IIJ鈴木社長が驚いたロシア人技術者の新サービス

2003/7/24

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、米Netliと提携し、Webサーバの応答速度を通常の10倍程度まで高速化するアプリケーションデリバリ・ネットワークの新サービス「IIJ ネットライトニング」を8月7日に開始すると発表した。これまでもキャッシュサーバを使いWebサイトの表示速度を向上させる技術はあったが、効果があるのはWebサイトのうち静的なコンテンツのみ。米Netliが開発した技術では、オンラインショッピングや、電子商取引、SCMなど動的なWebアプリケーションに利用可能。IIJは海外のユーザーが日本のWebサーバにアクセスする利用を想定している。

IIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏。「Netliのようなすっとんだ発想の開発はIIJでは生まれてこなかった」と述べた

 米NetliはTCP/IPを基に独自に開発した高速アクセスのためのプロトコル「Netli Protocol」を利用。エンドユーザーが、Webサーバにアクセスのリクエストを出すと、NetliのDNSサーバが世界13カ所にある「バーチャルデータセンター」(VDC)にリクエストを誘導する。VDCと、Webサーバの近くに設置してあるアプリケーションアクセスポイント(AAP)まではNetli Protocolで接続され、Webアクセスが高速化する仕組みとなっている。AAPからWebサーバまでは通常のTCP/IPで接続。Netli Protocolを使ったこの仕組みを利用することで、海外から日本のWebサーバにアクセスする場合の距離による遅延を防げるという。

 Webサイトを表示する場合、通常は数10回のデータのやりとりが必要になるが、Netli Protocolはこのデータのやりとりを数回に減少させる機能がある。長距離のデータ交換回数を少なくすることで、Webサーバの応答速度を向上させる。IIJ ネットライトニングを利用するうえで必要な設定は、アクセスを受けるWebサーバのDNS設定を変更するだけ。エンドユーザー側は通常のURLを入力すれば、Netli Protocolでアクセスできる。

 IIJが発表したデータによると、ロンドンから国内のWebサイトにアクセスした場合、表示が完了するまで通常は10.97秒かかったが、IIJ ネットライトニングを使うと1.14秒に短縮したという。キャッシュサーバを使ってもWebアクセスの速度は向上するが、電子商取引のカートシステムなど動的なコンテンツが利用できなかった。

 Netliは米国ですでにサービスを展開中。顧客の1社であるヒューレット・パッカードは、全世界のソフト開発拠点から米国のデータセンターへのアクセス速度を向上させる目的で導入しているという。ただ、日本の場合、海外から日本のWebサーバにアクセスするような国際的なビジネスを展開している企業は、限られるのが実態。IIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏は、「残念ながらグローバルでデータをやりとりする顧客がどれほどいるのか分からない。将来的には必ず現れると考えている」と述べた。

 IIJ ネットライトニングの価格は、初期費用が50万円で、月額費用は帯域1Mbpsのタイプが65万円、2Mbpsが104万円、5Mbpsが143万円となっている。米国では1Mbpsと2Mbpsのタイプが最も利用されているという。IIJは初年度に50件、1億円の利用を見込んでいる。

 Netliは2000年に設立されたベンチャー企業。ロシア出身のエンジニアが今回の技術を開発したという。鈴木氏は、「ネットワークをずっとやってきた人間には思いつかないサービス」と評価したうえで、「われわれも世界を驚かすような開発をやってみたい」と述べた。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
IIJの発表資料
Netli

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