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連載:コンバージェンス項目解説(4)

一般企業にも影響がある賃貸等不動産の時価開示

小寺泰史
プライスウォーターハウスクーパース株式会社
2010/1/8

2010年3月期決算から適用される賃貸等不動産の時価等の開示を取り上げる。賃貸等不動産の時価等の開示は、不動産業を営む会社のみならず一般事業会社にも影響がある。当基準の対応上のポイントを説明しよう(→記事要約<Page 3>へ)

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2.どのように必要な情報を収集するか

 賃貸等不動産を保有している場合は、次の4つの事項を注記する。管理状況等に応じて、用途別、地域別等に区分して開示することもできる。

(1)賃貸等不動産の概要

 主な賃貸等不動産の内容、種類、場所を記載する。管理状況等に応じた区分による開示を行う場合は、当該区分と関連付けて記載することが適当である。

(2)賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動

 賃貸等不動産の貸借対照表計上額及び期中における主な変動は、原則、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額を記載する。また、期中の変動に重要性がある場合には、その事由及び金額を記載する。

 時価の算定を行うには、ある程度の時間を要することから、実務的には、期末日より早い時点で賃貸等不動産の絞込みを行うこととなるであろう。その際、当初に絞り込んだ賃貸等不動産が期末日時点において、変動していないかを期末日以降に確認・把握するプロセスを構築しておくことも重要である。

(3)賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法

 賃貸等不動産の当期末における時価とは、通常、観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価格をいう。この合理的に算定された価格は、「不動産鑑定評価基準」(国土交通省)による方法または類似の方法に基づいて算定する。なお、契約により取り決められた一定の売却予定価額がある場合は、合理的に算定された価額として当該売却予定価額を用いることになる。

 また、開示対象となる賃貸等不動産のうち重要性が乏しいものについては、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標に基づく価額等を時価とみなすことができる。これは、容易に入手できる評価額や指標を合理的に調整したものも含まれる。すなわち、実勢価格や査定価格などの評価額や公示価格、都道府県基準地価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額が含まれる。

 重要性が乏しい賃貸等不動産の時価の算定を行う際には、一定の評価額等を時価とみなすことができるとされているが、まず、どのような基準により重要性の乏しい賃貸等不動産とするかの判断基準を設ける必要があり、また、他の会計基準により算定する時価と整合する時価の算定方法を用いるべきであろう。例えば、減損会計で算定する時価と賃貸等不動産で算定する時価の重要性の判断基準及び時価の算定方法とは、整合性を図るべきであろう。各企業において、重要性の判断及び時価算定のルールを明確にしておく必要がある。

(4)賃貸等不動産に関する損益

 賃貸等不動産の損益の注記を行う場合、損益計算書における金額に基づく必要がある。この際、損益計算書において、賃貸等不動産に関して直接把握している損益のほか、管理会計上の数値に基づいて適切に算定した額その他の合理的な方法に基づく金額によって開示することができる。

 例えば、複数の不動産について費用等を一括して把握している場合など、賃貸等不動産の個々の損益を直接的に把握していない場合においては、連結損益計算書上の賃貸収益及び賃貸費用を管理会計上の区分割合に基づいて配賦した額や、各不動産の連結相殺消去前の賃貸収益及び賃貸費用に適切な調整を加えるなど合理的に賃貸等不動産の損益として把握した額をもって開示することができる。

 重要性が乏しい場合を除いて、賃貸等不動産に関する賃貸収益と賃貸費用による損益、売却損益、減損損失及びその他の損益等を適切に区分して記載する。

 今後、毎期継続的に注記する必要があるため、賃貸等不動産の期中の変動を適時に把握する仕組みや対象物件に関する損益を適時に正確に把握し、必要に応じて配賦を行う仕組みを構築しておく必要がある。経理部門と賃貸等不動産を管理する部門との間で連携を図り、それぞれの役割を明確にしておくことが重要である。

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