサービス・パックをリリースする。このサービス・パックはバグ修正にとどまらず、同OSのセキュリティ設定の大幅な変更と新機能の提供も目的としている。Windowsの次期メジャー・リリースとなるLonghorn(開発コード名:ロングホーン)は2005年末か2006年初めにリリースを計画している(次の図「LonghornサーバーまでのOSリリース計画」を参照)。

LonghornサーバまでのOSリリース計画
2004年には、Windows XPとWindows Server 2003の各サービス・パックのリリースが計画されている。WindowsクライアントOSの次期メジャー・リリースとなるLonghornは2005年末か2006年初めに登場する見通しだ。Windows Serverの次期メジャー・リリースはLonghornの18カ月後に登場するだろうが、LonghornクライアントとサーバOSの互換性を確保するため、同クライアントと同時にWindows Server 2003のサービス・パックがリリースされることになりそうだ。

 これまでに発表された今後のリリースは次のとおり。

●Windows XP Service Pack 2(SP2)
 SP2は、すでに知られているセキュリティの脆弱性とバグに対応する徹底的にテストされた修正プログラムを含むほか、Windows XPにセキュリティ向上のためのロックダウンという大幅な設定変更を加え、ブラウザでポップアップ広告を遮断する機能などの新機能も追加する。セキュリティ用のロックダウンは一部のサービスをデフォルトで無効にするもので、アプリケーションの互換性に影響する可能性がある。リリース時期は2004年半ばの見通しである。

●Windows XP Tablet Edition 2004
 Lonestar(ローンスター)という開発コード名で呼ばれるこのTablet PC用のアップデート・リリースは、ペン入力機能の改善、ハードウェアの機能向上の活用、および対応言語の拡大を主眼としている。また、Windows XP SP2が組み込まれるかもしれない。リリース時期は2004年半ばの見通しである。

●Longhorn
 Windowsの次期メジャー・クライアント・リリースとなるLonghornは、Windows NTとWin32 APIの登場以来、初めて開発者がアプリケーションを作成する方法を根本的に変える。Microsoftはこの変化が、ユーザーにアップグレードを促す新世代のアプリケーションを生み出すことを期待している。

 MicrosoftはLonghornで次のような新しいサブシステム(いずれも開発コード名)を導入する。

  • Avalon(アバロン):新しいグラフィックス・システム。

  • Indigo(インディゴ):改良されたWebサービスやそのほかの種類のアプリケーション間通信を可能にする。

  • WinFS:SQL ServerやWindows SharePoint Servicesの技術を基にNTFSファイル・システムを拡張する。

 MicrosoftのOfficeなどの製品チームも含め、開発者はWinFXと呼ばれる新しいAPIセットを介してこれらのサブシステムにアクセスする。WinFXは.NET Frameworkを大幅に拡張し、OSに統合したものだ。

 LonghornクライアントとサーバOSの互換性を確保するため、同クライアントとともにWindows Serverのアップデート・リリース、もしくはサービス・パックがリリースされる可能性がある。Windows Serverの次期メジャー・リリースはLonghornクライアントの後に登場することになるだろう。Longhornのリリース時期は2005年末か2006年初めの見通しである。

Windows Serverの次期メジャー・リリースは2007年以降

 サーバOSでは、Windows NT 4.0のサポート終了日が近づいており、Windows 2000のメインストリーム・サポートが2005年に終了する(下記の「WindowsサーバOSの最近のリリース」を参照)。

WindowsサーバOSの最近のリリース
 2004年1月時点でフルサポートが提供されているMicrosoftのサーバOSは、Windows 2000 ServerとWindows Server 2003だ。Windows NT Server 4.0は、延長サポートが2004年12月31日に終了し、セキュリティ関連のホットフィックス以外のサポートを利用するには、カスタム・サポート契約を結ぶ必要がある。

 ほかの製品と同様に、サーバOSは通常、最新のサービス・パックが適用されていることを前提にサポートされているが、顧客が最新サービス・パックに移行するまでの猶予期間が1年間設けられている。例えば、Service Pack 3が適用されたWindows 2000 Serverの場合は、2004年6月26日までサポートされる。

製品 現在のサービス・パック メインストリーム・サポートの終了日*1 延長サポートの終了日*2 リリース履歴
Windows NT Server 4.0 SP6a:1999年11月30日 2002年12月31日
(有償サポートの終了日:2005年1月1日)
2004年12月31日 リリース:1996年7月
SP1:1996年9月
SP2:1996年12月
SP3:1997年4月
SP4:1998年10月
SP5:1999年5月
Windows 2000 Server SP4:2003年6月26日 2005年3月31日 2007年3月31日 リリース:2000年3月
SP1:2000年7月
SP2:2001年5月
SP3:2002年8月
Windows Server 2003 SP1:ベータテスト中
(2004年半ばにリリースされる見通し)
2008年6月30日 2010年6月20日 リリース:2003年5月
WindowsサーバOSのサポート期限
* サービス・パックなどの提供日はすべて英語版のもの。
*1 メインストリーム・サポート・フェーズの間、Microsoftはホットフィックスやサービス・パック、(各製品の保証内容に応じた)無償電話サポート、インシデント制の契約による有償サポートなどを含むフルサポートを提供する。
*2 延長サポート・フェーズの間、無償セキュリティ・パッチや有償ホットフィックス、電話サポートの提供は継続されるが、それ以外のほとんどのサポートは提供されない。

