2017年7月20、21日に開催のOpenStack Days Tokyo 2017では、IoTプラットフォームのオープンソース実装である「FIWARE(ファイウェア)」について、これをつかさどるFIWARE FoundationのCOO、ステファノ・デ・パンティリス氏が説明する予定だ。
なぜOpenStackに関係があるのか。FIWAREはインフラ基盤のコンポーネントとしてOpenStackを採用。さらにFIWARE Foundationは、FIWAREを即座に使える環境(クラウドサービス)「FIWARE Lab」を世界の複数拠点で立ち上げつつあり、これにも使っているからだという。
本記事では、このFIWAREについて、FIWARE Foundationの理事でもあるNEC 執行役員の望月康則氏による説明に基づき紹介する。
IoTプラットフォームといっても幅広い。IoTを使ったシステムを構築する際に利用できるインフラ基盤やアプリケーション構築支援の仕組みなら、どんなものでも「IoTプラットフォーム」と呼べてしまう。
FIWAREの場合、前述のOpenStackをはじめ、他の多様なオープンソースソフトウェアおよび商用ソフトウェアと組み合わせて現実のシステムが構築されるため、何が実体なのかをつかみにくいところがある。
FIWAREの中核的コンポーネントは、「コンテキスト情報管理」と呼ばれる、モノ(あるいは人、場所など)から情報を取得し、これを他とつなぐ役割を果たすソフトウェアだ。
このコンテキスト情報管理は、世界中の通信事業者などが参加するOpen Mobile Alliance(OMA)により、「NGSI Context Management」として標準化された仕様の実装を中心としている。NGSI(Next Generation Service Interfaces)は、もともとNECがネットワークサービスの共通APIとして提案したもの。その意味では、起源をたどれば日本、ともいえる。
FIWAREでは用途として、主にスマートシティ、および企業間の情報共有・交換に基づくスマートインダストリー、スマート農業を想定している。データの流通を可能にするためには、標準的なデータモデルと、オープンな共通APIが必要だという考えが根底にあるという。
NGSI Context Managementでは、情報を持つオブジェクトを「コンテキストエンティティ」と呼ぶ。そして、エンティティの属性情報を「コンテキスト情報」と名付けている。
例えば、「バス」というエンティティは、「位置情報」「乗客数」「ドライバー」「ナンバープレート」などをコンテキスト情報として持つことができる。
そして、エンティティとコンテキスト情報を、ネットワーク経由で検出したり、情報を取り込んだりするためのAPIを規定している。FIWAREでは、これをソフトウェアとして実装している。
FIWAREは、上記のコンテキスト情報管理をはじめ、インフラ、認証/セキュリティ、ネットワークなど、7種、40程度のコンポーネントで構成されているという。全てをFIWAREプロジェクトで開発するのではなく、周辺技術では既存のオープンソースソフトウェアを可能な限り活用している。
例えば、インフラではOpenStack、オープンデータ公開ではckan、ビッグデータ管理ではHadoopを使っている。
そこで、FIWAREではコンテキスト情報のデータモデルとAPIを実装するとともに、これを整理し、上位のデータサービスに渡すコネクター、さらに、エンティティのIDを管理する仕組みなどを開発している。
実は、FIWARE Foundationが設立されたのは2016年12月。FIWAREは、もともと欧州共同体(EU)の資金援助により、数年前から官民連携IoTプラットフォームとして開発されてきたものだという。EUのファンディング期間が終了し、民間主導の組織として新たに設立されたFIWARE Foundationに運営が移管された。
当初はスマートシティを中心的な用途として想定。都市において収集されたさまざまな情報をオープンデータとして公開、これによる「データエコノミー」の成長を促進することが目的だったという。そのための基盤ソフトウェアとして、FIWAREの開発に資金を提供。並行してアプリケーションを開発するスタートアップ企業にもファンディングを実施してきた。
特にスペインでは、国としてスマートシティの展開にFIWAREを活用していくことをコミットしており、マラガ、サンタンデールなどで実際にプロジェクトを展開しているという。
オープンソースソフトウェア開発プロジェクトとしてのFIWAREは、既に基本コンポーネントの開発こそほぼ終了しているものの、メンテナンスを続けていく必要がある。また、NGSI関連では、コンテキスト管理をよりリッチにするため、標準化活動が再開されつつあるという。
一方、FIWARE Foundationは、FIWAREをIoTデータ流通にかかわる世界標準とするべく、米国や日本、カナダ、メキシコ、インドなどへの働き掛けを強めている。日本においても、開発者のためのクラウドサービスであるFIWARE Labを、開設したいと考えているという。
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