[Interview] 技術/科学分野でItanium移行を促進するHP

2001/7/4

 2001年5月30日、ついに正式出荷が表明されたItaniumだが、発表とほぼ同時に各種Itanium搭載マシンやOS/ソフトウェアの対応も発表され、まずまずのスタートを切ったというところだろう。

 Itaniumの主戦場となるであろうエンタープライズ・サーバやワークステーションの分野は、これまでサン・マイクロシステムズやHPといったUNIXベンダが得意としてきたところだ。例えばサンであればUltra Sparc、HPであればPA-RISCという具合に、自社製プロセッサをベースに展開してきたが、業界で一大勢力を占めるHPが主軸をItaniumに移すことで、業界地図に変化が起きようとしている。

米HP Market Development Group Manager Technial Computing DivisionのKnute Christensen氏(右)と同 Global High-Performance Technology ManagerのDr. Frank Baetke氏(左)

 HPはItaniumを使って、どのような市場展開を考えているのか。また、Itanium開発当初からプロジェクトに携わってきたHPにとって、Itaniumは自社の技術力を示す絶好の機会だろう。今回は、HP主催のCAE(Computer Aided Engineering)に関するセミナー「hp CAE technology seminar 2001」に出席するために来日した米HP Market Development Group Manager Technial Computing DivisionのKnute Christensen氏と同 Global High-Performance Technology ManagerのDr. Frank Baetke氏の2人に、HPのItaniumに対する取り組みの現状と将来の展開について話を聞いた。

――HPはインテルと共同でItaniumを開発してきた経緯があるが、その強みはどのように発揮されているのか?
「ItaniumにおけるHPの優位は2つあると考えている。1つ目は共同開発であること、2つ目はプロセッサデザインの部分だ。例えば、HP-UX上のアプリケーションはPA-RISC版のものとバイナリコンパチであり、ポーティングの面で有利だ。ItaniumをサポートするOSに、64ビット版Windows、Linux、HP-UXがあるが、特にパフォーマンスを必要とするテクニカル・コンピューティングの分野でHP-UXは有利に働く。なぜなら、I/Oのパフォーマンスなど、ファイルシステム1つを例にとっても、HP-UXはItaniumに最適化されているからだ。テクニカル・コンピューティングの分野に強いItaniumだけに、優位に立っているといえる」

――Itaniumが得意とする「テクニカル・コンピューティング」とは、どのような分野なのか?
「Itaniumには2種類のオペレーションが存在する。1つ目が、技術系分野で使用される浮動小数点演算。2つ目が、『コマーシャル』と呼ばれるビジネス系アプリケーション分野で使用される整数演算だ。特にItaniumの浮動小数点演算性能には目を見張るべきものがあり、HPでは『メカニカルCAE(機械系のシミュレーションなど)』と『ライフサイエンス(薬品/ヒトゲノム)』の2つの分野を中心に、Itaniumへの移行を促進していくつもりだ。ISV(独立系ソフトウェアベンダ)によるアプリケーションの対応も進みつつある」

――HPがCAEの分野に注力する理由は?
「Itaniumは浮動小数点演算性能のポテンシャルが高く、CAEがそれを生かせる分野だからだ。HPが提供するプロセッサのPA-RISCは、浮動小数点演算性能におけるリーダーであり、アドバンテージもある。Itaniumはさらに将来を見据えたプロセッサであり、とても期待している。実際にベンチマークをとったところ、いくつかのアプリケーションの結果でItaniumがPA-RISCの性能を上回っていた。しかもItaniumは、各種のチューニング作業により日々性能が向上しており、1カ月後にはまた状況が変わっていることだろう」

――では逆に、整数演算性能を重視するオフィス・コンピューティングの分野にItaniumは向かないのか?
「そんなことはない。例えば、エンタープライズ・サーバに求められる要件として、『決してダウンしない』ということがある。Itaniumの登場が遅れたことはたびたび報じられてきたが、それはインテルがプラスαの時間を信頼性を高めることに費やしてきたからだ。例えば、Itaniumには3段階のキャッシュが搭載されているが、CPUがビットエラーを起こしても、その分を吸収できるような構造になっている。だがパフォーマンス的にいえば、第2世代のItaniumが本命になるだろう」

――Itaniumに関しての不満はあるか?
「特に不満は感じていない(笑)。 なぜなら、HP自らが研究/開発に関与してきたからだ。10年ほど前の話になるが、HPラボからのアイデアも盛り込まれており、Itaniumは将来を見据えたアーキテクチャとなっている。例えば、1990年代前半に最速といわれていたAlphaチップは、アーキテクチャ的には従来のものを踏襲している。だが現在では、その栄光は見る影もなくなってしまっている。これは、Itaniumの方向性が正しかったことを認めている例でもある」

――パートナーやユーザーからの反応はどうか?
「ISVパートナーからの反応は前向きだととらえている。米国でのトレンドとして、Itaniumに関するデータを公表すると、非常に興味を示してくるのが分かる。日本では、大手電気や自動車メーカーなどが、弊社にテスト依頼をしてきている状況だ。だが実際にはテスト期間のようなもので、まだまだこれからだと考えている。1年たてば、状況は大きく変わっているだろう」

(編集局 鈴木淳也)

[関連リンク]
日本ヒューレット・パッカード

[関連記事]
Itanium正式リリースで、各社が関連製品を発表 (@ITNews)
Itaniumの登場でハイエンド・サーバ市場が変わる?(@ITNews)
HP、インテル、オラクルがItanium普及の共同プログラムを開始 (@ITNews)
HPが初のappサーバを発表、Webサービス市場へ本格進出 (@ITNews)
HPがシスコ製品との連携を強化したネットワーク製品を発売 (@ITNews)
HP、同人数で10倍のストレージ管理を実現する「FSAM」 (@ITNews)
コンパック、サーバをAlphaからItaiumベースへ完全移行(@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)