製品レビュー
FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(後編)

3.ファイル・サーバ移行のパターン

小鮒 通成
2005/02/10

 ファイル・サーバの代表的な移行パターンとしては、次の2つが考えられる。

1.1台の移行元から、1台の移行先に移行する

 ファイル・サーバ移行のシナリオでいちばん単純な方法は、DFS統合ルートを利用せず、移行元の1台のファイル・サーバ上のリソースを、単純に新しいファイル・サーバ1台に移行する方法である。この方法では、移行元ファイル・サーバのコンピュータ名をあらかじめ適当なものに変更しておき、新しいファイル・サーバのコンピュータ名として、移行元コンピュータがそれまで利用していた名前を割り当てれば、ファイル・サーバの利用者は、移行後も同じUNCパスでファイル・サーバを使い続けられる。ただしこの方法では、移行作業中(移行元のコンピュータ名を変えた直後)は、利用者に変更されたファイル・サーバ名のUNCパスを通知して、移行が完了するまでそれを利用してもらう必要があるため、透過的とはいえない。また、ファイル・サーバ移行ウィザードでは、共有名の初期設定は「<共有名>_<サーバ名>」とされるため、ウィザード内で書き換える必要がある。

DFS統合ルート・サーバを使わずにUNCパスを引き継ぐ方法
単一サーバから単一サーバへの移行時にUNCパスを変更させないためには、あらかじめ移行元のコンピュータ名を変更し、移行先のコンピュータ名と共有名をもともとの名前と一致させればよい。

 もちろんこの方法でも、DFS統合ルート・サーバを利用することは、条件さえそろえば可能である。その場合は透過的な移行が可能になる。

2.複数台の移行元から1台の移行先に移行する

 この場合は、DFS統合ルート・サーバを利用する効果が大きい。マイクロソフトのホワイト・ペーパーにも、DFS統合ルート・サーバの利用を前提としたシナリオが掲載されている。

 DFS統合ルート・サーバを利用しなくても、複数のファイル・サーバ上のリソースを1つのサーバにまとめること自体は可能である。ただしこの場合、最終的なファイル・サーバは1つなので、従来のUNCパスは引き継げない。従ってこの場合は、利用者に対して新しいUNCパスを利用してもらうための各種設定を実施する工程が発生するだろう。

DFS統合ルート・サーバを使わずに複数サーバを移行する場合、UNCパスは引き継げない
DFS統合ルート・サーバを使わずに複数のサーバを統合移行する場合、サーバ名は変更できないため、移行後の環境ですべてのUNCパスを引き継ぐことはできない。共有名は移行元が分かりやすいものに設定する必要がある。
 

 INDEX
  [製品レビュー]
  FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(前編) 
    1.システムの移行時の問題点とFSMT
    2.FSMTのインストール
    3.FSMTによる移行作業の実際(基本編)
  FSMTによるNTファイル・サーバ移行計画(後編)
    1.DFS統合ルート・サーバ機能とは
    2.DFS統合ウィザードを利用する
  3.ファイル・サーバ移行のパターン
    4.ADMTとFSMTを組み合わせた移行シナリオ
    5.FSMT利用上の注意点

更新履歴
【2005/02/10】図「DFS統合ルート・サーバを使わずにUNCパスを引き継ぐ方法」の移行元コンピュータ名として、当初は「_」(アンダースコア)を使用していました。Windows DNSサーバでは問題ありませんが、DNS実装によってはアンダースコアを使用できない場合もあるため、図中の記号を「_」(アンダースコア)から「-」(ハイフン)に変更しました。
 
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