製品レビュー
FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(後編)

5.FSMT利用上の注意点

小鮒 通成
2005/02/10

 FSMTは、ほとんどの作業がウィザード・ベースで行える。これは大変便利だが、逆にいうと作業をカスタマイズする場合には若干の注意が必要だ。具体的なポイントは次のとおり。

■どのファイル・リソースが移行先のどこにあるのか確認しておく
 FSMT移行を行った場合、デフォルトどおりの設定を行うと、移行先ファイル・サーバの共有フォルダの共有名およびローカルパスは以下のようになる(“C:\ShareData”を共有フォルダの起点とした場合)。

共有名:<移行元共有名>_<移行元サーバ名>
ローカルパス:C:\ShareData\<移行元サーバ名>\<共有名>

 状況によっては、これらをカスタマイズしたい場合もあると思われるが、その際には、後々の管理を円滑にするためにも、どのフォルダがどのファイル・サーバから移行されたものかを記録しておくべきだ。なお、DFS統合ルート・サーバを利用しているなら、「分散ファイルシステム」スナップインからDFSルート・サーバのDFSルートを表示させ、プロパティを確認することでリンク先の共有フォルダを調べることができる。

■ローカルグループの移行時にはsubinacl.exeコマンドを利用する
 コンピュータにローカルで設定されるローカル・グループは、FSMTで移行することはできない。この場合は、まずFSMTの「サーバー、共有フォルダ、および設定の選択」フェイズにおいて、[無効なセキュリティ識別子を解決する]チェック・ボックスをオフにすることで、SIDをそのまま移行できる。その後、移行させたいローカル・グループを移行先に作成し、subinacl.exeコマンド・ツールを利用して、SIDの変換(実際は未解決SIDのアクセス権をほかのグループのアクセス権に置き換える)を行うことになるだろう。

 subinacl.exeは、Windows Server 2003リソースキット・ツールに含まれている。subinacl.exeの使い方は、リソースキット・ツールに付属するヘルプや、以下のマイクロソフトのサポート技術情報を参考にしてほしい。

 上記ドキュメントの解説は、ワークグループ環境でのファイル・サーバ移行の際にも流用できると思われる。

Dfsconsolidate.exeコマンドは障害発生時に利用する

 FSMTは、簡単・確実にファイル・サーバ・リソースを移行するために作られたツールであるため、基本的にGUIベースでのみ実行できる(筆者は、このツールをコマンドライン・ベースで操作する方法は見つけられなかった)。ただし、Dfsconsolidate.exeというFSMT付属のコマンドライン・ツールを利用することで、コマンドライン・ベースでDFS統合ルート・ウィザードでの処理を実行することが可能だ。

 とはいえ、DFS統合ルート・ウィザードも GUI で実行できるため、操作をコマンドラインで行う必然性は小さいと思われる。ではどのようなときにDfsconsolidate.exeコマンドを使うかといえば、DFS統合ルート・ウィザードでの設定内容が不正で、何らかの障害などが発生したときに、設定内容を修正したり、DFS統合ルート・サーバの機能をキャンセルしたりするケースが考えられる。

 Dfsconsolidate.exeの基本的なオプションは以下のとおりである。

/CheckServer:DFS統合ルート機能のチェックと有効化を行う
/CreateRoot:DFS統合ルートを構成する個々のDFSルートを設定する
/DeleteRoot:DFS 統合ルートを構成する個々のDFS ルートを削除する

 なお、トラブルシュートでDfsconsolidate.exeを利用する方法については、FSMTのヘルプ内の「統合および移行の問題のトラブルシューティング」の項目に解説されているので、必要に応じて参照してほしい。またDfsconsolidate.exeコマンドの構文などについては、同ヘルプ内の「Dfsconsolidate.exe コマンド ライン ツールを使用する」を参照されたい。

まとめ

 FSMTは、非常に使いやすいツールだと筆者は思う。GUIですべての処理を実行でき、(問題が起きない限りは)ほとんどの項目で修正は不要である。あえていうなら、DFS 統合ルート・サーバを設定する場合を含め、必要がある場合移行元のファイル・サーバ名を手動で変更しなければならないことに注意する程度だ。

 FSMTのポイントをまとめると、以下のようになるだろう。

  • Windows NT 4.0 Server SP6a以降のWindows NT系OS上の共有リソースを、Windows Server 2003ベースのコンピュータ上に移行できる(クラスタ・リソース含む)。

  • ファイルの内容および共有レベルとNTFSアクセス権限を簡単に移行できる。ただしコンピュータ上のローカル・グループは移行できないので注意する。

  • 複数ある移行前のUNCパスをそのままの形で統合移行するには、DFS統合ルート・ウィザードの実行が必要。DFS統合ルートになるサーバは、ドメイン・コントローラでないWindows Server 2003 Enterprise Edition以上でなければならず、KB 829885修正プログラムを適用していなければならない。

  • DFS統合ウィザードを利用する場合は、移行元コンピュータ名を変更する必要がある。この作業は、DFS統合ルート・ウィザードを実行する前に行う。

  • DFS統合ルート・ウィザードの実行中(正確には、移行元サーバの名前を変更した時点から)と、ファイルサーバ移行ウィザードの最終処理実行中は、ユーザがファイル・リソースを利用することはできないので注意する。

  • ADMTやsubinacl.exeなど、ほかのツールと連携させると、より効果的な使い方や弱点を補う使い方が可能となってくる。

 また、Windows Server 2003にファイル・サーバを移行することで、DFSリンクの複製によるフォールト・トレランスの確保や、シャドウコピー機能によるファイルの保護など、Windows Server 2003が提供する有益な機能を追加で利用できる(これらの機能は別途設定する必要がある)。

 FSMTは、小規模から大規模システムまで、さまざまなところで活用できるだろう。ただし前述したとおり、DFS統合ルート機能はWindows Server 2003 Enterprise Edition以上でしか利用でない。従って小規模なシステムでは単一サーバの移行を行うか、UNCパスを新規にしたうえでの移行・統合を行い、中規模以上のシステムでは、必要に応じてDFS統合ルート機能を利用し、UNCパスを含めた複数サーバの移行・統合を行うこととなるだろう。

 上記のツールを活用して、「単調だが間違いが許されない」ファイル・サーバ資産の移行と保護について考えていただければと思う。End of Article

 

 INDEX
  [製品レビュー]
  FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(前編) 
    1.システムの移行時の問題点とFSMT
    2.FSMTのインストール
    3.FSMTによる移行作業の実際(基本編)
  FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(後編)
    1.DFS統合ルート・サーバ機能とは
    2.DFS統合ウィザードを利用する
    3.ファイル・サーバ移行のパターン
    4.ADMTとFSMTを組み合わせた移行シナリオ
  5.FSMT利用上の注意点
 
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