インテル64ビットCPUの本命「Itanium2」が登場

2002/7/10

今回発表されたItanium2プロセッサ。巨大なパッケージだった初代Itaniumに比べ、オンダイに機能を統合してコンパクトな形状になったため、今後はマシンへの実装が容易になるものと思われる

 インテルは7月9日、同社の64bitsプロセッサ「Itanium(アイテニアム)」の最新版である「Itanium2」の出荷を開始したと発表した。従来まで、Itanium2は「McKinley(開発コード名)」と呼ばれており、ハイエンド・システム分野への本格進出を狙う同社の64bits CPU戦略の本命といわれている。今回の出荷開始と同時に、ハードウェア/ソフトウェア・ベンダ各社が対応製品の発表や今後のサポートを表明したことで、IA-64(インテル・アーキテクチャの64bits CPU)の本格的な普及に、今後いっそうの弾みがつくだろう。

 今回発表されたのは、「Itanium2-1GHz(L3キャッシュ 1.5/3Mbytes)」「Itanium2-900MHz(L3キャッシュ 1.5Mbytes)」の計3モデル。従来のItaniumに比べ、クロック周波数比で約1.2〜1.25倍ほどアップしているほか、3次キャッシュをオンダイとしたことで、さらなる性能向上を実現している。同社では、「アプリケーションにもよるが、Itaniumに比べて最大2倍近いパフォーマンス向上を実現できる」としている。また、Itanium2用の新チップセット「Intel E8870」は2002年秋に出荷する予定だが、同チップセットを用いることで2〜16wayまでのマルチプロセッサ構成が可能になる。ただし、今回各社から発表されたサーバでは、各社独自のカスタム・チップを用いることで、16wayよりも大規模な環境をサポートするメーカーもある。

製品名
千個受注時の単価
Itanium2-1GHz(L3キャッシュ 3Mbytes)
52万5080円
Itanium2-1GHz(L3キャッシュ 1.5Mbytes)
27万9190円
Itanium2-900MHz(L3キャッシュ 1.5Mbytes)
16万6250円
表1 今回発表されたItanium2のラインアップ

 
Itanium
Itanium2
クロック周波数
800/733MHz
1GHz/900MHz
主なチップセット
Intel 460GX
Intel E8870
チップセット・メモリ
PC100
DDR 200
キャッシュ
L1:32Kbytes
L2:96Kbytes
L3:2/4Mbytes
L1:32Kbytes
L2:256Kbytes
L3:1.5/3Mbytes(オンダイ)
I/O帯域幅
PCI-66MHz
PCI-X 133MHz
システム・バス
266MHz
400MHz
表2 ItaniumとItanium2のスペック比較(クロック周波数以外のスペックはチップセットに依存する)

説明会の壇上に立つ、米インテル エンタープライズ・プラットフォーム事業本部 マーケティング・ディレクタのリチャード・ドラコット氏

 Itanium2(当時は「McKinley(マッキンリー)」という開発コード名)はインテルの64bits CPU戦略の大本命といわれていた。その理由は2つある。1つは、パフォーマンスの問題。Itanium(当時は「Merced(マーセド)」という開発コード名)のスペックが公表された当初、そのコンセプトやパフォーマンスに対する期待から、ハイエンドUNIXサーバを提供する各社は、こぞってItaniumのサポートを表明していた。だが、最初にリリースされたItaniumでは、ライバルであるサン・マイクロシステムズ、HP(PA-RISC)などのマシンのスペックをしのぐことは難しい。そのため、性能面においては、新しいデザイン・コンセプトの導入される次世代Itanium、つまり今回発表されたItanium2での改善に期待が寄せられていた。

 もう1つの理由は、アプリケーションの問題。Itaniumでは、従来のXeonプロセッサのようなIA-32とはバイナリ互換を維持していないため、最適化のためにはコンパイラ・レベルからのチューニングが必須となる(PA-RISCとはバイナリ・レベルの互換性を持っている)。既存アプリケーションのポーティングやチューニングを完了させるためには、多くの時間が必要となる。Itanium時代にこれらの資産を築き、Itanium2で花開かせようというのが、インテルやベンダ各社の思惑なのだ。

Itanium2を最大32個搭載可能な、NECのハイエンド・サーバ「TX7」。同モデルの前身であるItanium搭載サーバ「AzusA」に比べ、システムの自動修復機能を搭載するなど、より高い可用性を実現しているのが特徴だ。最大3つのパーティショニングが可能で、Windows、Linux、hp-uxの3種類のOSをサポートする。同社では「スカラー型では最高レベルのサーバという位置付けで販売していきたい」という

 最初の構想から7年近く経過した巨大プロジェクトは、いままさに本格的な離陸の時を迎えようとしている。目指すは、サン・マイクロシステムズやHP(PA-RISC)、IBMなどといったメーカーが圧倒的シェアを誇る、ハイエンド・サーバの市場だ。米インテル エンタープライズ・プラットフォーム事業本部 マーケティング・ディレクタのリチャード・ドラコット(Richard Dracott)氏は、「システム価格でサーバ市場全体を見ると、インテルは中〜低価格のサーバ群においては圧倒的シェアを誇っているが、それ以上のシステムにおいては、サンやHP(PA-RISC)、IBMといったライバルが大きなシェアを占める。出荷台数ベースでは9:1の割合だが、システム金額ベースとなると4:6に逆転する。つまり、ここに大きなチャンスがある」と話す。

 Itanium2には、業界関係者からの期待も集まる。発表会の席上には、マイクロソフト、HP、NEC、日立製作所、オラクルからの代表者も登壇し、Itanium2に対する各社の戦略を語った。特に、「64bits Windowsが本格的に立ち上がれば、これまでの大学や研究機関といった顧客だけでなく、一般のビジネス用途にも広くアピールでき、市場の拡大スピードは加速する」(NEC 執行役員常務 カンパニー副社長 小林一彦氏)と語るように、マイクロソフトの取り組みへの期待は大きい。マイクロソフトは64bits Windowsの開発に、2400億円の開発費と6000名に上る人員を投入、64bits Advanced ServerやSQL Serverのベータ版やLimited版の提供を開始している。そして、今回のItanium2に向けて、Advanced Server Limited Edition 1.2とSQL Server 2000 64bit(開発コード名「Liberty」)をリリースしたことを発表した。このAdvanced Server Limited Edition 1.2は、今後リリースされるWindows .NET Server 64bitへの無償アップグレードが可能である。

(編集局 鈴木淳也)

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インテルの発表資料

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