製品レビュー
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現状システムの移行時の問題点
ファイル・サーバ資産を移行する場合、単純な同一ドメイン内での移行でも何かと問題が起こる。ましてやNTドメインからActive Directoryへの移行となるとさらにハードルは高い(この作業にはActive Directory Migration Tool:ADMTが使える)。この際でも、移行するファイル・サーバがドメインのメンバ・サーバであれば、サーバ・コンピュータ自体を新しいドメインに移行させることは容易だ。しかしドメイン・コントローラ上でファイル・サーバも提供しているような場合は、ADMTによるドメイン移行とは別に、ファイル・サーバ環境を移行させる工程が別途必要である。ここで次の3点の工数が問題となってくる。
■移行元ファイル・サーバの状態を詳細に把握する
ファイル・サーバ移行前の状態把握では、基本的に共有レベルのアクセス権およびファイルのアクセス権(NTFSの場合)を把握することが重要である。しかしこれらの管理を現場のユーザ任せにしているような場合は、それらの実態を把握するところから始めなければならない(小規模なネットワークでは、こうしたサーバが非常に多いのが実情)。
■移行元ファイル・サーバから、移行先ファイル・サーバへと実際に資産を移行する
実際の移行作業は、Windows 2000/Windows Server 2003にあるxcopy.exeコマンドを用いて行うことができるが、共有レベルのアクセス権の設定など、複数の手順が必要である。複数サーバがある場合はその台数分繰り返し、そしてコピー完了後は、ファイル・コピーが問題なく行われたかどうか確認する必要がある。Windows
2000/Windows Server 2003のxcopyコマンドを利用した移行の詳細については、以下のマイクロソフトのドキュメントを参照されたい。
■移行後のエンド・ユーザへのフォロー
移行作業が完了したら、旧環境から新環境への変更点などに関するエンド・ユーザからの質問の回答や、各種サポート作業に応じなければならない。
ファイル・サーバ移行作業を支援するFSMT
FSMTは、前記3点に関する人的負担を軽減してくれるものだ。主要な特徴は次のとおり。
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移行元サーバの共有フォルダのセキュリティ情報、およびファイルそのものを自動的にコピーできる。
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複数台の移行元システムから収集した情報やデータを1台の移行先サーバ環境に統合してコピーするといった一連の作業が、GUIベースで容易に行える。この際の作業は、おおむねシステムを稼働させたまま実行できる。
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一般には移行先サーバのUNCパスは新しいものとなるが、移行元のUNC(共有パス名)をそのまま引き継いで利用可能にする設定もできる。
情報/データの自動収集時に使用中だったファイル(誰かが開いていたファイル)は、後から移行できるので、必ずしもユーザのサーバ利用を制限する必要はない。移行先ディレクトリ構成などもカスタマイズが可能だ。
3.の設定は、キットに同梱されている「DFS統合ルートウィザード」またはDfsconsolidate.exeコマンドから実行できる。なお、キット自体はクラスタ構成のファイル・サーバの移行もサポートしているが、今回の記事では詳細には言及しない。
■FSMTの入手方法
FSMTは、前述したマイクロソフトのWebサイトから無償でダウンロードできる(ファイル名はFSMigrate.msi)。ただし現状では、ダウンロードするために.NET
Passportアカウントと、利用者アンケートに答える必要がある。
■FSMTのシステム要件
FSMTには2つの機能があり、それぞれシステム要件が異なるので注意してほしい。
1つは「ファイル・サーバ移行ウィザード」で、これは移行元ファイル・サーバから共有フォルダの構成およびセキュリティ設定を含むファイルの情報を取得し、移行先サーバにコピーする機能を持つ。FSMTの核となる機能である。
移行元OS | Windows Server 2003/Windows 2000 Server/Windows NT Server 4.0各ファミリ/Windows Storage Server 2003 |
移行元の条件 | ファイル・システムがFATまたはNTFSであり、共有フォルダが存在していること |
移行先OS | Windows Server 2003ファミリ/Windows Storage Server 2003 |
移行先の条件 | ファイル・システムがNTFSであること |
「ファイル・サーバ移行ウィザード」利用の必要条件 |
システム要件に関して、OSに対するサービス・パックの適用レベルによる制限については、ヘルプに特段の記載はなく、特に注意する必要は少ないと思われる(筆者の手元では、Windows NT Server 4.0 SP5およびWindows 2000 Server SP0を移行元サーバとして実行したが、特に問題は起こらなかった)。ただしDFS統合ルートを利用する場合はDFSクライアント(アクセスする端末)に制限があるので、ヘルプのシステムおよびアカウント要件のトピックを確認してほしい。
なお今回確認した限りでは、Windows NT Workstation 4.0 SP6aや、Windows 2000 Professional SP4を移行元サーバとする移行作業も問題なく行えたことを、申し添えておく。
もう1つが前述した「DFS統合ルート・ウィザード」である。DFS統合ルートとは、Windows Server 2003 Enterprise Editionが実装しているDFSルート機能を拡張したもので、存在しないサーバ名などを仮想的にUNCパスに組み込んでリダイレクトできる機能だ。これにより、仮想的なUNCパスを提供する「DFSルート・サーバ」の設定と構成ができる(詳細は後述)。前出の「ファイル・サーバ移行ウィザード」とは異なり、こちらは必要に応じて利用する機能だ。
「DFS統合ルート・ウィザード」を実行するには、移行先にDFSルート・サーバを導入し設定する必要がある。このDFSルート・サーバに関するシステム要件は次のとおり。これはあくまで移行先システムの条件であり、ファイル・サーバ移行ツールキットを導入するサーバに対しての条件ではないことに注意してほしい。
DFSルート・サーバ用OS | Windows Server 2003 Enterprise EditionまたはWindows Server 2003 Datacenter Edition |
条件1 | DFS統合ルート機能を利用する場合、ドメイン・コントローラをDFSルート・サーバに割り当てることはできない(拡張機能が利用できないため) |
条件2 | サポート技術情報829885の修正プログラムを適用しておく必要がある |
DFSルート・サーバの必要条件 |
ただし条件2に示したサポート技術情報829885の修正プログラムは、現時点では一般には公開されておらず、マイクロソフトのサポート・サービスに連絡して入手する必要がある。サポート技術情報829885の詳細については以下を参照してほしい。なおこの機能(サポート技術情報829885の修正)は、Windows Server 2003 Enterprise Edition SP1では、あらかじめ適用されたものが提供される可能性がある(公開されているSP1 Release Candidate 1を適用したところ設定は可能であった)。
INDEX | ||
[製品レビュー] | ||
FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(前編) | ||
1.システムの移行時の問題点とFSMT | ||
2.FSMTのインストール | ||
3.FSMTによる移行作業の実際(基本編) | ||
FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(後編) | ||
1.DFS統合ルート・サーバ機能とは | ||
2.DFS統合ウィザードを利用する | ||
3.ファイル・サーバ移行のパターン | ||
4.ADMTとFSMTを組み合わせた移行シナリオ | ||
5.FSMT利用上の注意点 | ||
製品レビュー |
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