オンプレミスからクラウドまで幅広くカバーする、機能強化が進んだ新サーバOS、Windows Server 2012の連載開始。
※「Metroアプリ」という呼称について
本連載では、Windows 8で導入された新しいWindowsアプリケーションの形態を「Metroアプリ」と記述しているが、これは正式名ではない。商標権などに関わる問題が発生したため、今後変更される可能性がある。現在のところ、新しい呼称をどうするかという公式な発表がないため、本連載では当面の間はMetroという名称を使用し、正式発表後に記述を訂正するので、あらかじめご了承願いたい。
日本マイクロソフトは2012年9月5日、Windows Server 2008 R2の後継となる次期サーバOSであるWindows Server 2012のリリースを発表した。すでにボリューム・ライセンス契約では9月1日から提供開始されているが、パッケージ製品(Standardエディションのみ)の提供は9月26日から、サーバ・ハードウェアへのプレインストールなどでの提供は9月中旬からとなっている。IT Pro/開発者向けには、すでにTechNetやMSDNサブスクリプションなどのサイトで配布が開始されている。
Windows Server 2012の機能強化点は非常に多いが、小規模なサーバから大規模なクラウド環境までカバーし、特に仮想化環境やクラウドに向けて機能が大きく強化されている。
Windows Server 2012では、従来のWindows Server 2008 R2などと比較すると、次のようにエディション数が大幅に整理・統合されている。
エディション | Datacenter | Standard | Essentials | Foundation |
---|---|---|---|---|
概要 | データセンターやプライベート・クラウドなど、特に大規模仮想化環境に対応したサーバOS | 非仮想化環境もしくは小規模仮想化環境向けサーバOS | 25ユーザーまでのスモールビジネス向けサーバOS。従来のWindows Small Business Server Essentialsの後継 | 15ユーザーまでのスモールビジネス向けサーバOS |
機能 | 全機能が利用可能 | 全機能が利用可能 | 機能制限あり | 機能制限あり |
仮想化インスタンス権 | 無制限の仮想化インスタンス権 | 2つまでの仮想化インスタンス権 | 仮想化のインスタンス権なし(物理マシンもしくは仮想マシンのいずれかにインストール可能) | 仮想化のインスタンス権なし。物理マシンへのインストールのみ可能 |
ライセンス・モデル | プロセッサ+CAL(Client Access License)ライセンス | プロセッサ+CALライセンス | サーバ・ライセンス。CAL不要。最大25ユーザー/50デバイスまで | サーバ・ライセンス。CAL不要。最大15ユーザーまで |
サポート物理プロセッサ数(ソケット数) | 1ライセンス当たり2物理プロセッサまで | 1ライセンス当たり2物理プロセッサまで | 2物理プロセッサまで | 1物理プロセッサまで |
参考価格 | 92万4300円 | 16万9600円 | 8万1700円 | OEMのみ |
CAL価格 | 5CALで3万2600円 | CAL不要 | CAL不要 | |
下位のEssentialsやFoundationはスモールビジネス向けのサーバOSなのでこれを除くと、汎用のサーバOSとしてはDatacenterエディションとStandardエディションの2つに集約された。以前あった中間のEnterpriseエディションや、Webサーバ向けのWebエディションはなくなった。そしてDatacenterとStandardエディションの差は、基本的にはライセンス形態(特に仮想化インスタンス権)の違いのみであり、機能的な差(追加できる「役割」や「機能」などの差)や、サポートされる最大物理メモリ・サイズや最大サポート・プロセッサ数などの差はない。
そしてこの2つのエディションでは、プロセッサ・ライセンス(CPUライセンス)という、物理プロセッサの数によるライセンス形態が採用されている(さらにアクセスするデバイスごとにCALが必要)。CPUのコア数やHyper-Threadの有無(つまり論理コア数)に関係なく、システムに装着されている物理プロセッサ数(=CPUソケット数)によって制限を受ける。2物理プロセッサごとに1ライセンスが必要となる。なお「仮想化インスタンス権」とは、Hyper-V上の仮想マシンにゲストOSとしてインストールできる権利のことである。Standardエディションならば、2つの仮想マシンを作成して、それぞれにWindows Server 2012 Standardエディションをインストールできる。仮想マシンが3台もしくは4台になると、もう1つStandardエディションのライセンスが必要になる(ライセンスの正確な数え方などについては、「Windows Server 2012の購入方法」のページにあるライセンスのドキュメントを参照のこと)。
