Weekly Top 10

ドコモやauにできなくて日本通信にできること

2008/02/12

 先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングは第1位は「ドコモ携帯でGmailを使って直接送受信可能に、日本通信」だった。これに先立つ1月23日に日本通信はNTTドコモの3G携帯網を利用した初のサービス提供を発表している(関連ニュース:日本通信がMVNOでiモードの垂直統合モデルに風穴)。いずれもPC向けのメールサービスが、そのままケータイを使って、ケータイメールのように使えるというサービスだ。第1弾は.Macという限られたユーザー向けだったが、2週間ほど間をおいて出てきた第2弾はGmail対応で話題となったようだ。

NewsInsight Weekly Top 10
(2008年2月4日〜2月11日)
1位 ドコモ携帯でGmailを使って直接送受信可能に、日本通信
2位 新コラボサービス「LUNARR」が地球の“表と裏”でベータ開始
3位 コラボレーションの新地平か、「LUNARR」を使ってみた
4位 米グーグルが法人向けセキュリティサービスをSaaSで開始
5位 米国ホワイトカラーの2割が機密保護対策「自信なし」
6位 価格.comでファストの検索プラットフォーム採用
7位 Googleドキュメントにフォーム作成機能、自動集計可能に
8位 2011年にHSDPA搭載ノートPCの出荷台数は1億台、エリクソン
9位 ライブドアがオープンソース版RSSリーダーを公開
10位 “ビデオ版Twitter”のSeesmicはYouTubeを超えるか

 今回の一連の発表は、日本通信にとって悲願の3G網利用のMVNOサービス開始のアナウンスだ。

 同社は2006年8月から、MVNO事業者としてサービスを開始するべくNTTドコモと協議を開始していた。そして2006年11月には相互接続をNTTドコモ側に申し入れるが、この段階では相互接続は実現しなかった。

 MVNO事業に関して、2006年9月に総務省は「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方について」と題した文書を発表。文書の中で、「自らの電気通信回線設備への接続請求を受けた場合には、原則としてこれに応じなければならない」とした。こうした動きに呼応するように2006年10月に日本通信は、新サービスを発表(参考ニュース)。サービスは2007年中に開始するとしていた。ただ、「3G移動体通信事業者とMVNO契約を締結し、相互接続が実現でき次第」という、ただし書きがついていた。

 結局その後も両社の協議は合意に至らず、ついに2007年7月、日本通信側は「協議が不調である」として電気通信事業法に基づいて総務大臣による裁定を求めるという動きに出た(参考リンク)。裁定申請を受けた総務省は、同省の諮問委員会である電気通信事業紛争処理委員会の答申を経て、2007年11月末には総務大臣の名前で裁定を下した(裁定内容)。この裁定に基づいて、ようやく2007年12月にNTTドコモと日本通信の設備で相互接続が実現。2008年の年が明けてから、ようやく一連のサービス発表となった。

NTTドコモにもauにもできないサービス

 KDDIは2007年7月にGmailを採用したau oneサービスを発表している。発表会の場でKDDI取締役執行役員常務 高橋誠氏は、順次使い勝手を改善していくと明言していた。例えば携帯電話端末が持つサブスクライバーIDを利用してユーザー名やパスワード入力なしにメールサービスにログインできる機能や、EZwebメールのau oneメールへの自動転送機能、端末内のアドレス帳とオンラインのアドレス帳の連携、待ち受け画面でのメール受信通知などだ。

 それから半年ほどが経過したが、まだこうしたサービス改善のニュースを聞いていない。それどころか、よく見てみると、Gmailでは普通に使える他サービスからのPOPアクセスが禁止され、他社製携帯電話で使えなくするなど、わざわざ使いにくいシステムにしてユーザーを囲い込んでいる(au oneメールの説明)。やろうと思えば日本通信のように、Gmailをプッシュ型でサポートすることも技術的には難しくないだろうが、端末レベルではezweb.ne.jpドメインのメールアドレスしかサポートしていない。ユーザーはau oneにアクセスしてメニューからメールを選択する必要がある。ユーザーやサービスプロバイダには、せいぜい「auの庭で。」遊んでもらおうということだろうか。

 1月24日にNTTドコモはグーグルとの協業を正式発表して、Gmailのサポートも表明している。しかし驚くのは、提携発表の記者会見の席で、NTTドコモの夏野剛氏(執行役員 プロダクト&サービス本部 マルチメディアサービス部長)が、「グーグルは、あくまでもiモードの1コンテンツですから」と、まるで店子に軒先を貸すかのような発言をしていたことだ。

 ケータイ嫌いだった記者でも、ここ1、2年ほどは、インターネットの未来はモバイルにしかないと思うようになった。しかし、未来のインターネットの地図にiモードなどというインターネットからすると見ることすらできない特殊な“島”が存在し続けられているという自信がどこから来るのかが、記者には、どうも理解できない。今は軒先を貸した気分かもしれないが、iモードは、そんなに安泰なのだろうか。

 NTTドコモは今後、Gmail、YouTube、Picasaなど、グーグルのサービスとの連携を強めるとしているが、auと同様にGmailですら端末レベルでの統合などあり得ないだろう。

 NTTドコモやauが、どのような戦略のもとにどういうサービスを提供しようと、それは自由だ。ただ、公平なルールのもとに誰もがサービス提供ができる環境を整えて、多様なサービスを可能にするべきだ。そういう意味で、日本通信のような3G網を使ったMVNO事業者の登場は、特にデータ通信サービス関連市場では、非常に重要な意味を持っているように思うのだ。

(@IT 西村賢)

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