[特集] Windowsネットワーク管理者のための計画停電対策 2.シャットダウン時と起動時に注意すること デジタルアドバンテージ 打越 浩幸、島田 広道2011/03/17 |
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■機器をシャットダウン/停止する順序に注意
停電時のようにPCやサーバ、そしてネットワーク機器まですべて停止しなければならない場合、各機器をシャットダウン/停止する順序を間違えると、シャットダウン時にエラーログが大量に記録されたり、シャットダウンに長い時間がかかったり失敗したりすることがある。こうしたトラブルを防ぐには、原則として次の順番でシャットダウン/停止していく。
- クライアントPCとその接続機器(外付けハードディスクなど)
- 各種サーバ(ドメイン・コントローラとDNSサーバ以外)、NAS(ネットワークHDD)
- ドメイン・コントローラ
- プリンタ、プリンタ・サーバ
- DNSサーバ、DHCPサーバ、NTPタイム・サーバなど
- ハブ、無線LANアクセスポイント、L3スイッチ(社内LAN用ルータ)
- インターネット接続用ルータ
- インターネット接続用のxDSLモデム、ONU(Optical Network Unit)
このうち見落としがちなのはNAS(Network Attached Storage、ネットワークHDD)だろう。NASもHDD内蔵のコンピュータなので、正しい手順でシャットダウンする必要がある。シャットダウン手順は機種によって異なり、電源スイッチの操作で済むものもあれば、Webコンソールからシャットダウンを指示するものもあるので、マニュアルで手順を確認しておくこと。そのほか、NASをドメイン・コントローラとして利用している環境では、ドメイン・コントローラと同じ順位でシャットダウンする必要がある。
クライアントPCやサーバに外付けハードディスクなどのストレージ装置が接続されている場合は、必ずPC/サーバのシャットダウンをしてからストレージ装置の電源をオフにする。この順番を逆にすると、ストレージに保存されていなかったデータが失われてしまう可能性がある。
■離れたところにあるPCやサーバをシャットダウンするには
リモート・デスクトップ接続が可能なコンピュータであれば、そのコンソールまでいちいち出向かなくてもリモートからシャットダウンができる。それにはリモート・デスクトップで対象コンピュータに接続した後に[Ctrl]+[Alt]+[End]キーを押し、表示されるメニューからシャットダウンを選んで実行する。詳細は次の記事を参照していただきたい。
- デスクトップ接続中にリモート・コンピュータを再起動する(Windows TIPS)
[管理ツール]−[コンピュータの管理]でもリモートからのシャットダウンは可能だ(ただし接続元のOSはWindows XP/Server 2003に限られる)。それには、[コンピュータの管理]を起動してリモート・コンピュータに接続し、システムのプロパティを開いて[詳細設定]タブ−「起動/回復」−[設定]ボタンをクリックし、[シャットダウン]ボタンをクリックする。詳細は次の記事を参照していただきたい。
- システムをリモートからシャットダウンする(Windows TIPS)
■複数のコンピュータを手早くシャットダウンするには
シャットダウン対象のコンピュータの名前が判明しているなら、forコマンドとshutdownコマンドを組み合わせると、ほぼ自動で複数のコンピュータのシャットダウンが実行できる。それにはまず、管理作業用PCで、次のようなコンピュータ名とシャットダウン開始までの時間(秒単位)を記したリスト・ファイルを作成する。時間とは、最初のコンピュータのシャットダウンが開始されてから、当該コンピュータのシャットダウンが始まるまでのおおよその秒数を表す。
Server1,0 |
このリスト・ファイル名をlist.txtとする。次のコマンドラインを実行すると、リスト・ファイルがforコマンドで読み込まれ、Server1→(60秒)→Server2→(150-60=90秒)→Server3→(210-150=60秒)→Server4という間隔で各コンピュータのシャットダウンが開始される。
for /F "tokens=1,2* delims=," %i in (list.txt) do shutdown -s -m \\%i -t %j |