このようなライセンス体系のため、DatacenterエディションとStandardエディションのどちらを導入するかは、単純に、どのくらいの仮想マシンを利用するか(仮想化インスタンスの数)によってのみ決めることになるだろう。両者の価格差は5倍程度なので、仮想化インスタンス数が10(2×5)を超えるようなら、Datacenterエディションにするとコストを抑えられる。
Windows Server 2012の詳細な機能一覧は次ページで紹介することにして、まずは起動後の画面を紹介する。Windows Server 2012のRC版の概要については、すでに連載Windows 8 Release Previewの第11回「Windows Server 2012 RC版の概要」で紹介したが、RTM版とRC版では(少なくとも外見的には)ほとんど違いは見られない。
Windows 8の場合は、システムにログオン(Windows 8やWindows Server 2012では「サインイン」という)すると、最初にMetroの「スタート」画面が表示されていたが、Windows Server 2012の場合は、「サーバー マネージャー」が起動している「デスクトップ」画面が表示される。
Windows Server 2012のサーバ・マネージャは、各サーバをグループ化してまとめて管理できるなど、従来のものよりも機能が強化されている。
従来のWindows Server 2008 R2などのログオン直後の画面と似ているが、よく見るとタスク・バーの左下にあった「スタート」ボタンがなくなっている。これはWindows 8と同じユーザー・インターフェイスを採用したためである。サーバでタッチ機能やMetroアプリを使うことはないだろうが(適切なハードウェアなどが用意されていれば、サーバ版OSでもこれらの機能を使うことは可能なようである。詳細は今後解説する)、従来のユーザー・インターフェイスに慣れている管理者にとっては使いづらいかもしれない。
管理ツールなどを起動する場合は、サーバ・マネージャの右上にある「管理」や「ツール」などのメニューをクリックすると、インストールされているツールのメニューが現れるので、そこから起動する。もしくは、マウスを画面左下に移動させると左下に「スタート」というアイコンが表示されるので、そこからいくつかのツールが起動できる。ただしこれは従来の「スタート・メニュー」ではなく、単に固定的なツール類が表示されているだけである(カスタマイズもできない)。
「デスクトップ」画面でキーボードの[Windows]キーを押すと、次のような「スタート」画面に切り替わる。Windows 8ではWindows Server 2012とは逆に、「デスクトップ」ではなく「スタート」画面がデフォルトで表示されている。
Windows 8の場合はスタート画面にMetroアプリも数多く登録されていたが、Windows Server 2012の場合はこのように、ほとんど何も登録されていない。しかもいずれのアイコンをクリックしても、それらはすべてMetroアプリではなく従来のWindowsプログラムなので、すぐにデスクトップ画面に切り替わってからアプリケーションが起動する。いちいち画面が切り替わるので、少々煩わしい。
この画面でマウスを右クリックすると(もしくは[Windows]+[Z]キーを押すと)、画面下部に「アプリ・バー」というメニュー領域が表示される。何もアイコンを選択していない状態でアプリ・バーを表示させると、右端に「すべてのアプリ」という項目が表示されるので、それを選択すると次のようになる。よく使うツールをスタート画面に追加/登録するには、このようにアプリの一覧を表示させてから右クリックし、アプリ・バーのメニューから「スタート画面にピン留めする」を選ぶ。かなり面倒だが、これがWindows 8/Windows Server 2012流の操作方法である。
ログオフ(サインアウト)したり、システムをシャットダウン/再起動するには、従来のように[Ctrl]+[Alt]+[Del]キーを押して表示されるメニューから選ぶか、画面右端に「チャーム」バーを表示させて、そこにある「設定」メニューから選ぶ。
以上、Windows Server 2012の操作方法を簡単に紹介したが、これらの操作はWindows 8の場合とまったく同じである。そのため、新しいユーザー・インターフェイスやその操作方法、そしてぜひ覚えておきたいキーボード・ショートカットの操作方法などについては、今後Windows 8の連載「Windows 8レボリューション」の方で詳しく解説する予定である。
Windows Server 2012の基本的な操作については、以下のページも参照のこと。
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