PtoP型コラボレーションを企業に、日本初の製品がアリエルから
2002/6/21
ソフトウェア・ベンダのアリエル・ネットワークは6月20日、独自開発のPtoPフレームワークを用いたコラボレーションソフトウェア「ArielAirOne」を発表した。PtoPのプロトコルを利用した製品としては米Groove Networksの「Groove」などがあるが、国内ベンダから提供される製品としては同製品が初めてとなる。
ArielAirOneは、サーバを介することなくネットワークに接続したPC(ノード)同士の間で、情報の共有や交換が可能なPtoP型のアプリケーション。同社が独自に開発したフレームワーク「SOMAnet」をベースとし、コラボレーション・ポータル、スケジュール管理、文書管理、プロジェクト管理の4つのアプリケーションで構成される。ユーザーインターフェイスとしてはWebブラウザを用い、ユーザーはArielAirOneをインストールし、ユーザー登録するだけですぐに利用できる。
ArielAirOneの画面例 (クリックで拡大) |
コラボレーション機能としては、“ルーム”機能により、接続ユーザー間で動的にグループやコミュニティを複数作成でき、その中で情報の共有や共同作業が可能。アプリケーションとしては、ディスカッションやファイル管理、スケジュールやプロジェクトの進ちょく管理、メッセージングなどがあり、ルームメンバーのログイン状態も瞬時に把握できる。クライアント/サーバ型のグループウェアとは異なり、オフラインでの作業がオンライン時に反映されるメリットもある。
セキュリティに関しては、不正アクセス対策、通信の暗号化、リソース(ファイル)の暗号化、ユーザーあるいはグループベースでのACLなどのほか、ユーザーベースのログイン時認証などの機能がある。セキュリティはPtoPでよく懸念される事項の1つだが、「エンタープライズでの利用にも十分なセキュリティ機能を完備した」(同社 取締役 小林雅氏)としている。
ArielAirOneと同様のアプローチのPtoPツールとしては、すでに米国の「Groove」などがあるが、小林氏は、「日本のビジネス慣習に対応した点で差別化を図る」と言う。例えば、海外製品の場合、スケジュールは非公開だが、日本の通常のコラボレーションツールではスケジュールは公開されていることが多く、日本のユーザーのワークスタイルに合わせた「かゆいところに手が届く製品」(小林氏)という。
同製品のベースとなっているSOMAnetは、TCP/IPベースのフレームワーク。SOMAnet上の各ノードでのキャッシュ、また各ノード上のキャッシュの履歴を利用するなどのキャッシュ機能、差分管理や版数管理により、高速かつトラフィックを混雑させない検索機能を実現した。同社では今後、ArielAirOne以外にも同フレームワークを利用した製品を展開していく予定だ。
動作環境は、Windows ME/2000/XP、GNU/Linux。対応ブラウザはIE 5.0以降、Netscape 6.2以降、Mozilla 1.0以降。価格は1ユーザーあたり1万円前後となる予定。
ArielAirOneのロードマップとしては、8月にベータ版を公開し、9月に正式な販売を開始する。1万ユーザー以上の大規模システム対応製品として別途展開するエディションは、今年末にベータ版を公開し、来年初めに販売開始予定という。また、同製品を活用したソリューション事業も展開していく。
同社 代表取締役社長 栗村氏 ロータスに在籍していたという点で米GrooveのRay Ozzie氏と共通している |
同社では、各種コラボレーション機能に加え、サーバ不要による、導入のコストと時間の削減、ファイル交換スピードの高速性などのメリットを訴えて展開していくという。
PtoPは、米国で著作権侵害から訴訟問題に発展した米ナップスターの件もあり、ネガティブなイメージがいまだに付きまとっている。一時期の盛り上がりがなくなった感もあるが、実はプロトコルの整備などの技術的課題もまだ残されたままで、最適な用途の模索もこれからだ。「まずは1部分にPtoPを用いるハイブリッド型での導入が進むのでは」と同社 代表取締役社長 栗村信一郎氏は見ており、日本初となる同社の製品がどこまで企業ユーザーにアピールできるかは未知数といえる。成功すれば、PtoPを利用した新たな企業システムモデルとして市場の活性化が期待できるだけに、同社の今後の展開に注目したい。
(編集局 末岡洋子)
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アリエル・ネットワーク
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