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連載:IFRS準備のイロハ

IFRS対応、いつから準備するのがベストなのか

河辺亮二、伊藤雅彦(監修)
株式会社日立コンサルティング
2009/8/3

IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)が2015〜16年に強制適用と仮定した場合に、企業にとって必要となる準備作業を会計処理、業務プロセス、ITシステムの3つの観点から解説。現実的で効率的なIFRS導入のロードマップ(例)を示す(→記事要約<Page 3>へ)

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 早期の準備は、経理業務ならびにITシステム運用に関するシェアードサービスセンター化を強力に後押しすることが容易に想像できる。なぜなら、短期間に業務システムを変更完了するには、対応パターンを極小化しておく必要性からである。

 そのほか、 IFRS開示様式への対応や開示・注記の詳細ルール設定、各種情報収集体制の整備など、IFRS適用に向けて実施すべきことを考えると2015年アダプションという目標は決して遠い将来の話ではない。すぐにでも準備を始めることがスムーズな適用の条件となることはお分かりいただけたであろうか。

<IFRS導入に向けた課題の一例>
(1)経理方針の設定

  • 経理方針検討、経理規程・マニュアルの変更
  • 経理処理に関する手順書・ワークシートの整備
  • 新開示様式への変更(財政状態計算書、包括利益計算書など)
  • 開示・注記の詳細ルール設定
  • 各種業界団体や担当会計士との経理方針に関する事前調整、など

(2)経営管理方針の設定

  • マネジメントアプローチへの対応、セグメント資産区分管理、BS分割対応
  • グループ中期計画、予算管理と実績管理の整合性確保、など

(3)運用体制の確立

  • 経理要員の育成、グループ決算業務シェアードの検討
  • 開示・注記事項に関する各種情報収集体制の確立
  • 法人税務との関係整理、連結税効果、税務申告の運用体制
  • 国内外のグループ子会社決算への展開、など

(4)システム対応・コード統一

  • 連結決算プロセスの変更、連結決算システムの更改
  • 各種システム対応(個別会計[GL]、販売管理等のフロント系)
  • 勘定科目の統一、各種コードのグループ統一、インターフェース開発
  • キャッシュフロー直接法への対応システム整備、など

(5)内部統制の確立

  • 日本版SOX法対応、内部統制対応、IFRS運用のモニタリングの実施、など

時間、人員が限られる中での対応は

 現在、連結決算を担当している経理部はコストセンターと位置付けられ、人員が絞りに絞られている。2008年以降導入された四半期決算開示制度や内部統制報告制度への対応に追われ、加えて2009〜11年以降に新たに導入される、いわゆる中期コンバージェンス項目としての企業結合会計、セグメント開示、過年度遡及(そきゅう)修正、廃止事業表示といった会計基準への対応のため、息つく暇もないというのが現状であろう。IFRSの知識・ノウハウを新たに習得するための時間は限られている。

 さらに、2008年10月からのサブプライム不況によって企業業績が振わない中、IT投資は圧縮され、新規システムの開発には極力無駄を排除する必要に迫られているのも現状であろう。こういった環境の下で、会社はどのような対応を図るべきなのか? 第2回ではIFRS導入に向けた第一歩である、IFRSの影響範囲の調査と導入計画の策定について解説する。

筆者プロフィール

河辺 亮二(かわべ りょうじ)
株式会社日立コンサルティング
マネージャー 米国公認会計士

日立製作所 ビジネスソリューション事業部を経て、2007年に日立コンサルティングに入社。これまで大手メーカー、金融機関、公共機関などの、経営マネジメントシステムの構築、連結決算対応、内部統制対応などのグループ経営支援に関するプロジェクトを担当し、現在IFRS導入サービスを手掛ける。共著書に「グループ企業のための連結納税システムの構築と運用(中央経済社)」「ITコンサルタントのための会計知識(SRC出版)」などがある。


伊藤 雅彦(いとう まさひこ)

株式会社日立コンサルティング

シニアディレクター

会計事務所で税務を担当後、外資系企業の韓国法人と日本法人でCFO(最高財務責任者)を10年間務める。VCF(Value Create Finanace)をコンセプトに決算早期化、シェアードサービス設立、経営情報充実化、会計システム導入などを担当し、現在に至る。

日立コンサルティング

要約

 IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)が2015〜16年に強制適用と仮定した場合に、企業にとって必要となる準備作業を会計処理、業務プロセス、ITシステムの3つの観点から解説し、現実的で効率的なIFRS導入のロードマップ(例)を示す。

 2015年度にIFRS適用する場合に必要になるのは、最低2年分の純資産の変動(包括利益計算書)と、キャッシュフローの変動(キャッシュフロー計算書)の報告。さらに、2年分の財務ポジション推移を開示するために、過去3年分の財政状態計算書の開示が求められる。強制適用時期と予定される2015年度適用初年度の会社では、IFRS適用の準備年度にあたる2013年度の決算で、日本基準での決算開示に加えて、IFRSでの財政状態計算書の作成が必要となる。

 一般に、海外に現地子会社を多く有する大手・中堅の製造業の多くは、欧州ならびにアジア・パシフィックの拠点についてはIFRS、アメリカの拠点については米国基準に統一する一方で、親会社の期末の連結決算組替処理において連結上の修正仕訳を実施して対応を図ってきた。このような会社では、当面は日本基準で決算を締めたグループ単体の数字を連結決算においてIFRSベースに組み替えるという運用が想定される。

 ただ、IFRS適用時の業務へのインパクトが大きい会社においてはやはり月次決算ルールをIFRSベースに変更する、特に本社ならびに国内の子会社の会計基準をIFRSに統一することが最大の解決策となる。この場合、国内の経理マニュアルや処理フォーマットを親会社主導でIFRSベースに統一して、子会社からIFRSベースの決算レポートを入手する運用が想定される。親会社は原則としてIFRSベースの各社の数字を合算することで、連結組替仕訳は最小限度に抑えることができる。

 そのほか IFRS開示様式への対応や開示・注記の詳細ルール設定、各種情報収集体制の整備など、IFRS適用に向けて実施すべきことを考えると2015年アダプションという目標は決して遠い将来の話ではない。すぐにでも準備を始めることがスムーズな適用の条件となる。

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