テープとディスクのいいところ取りでILM、富士通

2004/10/27

 富士通はテープライブラリを仮想化してディスクの仮想ボリュームとして扱うことができるストレージの新製品「ETERNUS バーチャルディスクライブラリ」を10月26日に発売した。ディスクのアクセス性とテープの低コストを両立するのが特徴。装置内にはディスクアレイもし、アクセス頻度が高いデータはディスクに保存、アクセス頻度が低いデータはテープに保存するなど、情報ライフサイクル管理(ILM)を実現できるとしている。

富士通のストレージシステム事業本部 ストレージソリューション事業部 事業部長 松島等氏

 富士通のストレージシステム事業本部 ストレージソリューション事業部 事業部長 松島等氏はバーチャルディスクライブラリについて「他社が展開する仮想化ストレージとはちょっと切り口が違う。ライブラリを仮想的なディスクのように提供する」と説明した。

 バーチャルディスクライブラリはディスクアレイを内蔵したバーチャルディスクコントローラ「ETERNUS VD800」とテープライブラリ「ETERNUS LT160」を組み合わせた構成。サーバやほかのストレージからはディスクアレイと同じアプリケーションで、テープドライブにアクセスできる。ファイバチャネル接続に対応し、SAN環境でも利用できる。

 ただ、テープライブラリを仮想的にディスクアレイとして扱っているだけなので、サーバからテープライブラリへのアクセス時間は通常通り。富士通によるとテープライブラリのレスポンスタイムは約3分。そのため富士通では永久保存するデータを低コストで保存する“データ保管庫”としての利用を提唱している。テープライブラリの最大記録容量は8PB。低コストなテープを採用しながらも、システム環境を変化させずにディスク同様のアクセスができるというのが富士通のアピールしたい点だ。

富士通が発表した「ETERNUS バーチャルディスクライブラリ」

 バーチャルディスクライブラリは、内蔵するディスクアレイとテープライブラリとの間でデータを自動移動させることができる。生成されたばかりでアクセスが多いデータはディスクアレイに保存。生成から時間が経過し、アクセス頻度が落ちたデータはテープライブラリに保存することができる。データ移動はポリシーベースによる自動化が可能。ただ、データの自動移動ができるのはバーチャルディスクライブラリの内部だけで、SAN全体でデータを自動移動させるには別のアプリケーションが必要になる。

 バーチャルディスクライブラリは“データ保管庫”としての利用を想定しているため、アーカイブしているデータを保護する機能を搭載している。1つはテープの耐用年数を判断し、古いテープから新しいテープへとデータを自動移動させる「新陳代謝機能」。古いテープライブラリから新しいテープライブラリへとデータを移動させることもできる。もう1つはデータの二重化機能。1つのデータを2つのテープに二重化して保存することや、本番とは別のテープライブラリに二重化して保存できる。

 ディスクコントローラのVD800は記録容量別に3タイプを用意。エントリモデルの「モデル50」は4.38〜36TBのディスクアレイを内蔵。19.6〜251.2TBのテープ容量に対応する。1024の仮想ボリュームを作成できる。サポートするOSはSolarisとRed Hat Enterprise Linux AS/ES。テープライブラリのLT160は「モデルA20」を接続する。価格は最小構成で6498万円から。2005年1月31日に出荷する。富士通では今後2年間で100セットの販売を目指す。

(編集局 垣内郁栄)

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富士通の発表資料

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