デジタル家電もワイヤレスが標準に?

2004/7/22

 アセロス・コミュニケーションズは、ブロードバンド回線を通じてPCやセットトップボックス(STB)で受信した映像を家庭内の別のテレビなどに、無線LANを使い配信するための新ビデオ・チップセット「AR5005VA」を発表した。新技術を採用し、DVDや高品位テレビと同等レベルの画質の映像を安定的に配信できるという。

米アセロス・コミュニケーションズのマーケティング・ビジネス開発担当バイス・プレジデント コリン・マクナブ氏。手にするのは新商品の「AR5005VA」

 デジタル家電ではPCやSTBで受信したコンテンツを家庭内の別のデバイスで楽しむための仕組みづくりが進められている。インテルやマイクロソフト、松下電器産業、ソニーなど世界の主要ITベンダが設立した「デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス」(DLNA)は、1つのコンテンツをさまざまなデバイスで再生するための標準を策定している。今回、アセロスが発表したAR5005VAはデバイス間でコンテンツのやりとりを行うための通信インフラを構築する技術に当たる。

 家庭内でデジタル家電のネットワークを構築するには部屋の壁や階段など物理的な障害を乗り越える必要がある。そのためアセロスは有線ではなく無線が家庭内ネットワークにおいて有望と考えている。アセロスでは2007年には、無線ネットワーク市場の3分の1がブロードバンドルータやSTB、デジタル・メディア・アダプタ(DMA)などデジタル家電とともに利用する無線LANデバイスで占められると予測している。

 米アセロス・コミュニケーションズのマーケティング・ビジネス開発担当バイス・プレジデント コリン・マクナブ(Colin L.M. Macnab)氏は、デジタル家電間を通信する無線LANについて「データレートは必要な水準に達している。家庭のエッジのデバイスまでコンテンツを届ける通信の安定性が何よりも重要だ」と指摘した。

 アセロスが発表したAR5005VAはテレビやメディア・ゲートウェイ、STB、DMAなどで利用する無線LANチップセット。電波送信時にアンテナの方向を信号処理によってコントロールする「送信ビームフォーミング」や電波の受信レベルの変動を抑える「受信合成ダイバーシチ」などの新技術を搭載することで、家庭全体で無線電波の安定的な送受信を可能にする。また、IEEE802.11e QoSもサポート。加えてDLAが定めたデジタル家電の相互運用性ガイドラインに準拠し、MPEG-TSパケットのIPカプセル化やデジタル著作権管理向けの暗号化に対応する。

 AR5005VAは1つのチャンネルで、複数の標準画質のテレビ映像をストリーミングすることができる。また、高品位テレビと標準テレビ、データを同時に通信させることも可能。無線LAN規格はIEEE802.11a/b/gに対応。1万個出荷時のサンプル価格は20ドル以下で、2004年第4四半期に量産出荷を開始する。

(編集局 垣内郁栄)

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アセロス・コミュニケーションズ(英語)

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