Linuxビジネスの真髄は“ブランド”にあり、テンアートニ

2003/8/16

 企業のコスト削減、信頼性重視の流れを受け、基幹系システムへのLinuxの普及が進んでいる。しかし、Linuxをはじめとするオープンソース・ソフトを使ったビジネスは商用ソフトとは大きく異なる。テンアートニの代表取締役社長 喜多伸夫氏は、「オープンソース・ソフトを使ったビジネスは実際に提供したサービスの価値に従って顧客に代金を支払ってもらう。知的財産に基づいた商用ソフトのビジネスは早晩、厳しくなるだろう」と指摘した。

テンアートニの代表取締役社長 喜多伸夫氏

 喜多氏がLinuxビジネスでユーザーに提供できる価値と考えているが、サポートサービス。テンアートニは8月1日にレッドハットと提携し、ミッションクリティカル向けLinuxである「Red Hat Enterprise Linux」に独自サポートを付加したサービスを開始した。サポートサービスは、月曜から金曜の9時から21時まで、電話、Webサイト、電子メールでサポートを行う「Standard Plus」と、24時間365日の電話、Webサイト、電子メールのサポートを提供する「Premium Plus」の2種。サポート期間は1年で、問い合わせ件数は無制限。それぞれRed Hat Enterprise LinuxのAS、ES、WSの製品別に価格を分類。Standard PlusのAS向けが19万8000円、ES向けが9万9800円、WS向けが3万9800円となっている。Premium Plusはオープン価格で個別見積もり。テンアートニは合わせてRed Hat以外のLinuxやUNIXからのマイグレーションサービスも提供する。今後2年間で20億円のビジネスに育てるのが目標だ。

 喜多氏はRed Hat Enterprise Linux向けのサポートサービスを始めた理由について、「Linuxの基幹系システムへの導入が進む一方で、サポートを不安視する顧客は多い。Linuxビジネスではサポートが鍵。レッドハットと協力し、エンタープライズのLinuxシステムを安心して利用してもらう」と説明した。

 喜多氏は「金融業界でのエンタープライズLinuxの導入が進む」と見ていて、新サービスでのターゲットの1つにする。「金融がエンタープライズLinuxに進むのは米国での金融機関の導入状況を見ても明らか。コスト削減へのニーズが強く、コストを下げることが競争力の源泉となっている」と指摘した。行政も新サービスで狙う分野。「行政ではセキュリティが注目され、導入が進むだろう。コストだけを見るとWindowsはメインフレーム、UNIXに比べて安い。しかし、信頼度、安全性が低いといわざるを得ない。Linuxは安全性が必ずしも高いというわけではないが、オープンソースなので問題に対して自分たちで対処できるのがメリットだ」と説明した。行政をターゲットとする理由の1つには、行政の現場にLinuxが分かるエンジニアが少なく、テンアートニが提供するサポートサービスが受け入れられるだろう、という狙いもある。

 オープンソース・ソフトのビジネスが今後さらに拡大するための課題は何か。喜多氏の考えは“ブランド”だ。信頼できるサービスを継続し提供できるかが、ユーザーに選んでもらえる鍵になるという。信頼を勝ち取ることでそのサービスや提供企業がブランドとなり、成長のサイクルに乗ることができる。「オープンソース・ソフトでビジネスをするということは、ピュアにサービスでしか食えないということ」と喜多氏は強調。「じわじわだが、Linuxのエンタープライズへの普及は進む」と述べた。

(垣内郁栄)

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テンアートニの発表資料

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