ただし、この方法では各コンピュータのシャットダウンが実際に完了したかどうか確認していない。想定していたシャットダウンの順序が逆転しないよう、シャットダウンに時間がかかるサーバの後では上記の時間の値を大きくした方がよい。
shutdownコマンドの詳細については、次のTIPSを参照していただきたい。
- コマンドラインから電源オフや休止を実行する(Windows TIPS)
■仮想マシンをシャットダウンするときの注意
仮想化ソフトウェアを使って複数の仮想マシンを運用している場合は、通常はホスト・サーバをシャットダウンするだけで、ゲストの仮想マシンは自動的に状態が保存され、実行が停止するようになっているはずである(例えばHyper-VやVirtual Server 2005 R2のデフォルト設定の場合)。また仮想サーバを起動すると、保存されていた状態が復元され、仮想マシンが自動的に起動するようになっているはずなので、個別のゲスト仮想マシンのシャットダウンを考慮する必要はないだろう(そうなるように、運用するべきである)。ただしゲストの仮想マシンの状態を保存するために時間がかかることを考慮して、シャットダウン・タイムの猶予時間を長めに取るように考慮する。
こうした仮想化環境における管理・運用のテクニックや注意点は、別の記事で解説する予定だ。
■シャットダウンに時間がかかるときの対処方法
シャットダウン中に何らかのトラブル(例えば一部のプロセスが終了しないなど)が発生すると、いつまで待ってもシャットダウンが完了しないことがある。そんな場合は「緊急時シャットダウン」という機能が利用できる。それにはログオン済みのコンソールから[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーを押し、表示されたメニューにて[Ctrl]キーを押しながら[シャットダウン]ボタンをクリックする。ただし、サービスなどは強制終了させられるので、未保存のデータなどは失われ、場合によっては次回正しく起動できなくなる可能性もある。詳細は次の記事を参照していただきたい。
- シャットダウン処理を省略した「緊急時シャットダウン」を実行する(Windows TIPS)
前述のshutdownコマンドが利用できる場合は、-fオプションを加えると、実行中のプロセスを警告なしで閉じてシャットダウンを進められる。これも未保存のデータが失われたりする可能性がある。
以上の方法でもシャットダウンが進まない場合は、コンピュータの電源ボタンを4秒以上押し続けると、強制的に電源をオフにできる。上記の方法よりもトラブルが発生する可能性は高まるので、最後の手段と考えた方がよい。せめて、ハードディスクやネットワーク・ポートのアクセス・ランプが点滅しておらず、アクセスがないことを確認してから電源ボタンを押すべきだ。詳細は次の記事を参照していただきたい。
- システムの電源を強制的にオフにする(Windows TIPS)
■停電に備えてコンセントから電源ケーブルを抜く
停電に対する備えとして、システムをシャットダウンするだけでなく、可能ならばコンセントから電源ケーブルを抜いたり(電源タップにスイッチがある場合はそれを切る)、さらに進んで、配電盤にあるブレーカーを切るなどの準備を行っておくとなおよい。これは確実に機器を停止させるということのほかに、停電からの復帰時に予想される不安定な電力変動(サージ)などを避け、機器を電源障害から守るという意味がある。
停電からの回復時には、多くの電気機器がいっせいに電気を使い始める。そのため、電圧が規定のレベルに達しなかったり(例えば100Vあるはずの電圧が、90Vを下回るなど)、逆に高電圧になったりする可能性がある。電源ユニットなどに内蔵されているはずの保護回路が不十分な電子機器では、電源電圧が高すぎると内部が焼損したり、保護用のヒューズが飛んだりするし、逆に低すぎると出力が不安定になって、やはりシステムの焼損が起こったりする。また通電が開始されても、なんらかの障害や送電側の都合などによって、不安定にオン/オフする瞬電(一瞬電圧が下がること)やチャタリング(短い周期のオン/オフ)などが発生する可能性もある。
このような電圧変動による機器の破損やトラブルを防ぐためにも、停電前には電源ケーブルをコンセントから抜いておくか、それが困難な場合は機器の背面にあるメイン電源スイッチをオフにして、確実に電源を切断するようにしておきたい。またサーバやクライアントPCだけでなく、ハブやルータ、無線LANアクセスポイントなども同様に、確実にコンセントから抜いて電源をオフにしておくこと。これらの機器も停電からの復旧時の電圧変動で故障することがあるからだ。