 Windows Serverの現行バージョンであるWindows Server 2003(開発コード名:Whistler)はWindows XPと同時にリリースされる計画だったが、最終的に2003年4月にリリースされた。Windows Server 2003のメインストリーム・サポートは2008年6月30日に終了する。

 Windows Serverの今後の重要なリリースには次のようなものがある。

●Windows Server 2003 Service Pack 1
 このサービス・パックは、すでに知られているセキュリティの脆弱性とバグに対応し徹底的にテストされた修正プログラムを含むほか、“ロールベース”のセキュリティ・ロックダウン・ウィザードなどのセキュリティ強化機能を提供する。リリース時期は2004年半ばの見通しである。

●Longhornに対応したWindows Serverのサービス・パック
 Microsoftは、Longhornで導入されるサブシステムとAPIに基づくサーバOSの提供を計画しているが、そのリリースはLonghornの約18カ月後になりそうだ。このため、Microsoftはサーバ/クライアント間の互換性を保証するため、Longhornクライアントと同時にWindows Serverのサービス・パックをリリースしなければならないだろう。

 Microsoftはこうしたサービス・パックの提供計画を発表していないが、Longhornの機能セットとスケジュールから見て、提供されることが予想される。Exchangeなどサーバ製品の次期リリースを利用するのにもこのサービス・パックが必要になるだろう。リリース時期はLonghornと同時(2005年末か2006年初め)の見通しである。

●Longhornサーバ
 このリリースでは、Dynamic Systems Initiativeの一環として開発が進められている統合的なシステム管理インフラや、Longhornクライアントで導入される機能セット(WinFSやWinFXなど)の完全な実装などが提供される見込みだ。

 Microsoftの以前のロードマップでは、Blackcomb(ブラックコム)という開発コード名のサーバOSが2006年か2007年に登場するとされていた。Blackcombの機能セットは一度も明確に公表されなかったが、Longhornサーバはこれに近い時期に同様の機能を提供すると見られる。リリース時期はLonghornクライアントの18カ月後の見通しである(2007年以降)。

 2007年までサーバOSのメジャー・リリースの出荷はない見込みだが、Windows Serverチームに時間の余裕があるわけではない。このチームは(Windows SharePoint Servicesのような)無料の機能パックや、最近アップデートされたServices for Unixなど、異種環境の相互運用を支援する製品のアップデートを継続していくからだ(『Directions on Microsoft日本語版』 2004年2月15日号の「UNIXとの相互運用を促進、アジア市場でLinux対策にかかる期待」を参照)。

目が離せないOSロードマップ

 Windowsのロードマップはたびたび変更されているため、移行やトレーニング、ソフトウェアの互換性テストを計画する必要がある組織は、Microsoftの製品ライフサイクルを注視すべきだ。特に注意を払う必要があるのは、2005年に設定されているWindows 2000のメインストリーム・サポートの終了日が変更されるかどうかだ。Windows 2000からの移行のペースがMicrosoftの予想よりも遅ければ、同OSのサポート期間はWindows 98系OSのように大幅に延長される可能性がある。

参考資料

参考リンク
  Insider's Eye-導入担当者のためのマイクロソフト製品ライフサイクルの基礎知識(Windows Server Insider)
  Insider's Eye-革新的なOSを目指して開発が進むLonghorn (Windows Server Insider)
  Insider's Eye-次期クライアントOS「Longhorn」本格始動へ(Windows Server Insider)
  Insider's Eye-「Longhorn」の出荷は2006年?暫定バージョンの可能性も(Windows Server Insider)
  Insider's Eye- Yukonで革新されるDBサーバ・プログラミング(Windows Server Insider)
  Insider's Eye-見え始めた「Yukon」の全貌(Windows Server Insider)
  Insider's Eye- PDC 2003レポート No.1--Longhorn、Yukon、Whidbey。次世代コンピューティングに高まる開発者の熱き期待 (Windows Server Insider)
  Insider's Eye-Exchange暫定版が2003年夏に登場(Windows Server Insider)
  Insider's Eye-企業コンピューティングに向け攻勢をかける2003年のマイクロソフト(2)(Windows Server Insider)
  ソリューション - 初めてのSQL Server 2000 第1回 データベースの基礎とSQL Server 2000 1.データベースの基礎(1)(Windows Server Insider)
     
 
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