「J2EEと.NETは共存、統合可能なWebサービス構築を」とBEA

2001/10/13

 次なるマーケットであるWebサービスを巡り、各ベンダは、標準化では協調、市場では競合という難しい舵取りを強いられている。現在、そのベンダとして、IBM、マイクロソフト、オラクル、サンとともに名を連ねているのがBEAシステムズ。J2EE準拠のWebアプリケーション・サーバ「WebLogic」でのし上がり、急成長を遂げた会社だ。来日した同社E-Commerce Integration部門CTO ロッキー・ステュアート(Rocky Stewart)氏に、システム統合という面からWebサービスについて語ってもらった。

ロッキー・ステュアート氏 ソフトウェア設計・構築分野では15年のキャリアを持つ。ヘリコプターの操縦もこなすエンジニアだ(写真は「Integrate Tokyo 2001」で基調講演時のもの)

 BEAでは以前より、“Future Proof(将来にわたって使える) e-business system”として、長期的視野で見たアプリケーション構築が大切だというメッセージを送っている。本社のある米国では毎年、このテーマに関連したイベントを開催している(「長く使えるECシステムの確立を――第2回BEAシンポジウム」参照)。長期的にアプリケーションを使うということは、技術の変遷が目覚しい現在、統合なしには実現し得ない。エンジニアを悩ませるこの課題について、ロッキー氏は以下のように見ている。「統合を複雑にしている側面は2つある。データマネジメントのような内在的な複雑性と、新しいアプリケーションの実装のような偶発的な複雑性だ。このように複雑を極めたソフトウェアのインフラが原因でビジネスチャンスを逃すケースは60%の割合で起こっているともいわれている」。

 アプリケーションの統合は企業にとって最優先課題だが、「現在のトレンドとして、アプリケーション統合とアプリケーション・サーバとの融合が挙げられる」とロッキー氏はいう。その背景には、ユーザーからの単一プラットフォームのニーズがあり、Webサービスの台頭も無関係ではない。

 Webサービスはアプリケーション・サーバをプラットフォームとして、実装・運用されることになる。「今後、システムに必要になるのは、接続性、標準技術のサポート、安定性、拡張性、統合性、さらには高いコスト効果」とロッキー氏。それらを実現する技術がXML、J2EEという。「いくら技術の変遷が激しいとはいえ、キーとなる技術はいくつかある。現在、それはXML、J2EE、SOAPWSDLUDDIなどだ」。

 BEAでは、Webサービスをその発達に応じ、2段階に分けて定義している。シンプル・セッションで、特定の相手とやり取りを行い、トランザクションを伴わない“シンプルWebサービス”と、会話型セッションで、複数間でのやり取りが可能、セキュリティが強化されトランザクション機能を持つ“ビジネスWebサービス”だ。

 「BEAは、最初にJ2EEをWebLogicでサポートした実績を持つ。Webサービスについても、SOAP、UDDI、WSDLをサポートしたWebLogic Serverで“シンプルWebサービス”を、ebXML、BTP、RosettaNetをサポートしたWebLogic Integrationで“ビジネスWebサービス”を実装する最初のベンダだ」とロッキー氏は自信を見せる。

 WebLogic Server 6.1Jでは、Webサービスの開発と運用が可能で、J2EEアプリケーションを自動的にWebサービス化する機能を備えている(「Webサービスを容易に実装できるWebLogic最新版」参照)。「WebLogic Integration」は、コラボレーションのソリューション「WebLogic Collaborate」を含む、アプリケーション統合、プロセス管理、BtoBなどを実現する製品、米国では6月に発表された。WebLogic Integrationの最新バージョン(v2.1)は、米国では今月末に発表されることになっており、日本でも同じタイミングで正式に提供を開始する(日本語版は来年1月に発売予定)。同社では標準化の早期実装だけではなく、OASISRosettaNetなどの標準化団体にも積極的に参加しているという。

 「Webサービスは、Webのプロトコル上で動作するため、コスト削減や統合などメリットは多い。実装に関してもより容易に、早く、安く実現可能となる。例えば現在、RosettaNetベースのサプライ・チェーン構築は、EDIよりコストがかかる場合がある。これがWebサービス化されればより安く、早く実装できる」とロッキー氏はそのメリットを強調する。

 技術的には、基本的なWebサービスは実現できるレベルにあるが、複数対複数のダイナミックなWebサービスの実現には、UDDIの成熟やセキュリティ、パフォーマンスなどの課題を指摘する。そのうえでロッキー氏は、「J2EEと.NETは共存するだろう。いま大切なことは、両プラットフォームに対応できるように、標準技術をベースとし、統合や再利用を前提としたアプリケーションを設計することだ」と助言した。

(編集局 末岡洋子)

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