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連載:SAPで実現するIFRS対応(3)

ERPのIFRS対応 成功へのシンプルな必須条件

鈴木大仁
アクセンチュア株式会社
2009/12/18

IFRSに対応したERPの構築はゼロベースでシンプルに考えれば、決して不可能なことでない。ガバナンスのルールや実機構築/導入展開方式を採用することが成功への必須条件である(→記事要約<Page 3 >へ)

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日本企業に求められる発想の転換

 「新型ERP構築は非現実的だ」「自社にはトップダウンによる推進カルチャーがない」「そんなにリスクあるプロジェクトに手を上げて責任を負う者などいない」など悲観的にとらえられるユーザー企業の方も多いと思うが、ゼロベースでシンプルに考えれば、決して不可能なことでない。

 以下は、新型ERPをグループ展開する場合の標準的な手順である。

  1. IT予算に対するグループ全体の統制、ルールづくりを実施する
  2. グループ全体の推進体制を構築し、コード/マスタを共通化する
  3. 各国会計基準や商慣習なども織り込んだパイロット・システムを構築し、1拠点に導入する。この際、
  4. 原則パイロット・システムをテンプレートとし、各拠点に同時並行型で導入する。各国税務要件のみ個別対応とし、効率化要件や例外要件については、グループ共通要件として昇華できるもののみ個別対応を認める

 これらは極めてシンプルなプロセスであり、シンプルなガバナンスのルールや実機構築/導入展開方式を採用することが成功への必須条件である。

IFRSで変わるERP導入のブループリント

 一言でERPのIFRS対応といっても、そこにはERPバージョンアップを検討しているユーザー企業、グローバル経営の在り方を模索するユーザー企業、そして経理部門によるIFRSの研究やシステム要件が上がってくることを待っているユーザー企業など、さまざまな立場がある。

 そしてIFRS導入に伴うバージョンアップ1つを見ても、多極世界における今後の日本企業の経営の在り方や、経営上の外部要因・内部要因などとも密接につながっている。これからの時代における日本企業の成長という大きな視点に立ち、個々に対応するのではなく、ERPのみならず制度改革/BPRを取り入れたグループ横断での包括的な将来への青写真を描くことが重要と考える。

 2015年3月期に強制適用が始まると仮定すると、比較対象年度となる2013年4月から始まる会計期間よりIFRSベースの記帳を開始することが望まれる。「まだ3年以上あるから大丈夫でしょう?」という質問を受けるが、今年度(2009年度)中に、IFRSの影響を把握した上で経営の狙いを定めた実行計画を練り、来年度(2010年度)には、前述の新型ERPの情報構造を検討してグループ全体でデータ整備を始めてIFRSの骨格を設計し、2011年度にERPシステムの再構築に着手する。

 この頃には、ディスカッション段階やMoU段階のIFRSの詳細制度も明確となり、各機能や財務諸表上で勘定の開示位置などERPコンフィグレーションも最終化できる。そして、2012年度中には、本社、並びに主要複数拠点/個社へ順次ERP導入をスタートさせる。これらを踏まえると、3年余りという期間は決して長くはない。

筆者プロフィール

鈴木 大仁(すずき ひろひと)
アクセンチュア株式会社
IFRSチーム
システムインテグレーション&テクノロジー本部
パートナー

1989年、 アクセンチュア入社。大手消費財メーカー複数社のIFRS導入やERP再構築プロジェクトを手掛ける。そのほか、大手化学メーカー、大手食品・飲料メーカー、大手自動車会社などでERP導入プロジェクトを担当。IFRSフォーラムで「IFRS対応ITシステムの本質」を執筆
アクセンチュア IFRSサイト

要約

 現在、多くのSAPユーザー企業が、SAP ERPの以前のバージョンから最新のSAP ECC(ERP Central Component)6.0へのバージョンアップを検討している。ただ、バージョンアップで複数会計基準に対応したECC6.0を導入しようとしていても、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)対応については考慮していないケースがほとんどである。

 一方で、グローバル経営管理の高度化、ITコスト削減を狙ったERPの海外拠点展開、ERPインスタンス統合などを目的とし、複数国業務にも対応できる高度なグローバルERPを導入することにより、意図せずIFRSにも対応可能なITシステム基盤をすでに手にしている企業も存在する。

 ここではIFRS対応したSAP ERPを“新型ERP”と呼びたい。ただ新型ERPは、SAP社から複数会計基準に対応したECC6.0の提供を受ければ、それがそのまま新型になるというものではない。その条件は 「総勘定元帳/勘定科目コード」「組織構造/組織コード」「セグメント体系/商品・顧客等の主要コード」の3つの情報構造を、各社の事業内容や事業範囲、及び経営の狙いを踏まえた適切なレベルで統合し実装したERPである。

 「新型ERP構築は非現実的だ」などと悲観的に捉えられるユーザー企業の方も多いと思うが、ゼロベースでシンプルに考えれば、決して不可能なことでない。

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