[Novell BrainShare Japan 2001]
ディレクトリを軸に再生をかけるノベル

2001/7/25

 ノベルは7月24日、都内でユーザーカンファレンス「Novell BrainShare 2001 Tokyo」を開催した。ソリューション・ベンダとして新たにスタートを切った同社だが、基調講演、セミナーともに製品単体よりもソリューション提供を意識した内容となった。

米ノベル 日本地区代表 吉田仁志氏

 米ノベルは今年3月にITコンサルティング企業であるケンブリッジ・テクノロジーズ・パートナーズを買収した(「苦悩するノベル、買収による改善を期待」参照)。それにより、前CEOのエリック・シュミット(Eric Schmidt)氏がチーフストラテジストに、ケンブリッジのジャック・メスマン(Jack Messman)氏が社長兼CEOの座に就いた。

 経営陣の入れ替えとともに、米国以外を4地区に分け各地区の担当者を任命した。日本地区の責任者には前ケンブリッジの日本法人代表取締役社長の吉田仁志氏が就任し、統合のチームリーダーとして、ノベル 代表取締役社長 フィリップ・ケー・ウェルチ氏とともに、日本での事業展開を統括する。

 ケンブリッジは1991年設立のITコンサル企業。世界19カ国で事業展開している。リアルビジネスとeビジネスを融合させたビジネスモデルの策定からシステムの開発、導入を独自メソドロジーにより短期に構築できることが特徴。日本では、富士通やNEC、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)などの顧客を持つ。

 フィリップ・ウェルチ氏の挨拶に引き続き行われた基調講演では、ノベルとしては初登場になる吉田仁志氏、米ノベル 副社長兼ジェネラルマネージャ ネットディレクトリサービス担当 ポール・スマート(Paul Smart)氏が講演を行った。

 吉田仁志氏は合併により誕生する、新しいノベルを訴えた。「ケンブリッジの唱えてきたシステム統合のビジョンと、ノベルの“oneNet”ビジョンが合致した」と今回の合併について語る。eビジネスの世界では、レガシーシステムやSCM、CRMなどのシステムが連動して初めて価値が出てくる。「ノベルの持つインフラを統合する技術と、ケンブリッジの持つビジネスを統合するノウハウを同時に提供できる。ノベルは顧客の立場に立つソリューションベンダに生まれ変わる」(吉田氏)。

oneNetの重要性を説くスマート氏

 スマート氏は、eビジネス環境におけるディレクトリ・サービスの重要性とシステム統合の必要性について説明した。「イントラネット、エクストラネット、インターネットと対象ユーザー、システムリソース、ソフト/ハードもばらばらという現在の企業システムでは、eビジネスの相乗効果は期待できない」とスマート氏、ノベルでは1つの基盤に統合するoneNetビジョンを提唱していくという。

 oneNetの土台となるのがLDAPディレクトリ製品「NDS eDirectory」だ。現在、高いマーケットシェアを占めており、ユーザー数は1億6300万人という。ノベルは、この製品を核に、BtoBやBtoCなどを実現するプラットフォーム「iChain」、認証のソリューション「Single Sign-on」、XMLに対応しマルチディレクトリ環境を構築できる「DirXML」を展開している。今年の秋には新たに「OnDemand Services」を投入、コンテンツへのアクセス管理と課金機能を持つ同製品により、エンド・ツー・エンドのソリューション体系が完成することになる。「企業システムをよりシンプルに、よりスピーディーに、より安全にする」(スマート氏)。

 苦しい経営状態が続いている同社だが、ケンブリッジの買収で得たコンサルティング能力で現状を打破したいところだ。今年5月に発表された2001年度第2四半期の業績発表では、売り上げは前年同期比約20%減となった。同社では“2001年度末には黒字転換を目指す”としているが、その鍵を握るのがeDirectoryおよびoneNetビジョンに基づいたソリューション提供だろう。

 米国では5月に、日本では7月23日に、ISVを対象に主力製品eDirectoryの無償提供プログラムを発表する(「eDirectoryのシェア拡大を図るノベル、無償提供プログラム発表」参照)など、oneNetビジョンを強力に推進していく。幸い、この3カ月でeDirectoryのライセンス数が80%増となるなど、滑り出しは好調なようだ。日本でもライセンス数の倍増を狙っている。ディレクトリの重要性が認知されつつある中、同社の再生はどこまでこの波に乗れるかにかかっているといえそうだ。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
Novell BrainShare 2001 Tokyo

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