
連載:IFRS基準書テーマ別解説(7)
IFRSの「関連会社」「ジョイント・ベンチャー」とは
長谷川卓昭
仰星監査法人
2010/3/23
連結決算に関連するIFRS会計基準解説の2回目。IAS28号(関連会社に対する投資)については日本基準との違いを中心に、IAS31号(ジョイント・ベンチャーに対する持分)はジョイント・ベンチャーの3つの形態を中心に解説する。
PR
日本基準との違い
- 日本基準では、共同支配の事業及び共同支配の資産に関する会計処理を定めた規程は存在しない
- IFRSでは、共同支配の事業体については原則として比例連結法を用いて会計処理することとされている。これは、出資者が共同支配の事業体の財務諸表のうち自己の持分に相当する部分のみを取り出して、自己の財務諸表に加算する方法である。また、代替的処理方法として、持分法を用いることも認められている。これに対して、日本基準では、比例連結の適用は認めず持分法に準じた方法で処理することとされている
実務上のポイント
- ジョイント・ベンチャーに対する持分については、まず、当該投資が上記の3つの区分のうちどれに該当するかを判断することが重要である。
以下、3つの形態について説明する。
(1)共同支配の事業:各出資者が自己のリソースを用いて共同で事業を運営する場合
|
共同支配の事業に係る会計処理
このような共同支配の事業においては、各共同支配投資企業は、各共同支配投資企業側に直接生じる資産・負債および発生費用を認識するとともに、ジョイント・ベンチャーが獲得した収益の契約上の配分額を認識する。
(2)共同支配の資産:各出資者が共同で資産を支配する場合
|
共同支配の資産に係る会計処理
このような共同支配の資産の形態のジョイント・ベンチャーにおいては、各共同支配投資企業は、各共同支配投資企業側において直接発生した負債や費用とともに、ジョイント・ベンチャーにおける資産・負債およびジョイント・ベンチャーの活動により獲得した収益と発生した費用の契約上の配分額を認識する。
(3)共同支配の事業体:事業体を設立して共同事業を行う場合
|
共同支配事業に係る会計処理
このような共同支配企業に対して、共同支配投資企業は次のいずれかの方式により会計処理を行う。
-
比例連結(原則)
- 持分法(代替的処理方法)
ただし、現在公表されている共同支配契約に関する公開草案では、米国会計基準とのコンバージェンスの観点から、比例連結法を削除して共同支配事業体の会計処理を持分法のみとすることが提案されているため、今後の動向に注意が必要である。
筆者プロフィール
長谷川 卓昭(はせがわ たかあき)
仰星(ぎょうせい)監査法人
2001年3月早稲田大学政治経済学部卒。2007年11月公認会計士試験合格。大学卒業後、モルガン・スタンレー証券株式会社 債券統括本部(セールス&トレーディング)入社。その後、大手監査法人、大手税理士法人を経て、2008年9月に仰星監査法人東京事務所入所。部分執筆書に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。