既存環境との親和性の高さに引かれたというバンダイだが、実はOracle Exadata以外の選択肢も検討している。その結果、「ソフトウェアとハードウェアが一体で提供されることにより、コスト面や運用面でもメリットが大きい」(田口氏)と判断したことも、Oracle Exadataに決めた大きな理由である。
セキュリティ製品の導入に関しては、その背景に「取り扱う顧客の個人情報が年々増加していること」「ビジネスの拡大に伴って、システムや業務に携わる者が増えたこと」などがあった。外部からのサイバー攻撃を遮断するのはもちろん、内部のオペレーターが適切かつ安全にシステムを利用できる環境を整え、情報漏えい対策に万全を期すことが求められたのだ。プレミアムバンダイでは以前からセキュリティ対策に力を入れていたが、一方でデータベース関する対策は十分ではないと感じていた。そこにピタリとはまったのがOracle Database VaultやOracle Audit Vault and Database Firewall、Oracle Advanced Security、Oracle Enterprise Manager、そしてデータマスキングツール「Oracle Data Masking and Subsetting Pack」などだったのである。
これらのソリューションを導入する際には、ポリシーの策定に苦労したと田口氏は振り返る。
「以前からツールを利用して個人情報へのアクセスを制限していましたが、今回は、それを詳細なポリシーとして落とし込んでいく必要がありました。職種や業務内容に応じてどこまでアクセスできるかを全て設計してOracle Database Vaultに実装し、さらにOracle Advanced Securityで暗号化する情報を細かく詰める必要もあり、それらの作業に多くの時間を割きました」(田口氏)
なお、データベース暗号化についてはオーバーヘッドによるパフォーマンス劣化を心配する向きもあり、田口氏も当初は懸念していたという。だが、実運用に移行した現在、「暗号化によるストレスを感じることは一切ない」と断言する。
こうしてOracle Exadataに移行したことで、従来は約4時間かかっていたバッチ処理が約10分で完了するなど、データベース基盤の性能が大幅に向上したという。また、懸念事項であったアクセス集中時のレスポンス低下の問題も解決した。1分間当たりに処理可能なリクエスト件数は10倍以上に増えており、田口氏はこれがOracle Exadataの最大の導入効果だと評価する。
さらに、バンダイはOracle Exadataの導入効果をより高めるために、プレミアムバンダイ以外での利用も進めている。その1つが「バンダイナムコID」のデータベース基盤としての活用だ。
バンダイナムコグループの共通アカウントであるバンダイナムコIDは、対応サービスの決済手段として利用可能な「バナコイン」、アーケードゲームのユーザー認証カードなど、さまざまな用途で使われている。その基盤としてOracle Exadataを活用することで、投資対効率をさらに高めたわけである。このような利用範囲の拡大が可能な点は、圧倒的な性能と高い拡張性を備えるOracle Exadataならではだろう。
Oracle Exadataという強力なシステム基盤の上でさらなる成長を目指すプレミアムバンダイだが、重きを置いているのは単独で売り上げを伸ばすことではなく、バンダイ全体の売り上げと顧客層の拡大に貢献していくことだという。
「プレミアムバンダイは数あるお客さまとの接点の1つであり、限定商品の販売などを通じて店頭やイベントでの販売をリードしていくといった役割があります。それによって世界各地の売り上げや顧客層の拡大を担いつつ、プレミアムバンダイの売り上げが2倍になれば現地法人の売り上げも2倍になるといったかたちで事業を拡大していくのがベストだと考えています」(高原氏)
今日、日本発のさまざまなキャラクターが世界各国で親しまれているが、日本のように手軽に関連商品を入手できない国はまだ多い。Oracle Exadataの導入によりシステム面の不安を払拭したプレミアムバンダイは、そうした各国のファンの期待にどう応えるのか。今後の展開に注目したい。
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