サーバ2台から始めるグリッド・コンピューティング
2003/12/23
グリッド・コンピューティングのビジネス利用を打ち出し、新製品のOracle 10gを強力にアピールした「OracleWorld Tokyo」が終わった。科学技術計算などで数千台のコンピュータをクラスタ接続し高速に処理させる、というのがグリッドの従来のイメージ。オラクルはこのような科学技術計算分野でのグリッドのイメージを払しょくし、中小企業などミドルレンジ市場でもグリッド・コンピューティングが有効であることを定着させるのに懸命だ。基調講演を行った米オラクルのサーバテクノロジ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのチャック・ロズワット(Chuck Rozwat)氏は「サーバを2台つなげるだけでグリッドを始められる」と強調し、グリッド=大企業、研究機関というイメージを否定した。
米オラクルのサーバテクノロジ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのチャック・ロズワット氏 |
ロズワット氏はOracle 10gで実現できるグリッドについて「サーバを2台つなげるだけで絶対にフェイルしないシステムがつくれる」と指摘し、中小企業や大企業の部門が構築するグリッドのメリットを強調した。ロズワット氏は「システムの高可用性はこれまで、少数の要求が厳しいアプリケーションだけに必要とされてきた」と説明したうえで、「しかし、ネットワークに依存したビジネスを展開する中小企業をはじめ、すべてのシステムに高可用性が必要となっている」と述べた。「グリッドは安価で高可用性を提供できる」というのが中小企業市場に対するロズワット氏のメッセージだ。
インストールや運用管理の容易さも中小企業に対するアピールポイントだ。CD1枚、20分以下でインストールできる新しい構成や、自動化機能を搭載し推奨設定があらかじめ提示される運用管理など、システム管理者が手薄な中小企業向けの機能を搭載している。
既存のシステムをそのまま使えるというのも、オラクルが中小企業市場に伝えたいポイントだろう。パッケージアプリケーションやレガシーシステム、.NET対応サーバなどが混在するシステムにOracle Application Server 10gを導入することで、それらのシステムを相互に接続し、Oracle Enterprise Manager 10gによる運用管理が可能になる。システム全体の可用性が向上し、シングルサインオンの導入でセキュリティも高まるとしている。
オラクルはOracle 10gをWindowsネイティブで開発するなど、UNIXに比べて中小企業での利用が多いWindowsプラットフォーム向けに営業活動を活発化させる方針。グリッド・コンピューティングで、中小企業の心をつかむことができるか。中小企業開拓はどのITベンダも課題としているだけに注目を集めるだろう。
(編集局 垣内郁栄)
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