ツールベンダと開発プロセスの関係はさらに密接に
2004/12/28
2004年、ボーランドやマイクロソフト、IBMといった開発環境を提供するベンダのメッセージは一貫していた。すなわち「分散したツール群の統合」である。「Eclipse」の登場で、IDEの真の意味での効果が開発者の間に浸透し始めたことが1つの契機となった。Eclipseは拡張機能をプラグインすることで独自の環境を構築できるアーキテクチャを採用している。開発者(あるいは開発チーム)がEclipseをベースにカスタマイズを繰り返しながら手に馴染む開発環境を作り上げていくわけで、1つのプラットフォーム上で開発作業のほとんどが対応可能というIDEの恩恵を被った開発者は多かったに違いない。2004年はJ2EEの開発環境がEclipse一色に塗り潰されたといっても過言ではない。日本IBMが11月に発表した「IBM Rational Software Development Platform」はまさにEclipse上に同社の開発ツールをプラグインとして開発し直したものである。
そんな状況を横目に見ながら、マイクロソフトは2005年夏ごろにリリース予定の「Visual Studio 2005」で本格的な攻勢に出る。開発ツールとしてはEclipseを仮想敵とし、競合の開発言語(環境)としてJava(J2EE)を想定しながら……。チーム開発の効率性を追求した機能を搭載し、独自の言語によるモデリング機能も組み込み、同社がこれまで積極的に言及してこなかった“上流工程”への参画を、Visual Studio 2005を武器に計画している。
ミッション・クリティカル市場へ本腰を入れ始めたマイクロソフトに、コンサルティングを行いながら顧客の要求を開発し、実システムへと落とし込んでいくという一連の作業は不可欠のものである。Visual Studio 2005はそのための尖兵の役割を果たす。そして、(Visual Studio 2005のマーケティング活動において)マイクロソフトのユニークな点は、開発側だけではなく、いわゆるユーザー企業に対してのマーケティング活動にも力を入れている点である。
米ボーランド社長兼CEO デール・フラー(Dale Fuller)氏は開発ツールにもERPのような存在が必要だとコメントしている。製造業がERP(統合基幹業務パッケージ)を導入したことで成し遂げた業務の効率化がソフトウェア開発にも必要だ、ということである。ERPの導入には導入企業の業務改善を含む大規模なプロセス改善が不可欠である。ツールの導入だけでは開発効率の向上は達成できないというボーランドのメッセージは、ソフトウェア開発分野が長年取り組む巨大な課題を指摘している。
開発環境はさらに統合化が進み、高機能化の傾向は加速するだとう。しかし、問題はツールをいかに使いこなすかにある。2005年以降、ツールベンダはこれまで以上に開発プロセスの改善を口にすることになる。
(編集局 谷古宇浩司)
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