10キロの無線通信、地域イントラネットを支える無線LANとは

2003/8/9

 地域イントラネットが地方自治体を中心に広がりを見せている。地域イントラネットとは、自治体が役所や公民館、教育施設、病院、警察などをネットワークで接続し、住民が必要な情報を必要なときに入手できるようにするシステム。防災情報を提供したり、病院と住民宅を接続し、遠隔医療を利用できるようにしているケースもある。住民への情報提供だけでなく、施設間の通信にも利用でき、業務の効率化につなげられると期待されている。総務省が1998年度から全国の自治体に対して地域イントラネット構築の支援をしていて、これまで750以上の事業を支援。2003年度は40の事業に対して35億円を交付することを決めている。

 地域イントラネットの基盤となるのが、地域の公共施設や住宅を結ぶ高速ネットワークだ。多くの自治体ではこのネットワーク構築に光ファイバを利用することを想定している。NTTなど通信キャリアが敷設した光ファイバを利用できるなら問題ないが、光ファイバを新設しようとすると膨大なコストがかかる。ネットワークの運用管理コストも自治体にとっては頭が痛い問題だ。

アイコムの営業本部 販売支援室 技術支援グループ 主任技師 小松正樹氏。手前右が「SB-5000」。左はデュアルバンド対応のアクセスポイント「AP-5100」

 無線機器大手で、ネットワーク機器にも力を入れるアイコムは、この問題を無線LANで解決できるとアピールする。地域にある公共施設や住民宅を無線LANで接続し、ネットワークを構築しようという考えだ。アイコムが6月末に発表したビル間通信ユニット「SB-5000」は最大伝送距離が10キロで、ユニット間でデータ通信をさせることはもちろん、同時にアクセスポイントとして利用することができる。地域の公共施設などに設置することで、地域イントラネット構築と、住民宅への足回りのアクセスを同時に実現可能だ。

 SB-5000は通信速度が最大54MbpsのIEEE802.11gと、11MbpsのIEEE802.11bを同時に通信させることができる。同時通信させることで、通信速度の低下を防ぎ、通信の安定性が増したという。IEEE802.11gの最大伝送距離は5キロだが、小型のパラボラアンテナを接続し、IEEE802.11bを利用すると10キロの通信が利用可能になる。無線LANで重要になる暗号には、OCB AESとWEP(64bit/128bit/152bit)を採用。価格はオープンだが、アイコムの営業本部 販売支援室 技術支援グループ 主任技師 小松正樹氏によると、「光ファイバで地域イントラネットを構築することを予定していた自治体が、アイコムのビル間通信ユニットを利用することでコストを大幅に下げた」というケースもあるという。

 小松氏が紹介した地域イントラネットの事例によると、岩手・陸前高田市は59台のビル間通信ユニットを使い、地域の小中学校や保育所などを接続するイントラネットを構築した。学校間の情報交換などに利用している。無線LANを使ったビル間通信ユニットの場合、ネットワーク構成を変更する場合も通常のLANに比べて容易だ。アイコムのビル間通信ユニットは山間部の工事現場などでも利用されている。一般のLANの場合は工事の進捗状況に合わせて、ネットワーク施設を移動させる必要があるが、ビル間通信ユニットならアクセスポイントを動かすだけで簡単に異動させることができ、運用コストも低く抑えることができるという。

(垣内郁栄)

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