[Interview]
EMCのAutoIS戦略、「3つの強み」とは

2003/3/11

 ストレージベンダの主戦場がハードウェアからソフトウェアへと急速に移っている。特に異機種混在環境で、他社のストレージ製品までを管理するストレージの統合管理ソリューションは、今後大きな伸びが期待されている。EMCは異機種混在環境でのストレージ管理と複雑性の緩和を可能にする「AutoIS戦略」を2001年に発表。他社のストレージベンダにAPIを提供するなど統合環境の実現を積極的に進めている。EMCのストレージ統合ソリューションは何を目指すのか。米EMCのグローバル・ソリューションズ・グループ担当バイス・プレジデント ドナルド・S・スワティック(Donald S. Swatik)氏に、EMCが考えるストレージ統合ソリューションの姿について聞いた。



──ストレージ管理ソリューション市場の現状は? EMCはどのような戦略を持っているのか。
米EMCのグローバル・ソリューションズ・グループ担当バイス・プレジデント ドナルド・S・スワティック氏

スワティック氏 ストレー ジ管理をより効率的に行いたいという顧客のニーズが市場をけん引している。ストレージ管理はSANと密接に関係していて、EMCではそれを「Automated Networked Storage」と呼んでいる。ストレージの管理を自動化することで効率化する。ネットワークやファイバチャネルなど幅広い分野を対象にしている。

 現在の市場状況を見ると多くの顧客はいかにしてコストを下げるかということに注力している。ネットワークストレージ技術を使うことで、企業はサーバやストレージを統合することができる。EMCの「ControlCenter」のようなストレージ管理ソリューションを使えば、1人の担当者が管理できるストレージは10倍になる。

 ストレージ管理ソリューション市場は、TCOをより引き下げたいという顧客の要求と、複雑性を増している企業のシステムが作り出している。複雑なシステムとは、さまざな種類のサーバやネットワークコンポーネント、ストレージが混在する環境のことだ。

 企業のシステムに、さまざまなストレージやコンポーネントが含まれていても、統合して管理できるソフトを使いたい、というのが企業の要求だ。ControlCenterはストレージ統合ソリューションでリーダー的なソフト。最もパワフルで、さまざまなプラットフォームで利用可能だ。

――EMCが提唱しているAutoIS戦略の現状は?

スワティック氏 2001年にAutoISを発表した。その後、「SAN Manager」や自動プロビジョニングソフトなど対応ソフトを追加した。サポートするストレージベンダも増やした。EMCは、AutoISを発表したことでオープンで異機種混在というマーケットを作り、定義づけたといえる。競合会社も同様の戦略を推進しているが、EMCに追随しただけだ。AutoISには3つの強みがある。1つはCIMやBluefinのような業界標準のサポート。2番目にAPIの交換による競合会社との協力。3番目に独自製品の開発だ。

 この3つの分野でEMCは進捗を遂げている。業界標準では、ストレージの業界団体である「SNIA」(Storage Networking Industry Association)で、EMCは主要な役割を果たしている。競合会社との協力では先日、ベリタスとAPIの相互供与を発表した。EMCと競合会社との違いは、EMCは実際に自分たちの戦略を製品化して実行し、市場に投入していることだ。顧客のニーズにこたえている。他社はまだ準備している段階だ。

――EMCはマイクロソフトやオラクル、SAPなど150以上のソフトベンダとアライアンスを組んでいる。その強みは何か。

スワティック氏 ほかのストレージ会社もアライアンスをしているが、EMCほどの規模はない。ほかの会社に比べて、明らかに強力なアライアンスだ。EMCのアライアンスの強みは、ソフトベンダが興味を持つような製品やテクノロジをEMCが持っていること、お互いに価値を得ることができることだ。また、共通のマーケットの存在も強みだろう。EMCとオラクルが共通で持っている顧客は2万5000社になる。サードパーティとの協力を可能にするオープンな環境もEMCがソフトベンダから支持を集める理由だろう。

――ソフトに注力することで、ハードの収益が上げられなくなるのではないか。

スワティック氏 バランスをいかにとっていくかが重要だ。今後、ハードの収益を50%、ソフトを30%、サービスを20%にしたいと考えている。必要とされるハードの容量は年率50%以上の割合で増えている。ハードに対する需要も今後、さらに増大する。

――ストレージのハードがコモディティ化して他社との差別化が難しくなるのでは。

スワティック氏 ストレージ管理ソリューションへの需要はさらに高まると考えている。EMCはソフト製品、ストレージ管理製品に対して大きな投資をしている。一方で、ハードも差別化を図る要因だ。ハードの中のOSの機能性がますます重要になる。ここで他社に差別化を図るのがEMCの戦略だ。だが、ハードの価格は今後も下がり続けるだろう。

(垣内郁栄)

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