IP電話普及で通信料激減、NTTコムはどこで稼ぐ?

2003/6/21

 NTTコミュニケーションズは、同社が提供しているIP電話サービス「.Phone IP Centrex」(ドットフォンIPセントレックス)で、顧客企業が利用できるアクセス回線に広域イーサネットとIP-VPNを近く追加することを明らかにした。.Phone IP Centrexで現在利用できるアクセス回線は、OCNのフレッツ回線(ADSL、光)だけだが、NTTコムでは「アクセス回線を充実させ、エンド・ツー・エンドのネットワークから保守、運用までトータルに面倒を見ることで、ほかの事業者と差別化したい」としている。

NTTコミュニケーションズのブロードバンドIP事業部 マーケティング部長 高瀬哲哉氏

 .Phone IP Centrexは、企業の内線電話で利用するPBXの機能をNTTコムにアウトソーシングするサービス。これまでPBXの保守や運用は専門の技術者が必要で、コストがかかっていた。このPBXの機能をIPネットワーク上に設置したサーバ(ソフトスイッチ)で代替する。社内に高額で保守コストがかかるPBXを設置する必要がなく、運用管理コストを半額程度まで下げられるという。内線通話は定額、外線通話も全国一律で3分8円と低料金になり、通信費の削減効果も大きい。NTTコムはIP電話専用の基盤ネットワークを構築。安定した通話サービスを提供できるという。

 NTTコムは.Phone IP Centrexを、一般の加入電話などIPネットワークの外からの着信にも対応させる方針。現在はIPネットワーク外の加入電話に対して、発信は可能だが着信は対応していない。携帯電話/PHSとの通話も可能にする。加入電話への発信や携帯電話との通話は今夏にも実現させる予定。企業向けのIP電話は、内線電話として利用が広がっているが、NTTコムは従来の企業電話を完全に置き換える次世代インフラに育てることを狙う。

 .Phone IP CentrexはPBXの機能として代表電話、ナンバーディスプレイ、転送機能、保留機能、非通知着信機能などを提供。従来のPBXは500〜600の機能があるが、NTTコミュニケーションズのブロードバンドIP事業部 マーケティング部長 高瀬哲哉氏によると、「従来のPBXには使っていない機能もある。.Phone IP Centrexでは50程度の代表的な機能に絞った」という。しかし、「細かな機能を利用したい企業向けにオーダーメイドのサービスも近く提供予定」と明らかにした。

 .Phone IP Centrexの月額基本料金は、内線のみ利用の場合、音声1チャンネル当たり600円。内線と外線への発信を利用する場合は1000円。外線への発信は3分8円で従量制。転送機能や保留機能など付加機能の利用は、現在は基本料金とは別にオプション料金が必要。しかし、高瀬氏は「ほかの事業者との競争もある」として、近くオプション料金を無料にし、基本料金だけで利用できるようにする考えを示した。

 IP電話はNTTコムなど通信キャリアのほかに、システム・インテグレータなど多数のベンダが参入し、競争が激化してきた。一方で、低料金のIP電話が普及することは、NTTコムなど通信キャリアに取って通信料収入の減少につながる。NTTコムは電話会議サービスやeラーニングサービスを近く開始予定。IP電話を使い低価格で構築可能なコールセンターのサービスも準備している。これら付加サービスの充実で、通信料収入の減少を補う考えだ。

(垣内郁栄)

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