中国進出企業に学ぶ、ITマーケティング成功の鍵

2005/3/29

「中国でうまくいっている消費財メーカーはコールセンターやEDIや情報共有システムなどITを活用している」。アビーム コンサルティングが3月28日に発表した中国進出企業のマーケティング調査でこのような結果が明らかになった。日系企業と欧米系企業を比較すると、全般的に欧米企業が中国市場で堅調なビジネスを展開している。同社のリサーチ担当ディレクター 木村公昭氏は「マーケティング活動の成功が日系企業とのさまざまな格差の要因になっている」と分析している。

アビーム コンサルティングのリサーチ担当ディレクター 木村公昭氏

 調査は中国市場で国内販売をしている日系、欧米系の消費財メーカーが対象。有効回答数は日系43社、欧米系29社で計72社だった。

 直近1年間の売上高成長率で見ると、欧米系企業の43%が、30%以上50%未満の成長としているのに対して、日系企業で同じ成長率と答えたのは21%だった。また、日系企業の57%は成長率が30%未満と回答。欧米系企業では30%未満の成長と答えたのは50%だった。

 一方で、日系企業の12%が50%以上の成長率と答えていて(欧米系企業では4%)、日系企業が高成長と低成長の2極分化していることが分かる。欧米系企業は全般的に堅調な成長だった。

 成長率の低さは、マーケティング活動に問題があるというのがアビームの考え。欧米系企業が街頭やインターネット、ショールームでのアンケートで顧客の声を集めているのに対して、日系企業は販売チャネル経由の情報収集を重視するなど、考えに違いが見られる。また、欧米系企業の69%が顧客からの問い合わせを受け付けるコールセンターを設置しているのに対して、日系企業でコールセンターを設けているのは21%にすぎなかった。中国語のWebサイトも欧米系企業の83%が設置しているのに対して、日系企業では59%しか設置していない。

 情報システムの活用でも差が出た。欧米企業の41%が販売チャネルとの間でEDIを構築しているのに対して、日系企業でEDIを活用しているのは11%。販売チャネルから得た情報を社内で共有する仕組みを用意しているのも欧米系企業の59%に対して、日系企業は14%だった。

 日系企業はそもそもマーケティング活動を行う専任の部隊を中国に置かないケースが多い。調査対象の欧米系企業は全社が中国にマーケティングの専任部隊を置いていたが、日系企業では31%が「専任部門は存在しない」と回答している。また、マーケティング活動を計画、評価、是正というPDCAサイクルに基づいて評価している割り合いも、欧米系企業が日系企業を上回っている。

 アビームは変化の速い中国市場で成功している企業は、「ブランドを重視したマーケティング活動を重視している」と指摘。情報の直接収集と共有、マーケティング活動に対する定期的な評価、マーケティング専任部門の社内での位置付けの明確化、現地でのガバナンスの整備などがポイントなると説明した。

(@IT 垣内郁栄)

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アビーム コンサルティングの発表資料(PDF)

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