電源を確実にオフにしておく | |||
停電に備えるというよりも、停電からの復旧時のトラブルに備えて、電源は確実にオフにしておく。なるべく電源タップに付いているスイッチを切ったり(スイッチ付きタップの場合)、コンセントを抜いたりしておくこと。 | |||
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電力回復後、PCやサーバ、ネットワーク機器を起動する
シャットダウン時と同様に、PCやサーバ、ネットワーク機器を起動する際にも、いくつか注意すべきことがある。
■停電復旧後、すぐに電源をオンにしない
停電から復旧しても、(送電側の都合などで)またすぐに電源が切れたり(もしくは入/切を繰り返したり)する可能性もあるので、10分程度は様子を見て、安定して電気が使えるようになったことを確認してから各機器の電源スイッチをオンにする。
■1台ずつ動作を確認しながら起動していく
電力供給が安定したら、コンピュータやネットワーク機器を1台ずつコンセントに接続しながら、順番に電源をオンにして起動していく。その順序はシャットダウン時とまったく逆だ:
- インターネット接続用のxDSLモデム、ONU(Optical Network Unit)
- インターネット接続用ルータ
- ハブ、無線LANアクセスポイント、L3スイッチ(社内LAN用ルータ)
- DNSサーバ、DHCPサーバ、NTPタイム・サーバなど
- プリンタ、プリンタ・サーバ
- ドメイン・コントローラ
- 各種サーバ(ドメイン・コントローラとDNSサーバ以外)、NAS(ネットワークHDD)
- クライアントPCとその接続機器(外付けハードディスクなど)
このとき、サーバはルータやハブなどのネットワーク機器が起動してから、またクライアントPCは各サーバが起動してから、それぞれ起動すること。外付けのハードディスクなどは、PC本体よりも先に電源をオンにする。
また、起動した機器が正常に作動していることを確認してから、次の機器の起動に移る方がよい。もし起動中の機器にトラブルが生じても、それ以前に起動した機器に原因があるのかどうか疑わずに済むからだ。
■リモートからPCやサーバを起動するには
Wake-On-LANという機能を利用すると、ネットワークにつながっているコンピュータの電源をリモートからオンにできる。それには、あらかじめ対象のコンピュータでWake-On-LANを有効にしておき、電源ケーブルをコンセントにつないだ後に、リモートのコンピュータでWake-On-LANの起動用プログラムを実行し、コンピュータを起動する特殊なパケットをネットワーク経由で対象コンピュータに送信する。電源ケーブルさえ接続済みであれば、各コンピュータの設置場所まで出向かなくても起動できるのは便利だろう。詳細は次の記事を参照していただきたい。
- Wake-On-LAN入門(基礎解説)
■特定の時刻にPCやサーバを自動的に起動するには
計画停電のサイクルが固定している場合は、設定時刻に自動でコンピュータの電源をオンにする機能を利用してもよいだろう。あらかじめBIOSセットアップで起動時刻を設定し、シャットダウン後に電源ケーブルをつないだままにしておくと、設定した時刻にコンピュータは自動的に起動する。ただし、ベンダや製品によってこの機能の設定手順は異なるので、BIOSセットアップのマニュアルで確認してほしい。また詳細は次の記事を参照していただきたい。
- コンピュータの電源を設定時刻に自動的にオンにする(Windows TIPS)
ユーザーにPCやサーバの復帰を知らせる
各機器の起動と動作確認が完了したら、その旨をユーザーに告知する。ユーザーがコンピュータを使い始める前に知らせる方が望ましいので、前述した停電のお知らせのように張り紙を使うのがよいだろう。
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計画停電にともなう作業は、システム管理者にとって大きな追加負担となる。だからこそ、事前にシャットダウンと回復の段取りを決めておき、なるべく不測のトラブルが生じないように努力する必要がある。本稿が少しでもその役に立つことになれば幸いだ。
INDEX | ||
[特集]Windowsネットワーク管理者のための計画停電対策 | ||
1.計画停電時にしなければならないこと | ||
2.シャットダウン時と起動時に注意すること | ||
「特集」 |
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