複雑化・大規模化するSANは第2の波へ

2002/6/14

 米マクデータは、ファイバチャネルのスイッチなどストレージ関連機器のベンダである。日立データシステムやIBM、EMCなどにスイッチ、ダイレクタなどをOEM提供しており、SANの大規模スイッチ市場では大きなシェアを占めている。

 同社の新製品である、2Gbpsのファイバチャネル対応ダイレクタ「Intrepid 6000」とミッドレンジ向けスイッチ「Sphereon 3000」は現在、日立データシステムを通じて提供を開始しており、スイッチ側では2Gbpsの体制が整ったことになる。IntrepidはメインフレームのFICONとオープン系のファイバチャネルの両方をサポート、さらに、iSCSIやInfiniBand、FCIP(Fibre Channel over IP)などの将来の技術へのアップグレードもサポートするアーキテクチャを持つ。Sphereonはキャパシティ・オン・デマンドで柔軟性のあるシステム拡張を実現する「Flexport」を持つスイッチ製品だ。

同社 プレジデント兼COO ジョン・ケリー氏 「W杯のチケットも、SANを導入していたら売れていたかも(笑)」

 同社 プレジデント兼COOのジョン・ケリー(John Kelley)氏は、ネットワーク・ストレージについて、短期と長期、2つの見解を示す。短期的には、SAN(Storage Area Network)の導入というトレンドだ。今後2年以内にSANを導入予定とする企業は引き続き多く、現在導入率が約40%のフォーチュン500レベルでは2年後には過半数の山を超えて60%に、中小規模企業では倍増する見込みという。

 この動きについて、「SANを活用してストレージ内の情報に素早くアクセスしたいというニーズがSAN導入の需要を生んでいる」とケリー氏はいう。爆発的な盛り上がりには欠けるものの、SANの必要性への認知が広まってきたということだろう。同氏は現在のSAN市場を“第2の波”と位置付けている。過去3〜5年が、高性能性に着目し戦略的に導入する企業が多かった“第1の波”としたら、現在われわれのいる第2の波ではシステムが大規模化する。これまで5〜10台のスイッチだったのが35〜50台のレベルとなり、拡張性が重要となる。

 長期的には、ファイバチャネルやInfiniBand、iSCSIなど異なる技術やプロトコルがストレージシステムで混在することになり、ケリー氏はこれを、System Area Networkの頭文字をとって“SAN”と呼んでいる。同社が市場を牽引していく上で掲げるビジョンだ。

 「電話、ファイバチャネル、IPの3大スイッチ技術の融合・統合が進むと予期されていたが、早々に実現するとは思えない。ファイバチャネルとIPとの間での相互接続を可能にするFCIPを用い、現在ある技術の相互運用性が保て、さらに将来登場する標準も採用するストレージシステム、SANを推進していく」(ケリー氏)。

 同社は今後、2Gbpsファミリの製品の拡充を進めるほか、140ポートをサポートするダイレクタ「Intrepid 140」を今年の第3四半期に出荷する。同製品は、同社製品の特徴であるクロスバー・アーキテクチャを採用し、低消費電力を実現するという。また、導入や管理を容易にするソフトウェア群を強化する予定もあるとのことだ。

 同社は、ダイレクタおよびスイッチ市場でブロケード コミュニケーションズ システムズと競合するが、ブロケードがミッドレンジ市場を中心に展開しているのに対し、マクデータはハイエンド向け製品が多く、これまであまり存在感をアピールしていなかった。今後は、積極的に市場にメッセージを打ち出していくという。世界大手銀行20行中15行、大手通信業者9社中8社など、大手を中心に顧客を持つ同社は、日本市場では当面、メインフレームの占める比率が高いという市場の特性からも、IBMと共同で進めているFICON関連の技術開発の成果などで注目が集まりそうだ。

(編集局 末岡洋子)

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