テープバックアップの限界を示し、自動化を提唱するEMCラドガーズ会長

2002/4/10

 4月9日、来日中の米EMC 会長 マイケル・ラドガーズ(Michael C. Ruettgers)氏が、同社の提唱するビジネスの継続性と自動化についてプレス向けに説明を行った。昨年9月11日以来、データの安全性やディザスタ・リカバリに注目が集まっているが、ストレージ最大手の同社は、「テープによるバックアップでは100%失敗する」と言い切り、バックアップに対する根本からの見直しを呼びかけた。

米EMC マイケル・ラドガーズ会長

 ビジネスの情報システムへの依存度が高くなるにつれ、“ミッションクリティカル”はもはや、取引やERPなどに限定されなくなった。電子メールや給与明細システムも保護対象に入る。ラドガーズ氏は、万一に備えたデータセキュリティシステムの確立のために、4つのステップを踏むべきだとした。ビジネス復旧までに要する時間、災害時の復旧プランの策定、そのプランのテスト、そして実際に機能するかどうかの見極め。そして、このステップを繰り返し、2〜4時間で復旧するような災害プランを持つべきだとした。ちなみに、米Information Week誌が行った調査によると、災害発生時、データ復旧に要する時間で、システムの分散管理を実行し「即座にバックアップできる」と答えた企業は10%で、「数日」もしくは「復旧不可能」と回答した企業は40%だったという。

 9月11日の事件を受け、米国を中心に企業の間には、ITの災害対策を重要検討項目として掲げるところが多い。現在バックアップ対策として最も広く導入されているのがテープベースのバックアップだ。ラドガーズ氏はこれに対し、限界を示す。「世界貿易センターで災害に遭った企業は、6カ月経過したいまでも電子メールデータのバックアップをテープで行っている。テープの最大の欠点は時間。1ぺタバイトのデータの復旧をテープでやろうとすると100年かかる。それでは遅すぎる」(ラドガーズ氏)。

 ビジネスの継続を絶つものは、テロに限らない。日本で頻繁に起こる地震などの自然災害、さらには人的なミスもその原因になる。そこで、EMCが最善の手法として提案しているのは以下の4つの点だ。

  • データの二重化、分散化
  • リモート・リプリケーションと自動化の組み合わせ
  • 機能停止の起こる可能性のない運用
  • ダウンタイムの撤廃

バックアップに投資されていなかった理由は、製品がないからでも、コストでもない。優先順位が低かったからという。「オンラインバックアップの重要性が認識されてきた」(ラドガーズ氏)。歴史的な経緯からかだろうか、欧州市場では以前からこの分野に投資がされてきたのだそうだ

 EMCでは、これらを実現する製品として、リアルタイムでのオンタインデータミラリング「SDRF」とバックアップの完全自動化実現を目的とした「Auto IS」製品群を持つ。

 SDRFは1994年から提供している製品で、データの分散管理により災害時でも迅速にリモートサイトでのシステム再開が可能となる。Auto ISは昨年夏に発表した今後10年間のソフトウェアのコンセプトで、オープン、自動化、シンプルをテーマとする。現在、製品としては、管理ミドルウェアの「WideSky」などが提供されており、1管理者当たり数百テラバイトの情報が管理できるという(1995年は、1人当たり1テラバイトといわれていた)。Auto ISにより今後は、データのバックアップや災害復旧から、ビジネスの継続性そのものの実現を目指す。最終的には、サービス事業と組み合わせて常時オン・ビジネス状態を可能にしていくという。

 順調に成長を遂げてきたEMCも、昨年度第3四半期は赤字を計上するなど、世界レベルの不況の波を免れられなかった。ラドガーズ氏は、同社の経営の健全性を強調するとともに、市場での優位性を示した。「コスト構造改善により、約6億ドルを削減した。弊社はSAN、NAS、DAS、そしてソフトウェアの全カテゴリで世界でトップ、日本でも2位のシェアを誇る。技術投資では最大規模の8億ドルを投資している」とラドガーズ氏。日本では現在、日立製作所がトップを維持しているが、EMCは「順調に追い上げている」と述べた。日本での戦略については、パートナー戦略を進めていくという。また、投資も継続し、エンジニアリング施設などを充実させていく予定だ。

(編集局 末岡洋子)

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