連載:IFRS基準書テーマ別解説(3)
「無形資産」「リース」の会計基準を見てみよう
吉田延史
仰星監査法人
2010/1/6
無形資産とリースについてのIFRSの会計基準を、日本基準との違いも含めて解説する。特に無形資産については、開発費をはじめとして多くの企業に影響が及ぶことが想定されるため、留意する必要があるだろう。
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重要性がないファイナンスリースについての賃貸借処理の容認
IAS17号では、ファイナンスリースについては、資産負債を認識することとされ、重要性による簡便的な取り扱いについての定めはない。
日本基準では、ファイナンスリースであっても以下のような重要性の低いファイナンスリースについては、資産負債を認識せず、賃貸借処理する方法が許容される。
- 事業内容に照らして重要性の乏しい、契約1件あたりのリース料総額が300万円未満の所有権移転外ファイナンスリース取引
- リース期間が1年以内のリース取引
今後の方向性
リースに関しては、IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)による見直し共同プロジェクトが発足しており、2009年3月にはディスカッション・ペーパー「リース:予備的見解」が公表されている。IAS17号においても、予備的見解をベースとした改訂が検討されている状況のため、その概要について触れておく。
改訂のポイントは、ファイナンスリース・オペレーティングリースに分類して会計処理を行うのではなく、リースの定義を満たすリース取引についてはすべてリース資産の使用権を資産として認識し、対応するリース料支払義務をリース債務として認識するという点にある。また、測定についても、統一的な処理を定めることを打ち出している。
IFRS適用に向けての留意事項
リースに関しては、日本基準においてもコンバージェンスプロジェクトにより、根本的な考え方はIFRSと同等なものとなっている。しかし、日本基準に明文化されている重要性基準の規定がなくなり、数値基準での簡便処理が認められなくなる可能性がある点に留意が必要である。
いまだ予備的見解とされているディスカッションペーパーに関しては、オペレーティングリース取引についても、資産・負債計上のための情報を入手しておく必要が生じる点に留意が必要である。
筆者プロフィール
吉田 延史(よしだ のぶふみ)
仰星(ぎょうせい)監査法人
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。部分執筆書に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。