この連載では、100人くらいのユーザーのいる小規模ネットワークに起こるさまざまなトラブルを、ネットワークツールを用いて解決していきます。主人公は、社内の管理者兼プログラマーの律子さん。これまでのトラブル・シューティングの模様は記事末尾の連載バックナンバーをご参照ください。
相変わらず仕事に飲み会に忙しい律子さんですが、またまた相談を受けます。今度は何でしょう。たまには恋の相談にでも乗りたいものですが、相変わらずネットワークがらみのことのようです。ちぇっ。
相談者 「最近夜になるとインターネットがもっさりしてるんだよね」
律子 「どうしたのかしら」
相談者 「管理者でしょ? 調べといてくれない?」
律子 「あ、はい……」
そういわれたものの、インターネット接続が遅くなっている原因を突き止めるなんてどうすればいいのでしょう。律子さんにはちっとも手段が思い浮かびませんが、午前中かけてぼんやりと考えてみると、昼間と夜のインターネット通信の量を比べればいいのではないかという考えが浮かんできました。われながらさえたひらめきです。
とはいえ、個々のマシンの通信量はnetstat(参照記事:第9回外部を勝手に攻撃しているのは誰?)なんかを使えばいいというのは分かりますが、会社のLANからインターネットへの通信量なんてどうやって調べればいいのでしょう。
さすがに得意のPingでは調べることはできないのは律子さんにだって分かりますが、どうすればいいのでしょう。しばらく頭を抱えていると「インターネットへの出入り口の通信量を測ればいいのでは?」と考えが浮かんできます。律子さんも最初に比べるといろいろとカンが働くようになりました。
あ、そうか、ゲートウェイになっているルータとインターネットとのトラフィックが分かれば、LANからインターネットへの大体の通信量が分かるのか。昼間と夜間のインターネットへの通信量を比較することで、原因がLANからのアクセスが増えているせいなのか、インターネット側の問題なのか切り分けができるんじゃないか。律子さんはわれながらいい考えだと思いましたが、どうやって通信量をルータに教えてもらうのかはまったく分かりません。
「家のブロードバンドルータだと、通信量がグラフになって出てくるんだけどなあ」
そんなことを思いながらぼんやりしていると、律子さんあてに郵便が届いています。ダイレクトメールでも見て落ち着くか、と思いながら封筒を開けるとDMのほかに紙が挟まっています。
それには、
「ルータはSNMPを使えないのですか?」
と書いてあります。
そうか、SNMPを使えばいいのか。SNMP(Simple Network Management Protocol)というプロトコルを使えばルータを流れるアクセス量を調べられることを、律子さんは思い出しました(参照記事:監視を自動化するSNMP)。
ルータにアクセスしてみると、以前の管理者が使ってネットワークを管理していたのか、すでにSNMPは動いているようです。
WindowsではSNMP関連のコマンドを使うことはできませんので、ここで律子さんは管理用のLinuxマシンを使うことにしてみます(※MacOSXでも可能です)。律子さんはあまりLinuxを使ったことがないので心配ですが仕方ありません。
まず、snmpwalkを使って、正常に稼働しているかどうか確かめてみます。
snmpwalkを使い、稼働状況を確かめる
system$snmpwalk -v 1 -c public 192.168.0.1 (略)
ずらずらっと結果が表示されて何が何だか分かりませんが、一応正常に稼働はしているようです。次に、snmpgetを使って送受信の量を知ることにします。
snmpgetを使って送受信の量確かめる
$ snmpget -v 1 -c public 192.168.0.1 ifOutOctets.1 ifInOctets.1 IF-MIB::ifOutOctets.1 = Counter32: 89176 IF-MIB::ifInOctets.1 = Counter32: 89548
ifOutOctetsは受信したフレームのオクテット数、ifInOctetsは送信したフレームのオクテット数(用語解説:octet)ですが、さすがの律子さんもこれを手動で取得して自分で計算しようとは思いません。
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