連載:IFRS基準書テーマ別解説(6)
IFRSの「連結」基準、その実務ポイントは
長谷川卓昭
仰星監査法人
2010/2/26
連結決算に関連する会計基準であるIAS27号(連結及び個別財務諸表)とIAS28号(関連会社に対する投資)、IAS31号(ジョイント・ベンチャーに対する持分)を2回連載で解説する。今回は連結範囲、決算日の統一などIAS27号を中心に実務ポイントを説明しよう。
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決算日の統一
日本基準との違い
親会社と子会社の決算期
連結財務諸表の作成に用いる親会社と子会社の財務諸表は、原則として同じ決算日である必要がある。子会社の決算日が親会社のそれと異なる場合には、実務上不可能でない限り、子会社は親会社の財務諸表と同じ決算日の財務諸表を連結のために追加で作成することが求められている。現在日本基準において認められている3カ月以内の決算日の差異は、実務上可能な限り統一することとなっており、無条件には許容されない。
ここで、「実務上不可能な場合」とは、あらゆる合理的な努力を払っても不可能な場合と定義されている。また、実務上不可能な場合は、3カ月を限度に許容されることとなっているが、これは関連会社についても同様である。
決算日のズレに伴う調整
IFRSでは、3カ月を超えない範囲で異なる決算日の子会社の財務諸表を連結する場合、決算日のずれから生じた重要な取引や事象の影響は修正しなければならない。
一方、日本基準では決算日が異なることから生ずる連結会社間の取引に係る会計記録の重要な不一致について、必要な整理を行うことが求められている。
このように、日本基準では連結会社間の取引の重要な不一致を整理するとされているのに対して、IFRSでは重要な取引や事象の影響を修正するとしており、特に連結会社間の取引に限定されていない。
実務上のポイント
- 子会社においては、すでに四半期決算なども導入されており、実務上可能であると考えられるため、修正仮決算等の対応により、決算日を統一する必要があると考えられる
- 決算期を統一した場合には、海外子会社の決算手続(監査対応を含む)の早期化についても合わせて対応が求められる
- 現在の日本基準の下では、関連会社について3カ月を超える決算日の差異があるケースがある(特に、親会社12月決算、関連会社3月決算の場合など)が、IAS28号では、関連会社であっても3カ月を超える決算日の差異は認められないため、注意が必要である
- 決算日を統一しない場合には、親会社と子会社の決算日のずれから生じた重要な差異をどこまで調整するか、実務上企業ごとの判断が求められることになる
持分の増減の処理
日本基準との違い
IFRSでは、支配を獲得(または喪失)した時点を重要な経済的事象としてとらえ、その前後で連結における(子会社の)位置付けと会計処理をはっきりと区分しており、支配の喪失を基準として、損益取引と資本取引に区別している。
具体的には、子会社持分の一部売却など、子会社の支配の喪失を伴わない親会社の子会社に対する所有持分の増減は、資本取引(すなわち所有者としての資格における所有者との取引)として会計処理される。
この場合、親会社持分および非支配持分の帳簿価額は、子会社に対する持分の増減を反映するように修正される。非支配持分が修正される金額と支払または受取対価の公正価値との差額は、株主資本で直接認識される。
従って、子会社の支配の喪失を伴わない子会社持分の一部売却は、受取対価と非支配持分の増加額との差額を、資本取引として会計処理することになる。
一方、日本基準では、子会社の支配の喪失を伴わない子会社株式の一部売却は、売却による親会社の持分の減少額と投資の減少額との間に生じた差額を、子会社株式の売却損益の修正として処理する。
実務上のポイント
- IFRS上、子会社株式の一部売却によって支配を喪失しない場合には、子会社株式の売却による益出しができなくなる(売却益を連結上で計上することは認められない)ため、留意が必要である
- 支配を喪失する時点においても、親会社は投資持分の残額を支配喪失日における公正価値で評価することが必要となる。