2003年、IT業界は3つのキーワードに彩られた

2004/1/6

 「スキルアップ」「オープンソース」「セキュリティ」。2003年に@IT NewsInsightに掲載されたニュースをページビューでランキングしたところ、この3つのキーワードが浮かび上がった。新しいテクノロジや環境への対応を図るITエンジニアの関心が表れているといえるだろう。

 2003年に最も読まれたニュース記事は、「資格もデフレ、ORACLE MASTERが10月に大改正」だった。日本のORACLE MASTERの資格制度を改定し、世界の資格制度に合わせるという発表を報じた記事。これからORACLE MASTERを取得するエンジニアだけでなく、すでにORACLE MASTERを取得しているエンジニアにとっても影響が大きい改正だっただけに興味を引いたようだ。

 スキルアップに関連する記事ではほかに、「急速に増えたオープンソース技術者、『スキルは高くない』」(3位)や、「『VBの倍の開発生産性』というJavaベースの開発ツール、IBM初公開」(16位)、「“ITスキル標準”、あなたのレベルは?」(26位)などが上位に入った。スキルに対して危機感を持つエンジニアに多く読まれたようだ。

 オープンソースに関するニュースが多かったのも2003年の特徴だ。小規模なシステムから大規模な基幹系システムへのオープンソースソフトの導入が進んだ年で、“オープンソース元年”ともいえるほど目覚しい浸透を見せた。

 2位にランクインした「『情報家電はLinuxかトロンにしてくれないか』と訴える経産省」では、ソフト開発の国際競争力強化を目指す経済産業省のオープンソース戦略を紹介した。経産省担当者の「経済産業省として情報家電でいいたいのは、技術の共通化、標準化の重要性だ」というコメントが読者の注目を集めた。6位の「UFJ銀の基幹システムを“陥落”させたLinuxの切り札」は、オープンソース躍進を象徴するニュース。システムの信頼性を重視する金融機関でLinuxが採用されたというニュースを担当者のコメントとともに報じた。記事では担当者の「TCO削減に過度の期待は禁物だ。コストはシステム構築の全体を考えなければならず、OSはそのわずかな部分にすぎない。また、セキュリティ対策はUNIXに大きく後れを取っている」という発言も紹介し、Linuxに対する認識の現状を明らかにした。

 オープンソースに関する記事ではほかに、「『オープンソースはソフト産業を壊滅させる』は正しいか」(17位)や、米SCOによるIBM訴訟を報じた「米SCO社長がIBM訴訟を激白、『死ぬまで戦い抜く』」(19位)、「富士通、Linuxに熱烈なラブコール」(46位)などが上位に入った。

 コンピュータ・ウイルスや不正アクセスによる被害も相変わらず続出した。夏期休暇中に発生したワーム「MSBlast」では、企業LANがターゲットにされ、内部感染が相次いだ。休暇を返上して、対策に当たったエンジニアも数多くいた。ニュースでは「猛威を振るうMSBlast、休暇明けまでに対策を」(7位)で第一報を報じ、ワームの特徴や具体的な対策法を紹介した。11位の「MSBlast対策で苦渋を味わうマイクロソフト」では、ワームのターゲットとなったマイクロソフトの対応を紹介。「マイクロソフトはTrustworthy Computingとしてコンピュータの信頼性を高める施策を行ってきた。それにもかかわらず一般ユーザーの間で多数の感染者を出したことは大変残念に思う」というマイクロソフト担当者のコメントを掲載した。セキュリティ関連の記事ではほかに、「SQLスラマーが大流行、その時MS社内は?」(13位)、「『危険なのは無線LANを使う人』、ラック三輪氏がセキュリティ対策指南」(23位)などがランクインした。

 そのほかのニュースではIP電話関連の記事が目立った。「法人利用が急増、2003年はIP電話元年になるか」(14位)で指摘したように、2003年はIP電話の大規模導入が相次いだ。IP電話普及で通信料激減、NTTコムはどこで稼ぐ?(5位)、「IP電話の未知なる危険とは」(18位)、「“電話機が消える日”を迎えるための課題とは」(27位)など、IP電話導入後の運用管理を見通した内容の記事が多く読まれた。

 2003年に流行語のように各ベンダが提唱したユーティリティ・コンピューティング関連の記事は、9位に「オラクルの次期DBは“ブラックボックス”になる」、「『Oracle 10g』が正式発表、すべてはグリッドのために」(57位)、などオラクルに関する記事が多く読まれた。また、もう1つの注目キーワード、ICタグは「次世代TRONプロジェクト『ユビキタスID』」(21位)、「実用化は5年後? 坂村健教授が示したRFIDの課題」(33位)などが入った。ユーティリティ・コンピューティング、ICタグとも、2004年はさらに多くの注目を集めることが予想される。

2003年 @ITニュース記事ランキング
1
資格もデフレ、ORACLE MASTERが10月に大改正
2
「情報家電はLinuxかトロンにしてくれないか」と訴える経産省
3
急速に増えたオープンソース技術者、「スキルは高くない」
4
「セントリーノ」発表は世界に先駆け日本が最初」
5
IP電話普及で通信料激減、NTTコムはどこで稼ぐ?
6
UFJ銀の基幹システムを“陥落”させたLinuxの切り札
7
猛威を振るうMSBlast、休暇明けまでに対策を
8
もう仕事中にゲームはできません、ウェブセンス
9
オラクルの次期DBは“ブラックボックス”になる
10
SIerが危機感、Webアプリの限界がくる
11
MSBlast対策で苦渋を味わうマイクロソフト
12
やはり問題はActive Directoryだった、MS
13
SQLスラマーが大流行、その時MS社内は?
14
法人利用が急増、2003年はIP電話元年になるか
15
新社長に聞く、「Googleで働くには?」
16
「VBの倍の開発生産性」というJavaベースの開発ツール、IBM初公開
17
「オープンソースはソフト産業を壊滅させる」は正しいか
18
IP電話の未知なる危険とは
19
米SCO社長がIBM訴訟を激白、「死ぬまで戦い抜く」
20
[Spencer F. Katt] Linux信奉者たちが怒ったSCOの提訴

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