すべてのレイヤをカバーできる監視ツール、アジアを狙う
2003/9/23
ITを最大限活用しビジネスを推進する。いまでは当たり前の考え方だが、その結果、以前と比べて企業が保有するシステムは増え続けている。さらにダウンサイジング、オープンソースなどの流れの中で、システムは一層複雑化している。しかし、システムの運用・管理に割ける人員は増えず、1人が管理すべきシステムは途方もない数になる。しかも運用・管理の人員は最低限の人数しか確保されず、管理すべきシステムの数に対して圧倒的に少ない。
そこで重要なのが、ネットワークやシステムを監視するツールとなる。少ない管理者でいかに効率よくネットワークやシステムを監視するか。米マイクロミューズの「Netcool」スイートは、こうしたネットワークやシステムの運用/監視をエンド・ツー・エンドで行えるソフトウェアだ。しかし、ネットワーク監視ツールには、日立製作所の「JP1」、富士通の「SystemWalker」、NECの「WebSAM」、ヒューレット・パッカードの「OpenView」、IBMの「Tivoli」、さらにBMCの「Patrol」など多くの製品がすでに市場に満ちている。そんな中でマイクロミューズのNetcoolのセールスアピールはどこにあるのか。
米マイクロミューズの会長兼CEOのロイド・カーニー氏。買収されるとの噂があったことについて聞いたところ、「これまでさまざまな会社に買収される側にいた。次に買収されるならば、多額な金額で買収されたいよ」と冗談で応じた。グリッドやブレード、IPストレージなどに対してもすべてに対応できると強調した |
米マイクロミューズの会長兼CEOのロイド・カーニー(Lloyd Andres Carney)氏は、それを「ユニークでオンリーな製品」な点にあると強調する。Netcoolは、一瞬たりともサービスを落とすことができない大手通信会社やサービスプロバイダなどを顧客に持つ。同社の顧客の42%は通信企業、19%はインターネット関連企業、9%がブロードバンド関連企業、そして7%は無線通信関連企業(合計すれば77%)。残りのエンタープライズ企業(23%)も「通信会社といってもいいぐらいの(ネットワークなどの)規模などを有する企業」である。
さらに同社製品ユーザーの69%は、リピーターである点もマイクロミューズの持つ強みだという。なぜなら、顧客が求めているソリューション、機能を同社が次々と提供し続け、それを顧客が支持してくれているからだ。
さらにカーニー氏は、「ほかの製品とは違い、すべてのレイヤをカバーでき。また、われわれと同じように対応できる規模や能力(スケーラビリティ)を持つ製品はない」と述べ、ほかの製品との違いを強調する。とはいえ、同社の製品は通常、他社のネットワーク監視ソフトウェアと連携して利用することが多い。つまり共存共栄の考えだ。その関係をカーニー氏は「われわれは、他社の監視ツールを使いマネージ(管理)しているマネージャ(管理者)を、さらにマネージする」と答えた。
今後、マイクロミューズが注力したい市場は日本を含むアジア・太平洋地域。現在地域別の売り上げで、全世界の約8%はアジア・太平洋地域だが、これを「20%にしなければならないと考えている」(カーニー氏)という。
例えば日本。2003年8月末現在のDSLサービス提供数は約888万回線。CATVやFTTHサービスを入れれば、日本のブロードバンドユーザー数は1000万を上回る(総務省のデータによる)。また、携帯電話を利用したインターネット接続も6000万回線を上回る状況にある(2003年7月末時点での総務省のデータ)。さらには無線LANなどの接続ポイントも増え続けている。
マイクロミューズが狙うのは、こうした新しいアプリケーションやサービスを提供する通信会社などだ。新しいアプリケーションやサービスには新しい監視が必要となることが多い。そして、これは同社の製品をすでに導入している企業でも同じこと。さらにカーニー氏は「日本では世界に先駆けて新しいサービスが立ち上がることが多い。それに対してサポートを行い、それを基にして、ほかの地域にも展開しサポートできる」と述べ、日本が世界の先行市場として重要だと強調した。
カーニー氏が今回来日したのも、「日本ではどういうビジネスがあるのか、どういうチャンスがあるのか、それらのためには何名必要なのか、どんなパートナーが必要なのか、そしてどれだけのスピードが必要なのか、そういうことを現場で感じたかったからだ」と述べ、日本市場の重要性をかなり意識しているようだ。
マイクロミューズは昨年、RiverSoft PLCやLumos Technologiesなど、自社にないレイヤの製品を持つ企業を積極的に買収し規模の拡大を図ったが、株価は2ドルを大きく下回り、買収されるとの噂も何度かあった(現在株価は大きく上昇している)。その点をカーニー氏に確認すると、「昨年までIT部門全体がマーケットの影響を受けた。マイクロミューズはフォーカスを絞り、対策を講じたため、コストを下げることができ、多くの新製品も出荷した。苦しいときにしっかりとしたことができた。その成果が表れている」と述べ、現在はその影響を脱していると強調した。「ある程度の期間で売上高5億ドル(2002年度は1億3910万ドル)規模の企業にしたい。それをサポートできる企業であれば買収を図りたい」とクーニー氏は述べ、今後も必要であれば企業買収を行う考えを示した。
(編集局 大内隆良)
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