日立・NEC合弁の通信ベンダ「アラクサラ」の勝算は？
2004/10/5
日立製作所とNECのハイエンドスイッチ、ルータ事業を統合した新会社「アラクサラネットワークス」が10月1日に発足した。シスコシステムズやジュニパーネットワークスなど外資が強いハイエンド市場の奪還を目指す日立、NECの戦略会社で、本格化している電子政府関係の案件やブロードバンドへの対応が求められる通信キャリア、大企業をターゲットにする。日立出身でアラクサラの取締役社長に就任した和田宏行氏は、「インターネットのベストエフォートで果たして今後いいのか？ これからは品質、性能、機能、サービスをギャランティ（保証）されているネットワークが求められる」と述べ、QoS制御などサービス品質を保証できる機能で、他社と差別化する考えを示した。
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| アラクサラネットワークス 取締役社長に就任した和田宏行氏。日立ではIPネットワーク事業部長を務めていた |
アラクサラは資本金55億円で日立が60％、NECが40％出資。社員は約320人。アラクサラ（ALAXALA）のALAはラテン語で「翼」を意味し、2つの翼が「X」で強く結ばれているイメージだという。2つの翼は日立とNECであり、顧客とアラクサラでもあるというのがアラクサラの説明。Xはエクスチェンジ（eXchange）の意味もある。
アラクサラは日立、NECの通信技術をベースにハイエンドスイッチ、ルータを開発する。和田氏は「何よりも開発スピードの加速が重要」と述べ、業界の技術進歩を先取りする新製品を投入する意気込みを示した。資本金を60％出資し、社長も派遣した日立側が開発をリードし、早期に開発の方向性を打ち出すとみられる。
アラクサラが開発したスイッチ、ルータの販売は日立とNECがOEM提供を受けて、それぞれのブランド、販路で販売する。アラクサラは日立、NEC以外のパートナーも使って製品を販売する計画。日立、NECを合わせて全体の80％程度を販売し、残りの20％をパートナー経由で販売することを予定している。中国、韓国などアジア圏でも日立、NECのチャネルを活用し、販売を広げる。和田氏は「ブロードバンドに適した製品であることをメッセージとして海外に発信したい」と海外展開に意欲をみせた。
2004年度の日立、NECのハイエンドスイッチ、ルータの売り上げ規模は合わせて300億円程度。両社の事業を統合するアラクサラでは2005年度に売上高400億円を目指す。国内の市場シェアも2005年度には現在の両社のシェア10％を17％まで引き上げる計画。2007〜8年には国内市場シェア30％を獲得し、株式上場を目指すとしている。和田氏は「2005年度に国内ハイエンドスイッチ、ルータ市場は2300億円程度に成長するとみている」と予測。特にハイエンドルータの伸びに期待できると説明した。
新製品第一号はQoS、ポート密度が特徴
アラクサラは会社発足後、初の新製品を同日発表した。発表したのはハイエンドスイッチ「AX7800Sシリーズ」とミッドレンジスイッチの「AX5400Sシリーズ」、通信キャリア向けのハイエンドルータ「AX7800Rシリーズ」。日立、NECがアラクサラ発足前の2004年4月から共同開発してきた。2005年1月末に出荷する。日立、NECもアラクサラからOEM提供を受けた新製品を同日、発表した。
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| アラクサラが発表したハイエンドスイッチ「AX7800Sシリーズ」 |
AX7800Sシリーズは最大768Gbit/sのローカルスイッチング性能を備え、1ギガビット・イーサネットのポートを最大384個、10ギガビット・イーサネットのポートを最大32個収容できる。最小構成価格は966万円から。AX5400Sシリーズはコストパフォーマンスを追及した製品。最大48Gbit/sのローカルスイッチングのパフォーマンスがあり、ファストイーサネットと1ギガビット・イーサネットのポートを最大192個搭載できる。価格は381万1500円から。
AX7800Rシリーズは最大384Gbit/sのローカルスイッチング性能があり、1ギガビット・イーサネットのポートを最大384個、10ギガビット・イーサネットのポートを最大16個備える。価格は2310万円から。
アラクサラの取締役 島崎茂樹氏は他社製品に対するアラクサラ製品の優位点として、ハードウェアによる決め細やかなQoS制御やトラフィックシェイピング機能、ポート密度の高さ、グレースフル・リスタート機能の搭載などを挙げた。
（編集局 垣内郁栄）
[関連リンク]
アラクサラネットワークスの発表資料
日立製作所の発表資料
NECの発表資料
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